情報を募っているオカルトライター ③
いろんなところを歩き回り、やっと見つけた銭湯に入る。番台の人にお金を払い、無料のタオルをもらって中へと進んでいく。服を脱いでかごの中に入れ、浴場の引き戸を開けると湯気が立ち込めてきた。
中には湯船に使っている人が一人と、髪を洗っている人が一人見える。奥にはサウナ室もあるようだ。シャワーが置いてあるところに行き、小さいタオルを濡れないところに置いて髪を濡らし始める。シャワーフックの下にある台座には、シャンプー,リンス,ボディーソープ置いてある。
シャンプーを手に数滴たらして泡立てて髪を洗う。ある程度洗ったら髪の毛の泡を流して、次は体を洗う。ボディーソープを数滴たらして泡立てて体を洗い始める。隅々まで洗ったら体についた泡を流して、湯船につかることにした。
ここの銭湯にある湯舟は大きい湯舟と寝転がるタイプの湯舟。寝転がるほうには泡が出ている奴と電気が流れてるらしいものがある。その近くに張り紙がしてあり『体の弱い人はお控えください』と書かれている。
結局大きい湯舟を選ぶことにした。中には一人浸かっている人がいる。なるべくその人から遠ざかるようにして対角になるように浸かった。そして今までの情報を整理することにした。
先ずは身長がとんでもなく高く顔すら見ることが出来ない人、これは事件が起きた日に掲示板の人が観測している。時刻を把握することはできないが(観測者がうろ覚えだから)、住んでいる市がY市だったため、まず間違いないだろう(Y市=四津ケ原市)。
そして両腕がなく常に笑顔で下手くそなスキップをし続けている男の子、これも事件から二日後の1月10日にDMをしてきた人によって観測されている。嚙みついてきたのはおそらく腕がないからだろう。
次に赤いワンピースを着ており鼻
「おにいちゃん、そこ熱くないかい?」
話しかけられると思ってなかったため、びくっとした。話しかけてきたのは先に湯船に浸かっていた老人だった。
「いや別に熱くはないですけど・・・・」
「そう?貼り紙に書いてあるけど、湯が出てくるところだから火傷しちゃうよ?」
振り返って見てみると確かに貼り紙が貼ってあった。だがだいぶ昔に張られたもののようであり、一部が破れていたり大半がかすれて読みにくくなっていた。もう少し読みやすいようにしてほしいものだ。
「破れとるね。あかん、後でひでちゃんに言っとくね」
「ああ、はい・・・どうも」
おそらくひでちゃんというのは番台の人なのだろう。なんとなく居心地が悪くなり湯船からは出ることにした。頭にのせていた小さいタオルを手に持ち、サウナ室に入ってみることにした。木で出来た扉を開けて、中に入ると一人の男の人が木の椅子に座っていた。男の人は大量の汗をかいており、少し心配になった。
中には小さなテレビがあり、『真実の穴を覗け!』という番組がちょうど始まっていた。その男の人と離れるような位置に座り、番組を見始めた。その番組では『森井家強盗殺人事件』をやっていた。司会がゲストの紹介をすると取材した映像が流れ始めた。 最初は公園の映像、次に森井家、最後に学校の映像。
懐かしいな・・・あのとき話を・・・・。今後悔したとしても起きてしまったものは仕方がない。何とかしなければ。
そう思いながら先ほどの整理の続きをする。赤いワンピースを着ており鼻から下が削り取られて、口がなくなり泣いている女の子は、観測者に明日の昼頃会うから保留。
最後に下半身がなく内蔵がこぼれており匍匐前進で進んで来る老爺の情報はまだ得ることができていない。だが情報が入っていないだけでどこかに見た人はいるとは思う。そして奴らが現れる時間帯はおそらく深夜。これも確信がある。
テレビの映像は討論するパートに変化しており、液晶パネルには三人の死因などが載っている。全く見当違いのことをずっとしゃべっており、見ているのも飽きてきたためサウナ室から出ることにした。あの男の人はまだ汗を流しながら耐えていた。
寝転がるタイプのほうにも入ろうか迷ったが、結局入らないことに決め、もう浴場からも出ることにした。引き戸を開けて服が置いてある場所にいき、バスタオルで体を拭き服を着た。無料のタオルをかごに入れ、荷物を持って銭湯を後にした。
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