第十二章 五つ星の約束、再び

 全国大会の会場は、広大な複合型スポーツ施設。

 陸上競技場、アイスリンク、サッカー場、屋内アリーナ、そして武道館までが一体となった、年に一度の“総合大会”が開催されていた。




 光輝はトラックでスパイクを履き、スタートラインを見つめていた。

 朱音は氷の上で演技前の静かな緊張に包まれ、奏はスタジアムのピッチでウォームアップ。

 陽翔はベンチでユニフォームの裾を握りしめ、澪は道場の射場で弓を構えていた。




 それぞれが、自分の戦場に立っていた。




 試合後、休憩棟の一室で、五人が久々に顔を合わせる。

 制服でもジャージでもない姿で、しかし懐かしい空気だけは変わらなかった。




 光輝が小さく息を吐くように言った。

「みんな……ここまで来たんだな」


 朱音が頷きながら答える。

 「一緒に誓った約束、ずっと忘れてなかった」




 陽翔は、バスケの試合で決めた一本のシュートの感覚を思い出しながら笑った。

 「やっと俺も、胸張ってここに立てたって感じ」




 奏が腕を組んで言う。

 「勝ち負け以上に、ここに全員が“本気で”戻ってきたこと。それが一番、すげぇよ」




 その中で、澪は一言だけ、静かに話す。


 「的の中心を射るには、心がブレてたら届かない」

 「でも今日は、五人が揃ったときの“静けさ”が、ちゃんと届いてきた」




 五人は自然と輪を作り、拳を中央に重ねた。

 何も言わなくても、その手の温度に、全員が想いを感じていた。




 光輝が小さくつぶやく。


「“五つ星の約束”──もう一度、誓おうぜ」




 その瞬間、あの日の空が、あの星が、心の中でまた輝き始めた。

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