第五章 勝利の日々

それから数週間、ジャンヌの軍は次々と勝利を重ねた。


サン・ローラン砦、レ・トゥレル砦、そして最終的にオルレアンは完全に解放された。


民衆は歓喜し、ジャンヌを聖女と呼んだ。


ジルは常に彼女の傍にいた。


戦いの時も、休息の時も。


二人の間には、言葉にできない絆が生まれていた。


「ジル様」


ある夜、ジャンヌが言った。


「一緒に来てくれて、ありがとうございます」


「礼を言われることじゃない」


「いいえ」ジャンヌは首を振った。「あなたがいなければ、私は――」


「お前なら、一人でもやり遂げただろう」


「それでも」ジャンヌは微笑んだ。「あなたがいてくれて、心強いです」


ジルは彼女を見た。


月明かりの中、ジャンヌの横顔は穏やかだった。


「俺も――」ジルは言った。「お前がいてくれて、良かった」


「本当ですか」


「ああ」ジルは頷いた。「これまでの人生で、初めて意味を感じている」


ジャンヌの目に、涙が浮かんだ。


「泣くな」


「嬉しいんです」ジャンヌは涙を拭った。「私も、同じ気持ちです」


二人は並んで、星空を見上げた。


その瞬間が、永遠に続けばいいと――ジルは思った。


だが、運命は残酷だった。

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