第1話
★第1章:世界を再びわが手中に!★
1話
莫大な資源が埋蔵している大陸、アスガル。かつてその大地を支配していた魔王がいた。唯一の統一王であり、唯一の魔力量を誇っていた「悪魔族」の長の息子にして、偉大なる神の恩恵を与えられた男こそ、我――アレックス・ブライドである。
勇者を自称する別大陸の暗殺者が我を殺し、その後の記憶は曖昧であるが、世界に漂う微小な我の魔力を再結集させていき幾星霜。
再び意識を取り戻した時にはすでに我の城はそこにはなく、建っているのは知らない建造物。それもはるかに高い。天にも届きそう、、、というより雲を突き破っている。
あたりの野原や旧文明の残骸――この場合は我の国の建物だろうかーーとは全く別の、異物感を出したこの塔。果たして。
アレックスは首を傾げながら塔に向かって歩いていく。
その周囲には堅牢な壁が囲っており、人間サイズでは飛び越えることも上ることのできないだろう。のっぺりとした黒の壁には日々一つなく、遠目からして内側の塔にどう入ればよいのかわからないほど。
しかし、近づくつれ下に扉が設置されていることが見て取れた。
その前には屈強な騎士の装備をした人間が二人。
「少しお尋ねしたいのだが」
「jmしるvみqcわs」
「? なんだって?」
「あうへんvt、、、んvrかすhん、、、、?? あー、あー。こうかな? 悪魔語は勉強していないんだが」
「馬鹿な。共通語だぞ」
アレックスが声を荒げるが
「ゆっくり喋ってくれると聞き取れるんだ。わかってくれよ」
とフルフェイス越しに好青年のような、子供を諭すような声。
「ま、まぁ良い。ところで、ここはどこだ?」
「観光客ではないのか。その悪魔の羽は懐かしい形をしているね。
ここは魔王ブライド14世が作った宇宙エレベータだよ」
「宇宙? は?」
「まぁ、もう建造されて2000年以上も前になるか。覚えてないけどね。
僕はその門番さ」
「ここはアスガルの首都バーンで、この場所はちょうど我の、、、いやアレックス・ブライドの城が建っていたはずなんだが」
「勉強家だね。そうだよ。どのくらい前だったかな。はるか昔、ここはアスガル帝国と呼ばれていて、その首都があったのは合ってるよ。
ただ、アレックス・ブライドは聞いたことがないかな。僕はこう見えてこの塔と同い年くらいで、知識には自信があったんだけど、ごめんね」
「そ、そうか。我も今混乱している。何が何だか」
そのうち、もう一人の門番が口を開いた
「ところでお前はなんだ? 地上に野生の有羽種なんて存在していないはずだが」
「有、羽種?」
「ごめんね、悪魔族のことだよ。みんな惑星ロタに移住したか、もしくは僕みたいに仕事か。どちらかしかないのは本当。
だから君はとても怪しいんだよ」
「そ、そうなのか。我と会話しても恐れないからどうしたものかと思っていたぞ」
アレックスの時代。保有する魔力の多さから真正面から会話できる人など存在しなかった。我を恐れているか、遜っているか。
この門番の男はとてもそう思えない。
「ああ、だから魔力を放出しているんだね。威圧、かな?
でもその程度の魔力量なら出さない方がいいかもね。いきっている田舎のヤンキーみたいだよ」
「え、」
絶句。世界広しといえど我に匹敵する魔力を持った人は存在せず、我を10とすればあたりは1か2程度の差があるはずなのに。
「君、顔は良いんだからダサいことはしない方がいいよ。街でも浮いてたでしょ」
「ちょ、え、ああ。ん。そうだ、な。とても今、我は混乱している。
まずここがどこかもわからない。我の存在していた時代からどれだけ時間が経っているのか?」
「あ、ご、ごめん。そんなに傷つくなんて」
頭を抱えて世界の衝撃を受け取った我に、勘違いした優男が。
するともう一人の門番が思い出したように
「ああ、おじきが言っていたような気がするぞ。初代ブライト家の当主の名前。アレックス・ブライド。
今から数えて21代前の王様の名前だな」
「そ、そうだ、我こそがアレックス・ブライド。
え? 21代前?」
「こらこら、初代王様を侮辱しないほうが良いよ。今から12000年前の王様でもさすがに君より魔力はあるさ」
本人なんだが。
復活の魔王のカルチャーショック 藤乃宮遊 @Fuji_yuu
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