第4話 特別一番

明け方までイチャイチャして。

その後すんなりと眠りに堕ちた。


起きてからひよに言われたのは

「人の胸に顔埋めて寝らんでくれる?」

迷惑そうな雰囲気たっぷりのくせにニヤけた顔。

嫌なんか嬉しかったんかどっちやねん。

でも

「乳首吸いながら寝たわけじゃないんやから良くない?」

あっさり言えば、ひよの心底恥ずかしそうな顔が見えた。

「赤ちゃんか!」

「今度それで寝てもいいなら寝るけど」

赤ちゃん上等やん。

ふふんと笑って言えば、ひよは恥ずかしそうな顔から呆れた顔。


「お前ひどいな」

「なんで?」

お互いにメイクをする手を止めずに話す。

鏡を覗き込んでがっつりメイク。

普段は適当なのにデートだから力が入る。

ゴールドのシャドウ。

慣れた手つきでアイライン。

マスカラを塗ればバチバチで最強。


「そんなんで寝られたらめっちゃムラムラして余計寝れんやん」

ひよはリップを塗りながら呟く。

まぁ確かに。

ひよ的にはそうかも。

莉兎もリップを塗って唇を合わせて馴染ませながら頷く。

「お預けやな」

「一人でするからいいもん」

「え?一人でするん?」

思わず鏡から視線を逸らしてひよを見れば「あ、」とか「しまった」とかそんな表情を一瞬浮かべた。

そこは掘り下げて聞きたいってか聞かせろ。


返事を待ってる莉兎に対してひよはメイク道具を片付けた後

「準備できたし行こか」

ブラシで髪を整えているけど、そんなスルーできるか。

「ひよって一人でするんや」

「莉兎、ちゃんと髪梳かして」

「へぇ…そうなんや」

「もうお前うるさい」

コツン、とブラシで叩かれた。

まぁ今はまだ掘り下げずにいよう。

今度じっくり吐いてもらおう。


黙ってひよに従いながら髪を梳かす。

ロングの金髪を撫でた後、ピアスをつけて準備万端。

ひよを改めて見るとすっぴんとは違ってつよつよな顔面。

可愛いより綺麗な顔立ち。

おまけにメイクによってつよつよさがレベルアップ。

そんなひよが好き。


ジッと見つめていたら

「なに?」

ピアスをつけるひよの手が止まる。

「いや、今日も可愛いなって思うただけ」

「…ほんまそういうとこやぞ」

「何が?」

「女と付き合った事ある疑惑が芽生える理由」

ひよは言いながら唇を尖らせて立ち上がる。


何を勘違いしてるんだか。

莉兎にとって女は過去も今も未来もひよだけやのに。

心でぼやいた事に笑ってしまう。

もう既に未来も予知できてる自分自身が可笑しい。

でもパッと浮かんだ言葉って考え尽くした言葉より本音だし重い。

だから本当に莉兎はひよだけ。


同じように立ち上がって

「思うた事言うただけやもん」

鞄を持ちながら言えば返ってきたのは溜め息。


信じてないんかなって思いながら二人揃って玄関へと行く。

今日はショッピングモールを歩き回る予定だから比較的楽なパンプス。

履いている最中ひよは莉兎の頭をさらっと撫でて

「他の女に同じ事言うたら拗ねるで」

そんな可愛い事を言われたせいでニヤニヤしてしまう。

「可愛すぎか」

「あたしが拗ねたらウザイからな」

「それも見てみたいけど莉兎にはひよだけが特別やから」

威張るように言えばひよはやっと笑った。

尖らせていた唇が元に戻って何より。

同じようにパンプスを履いて外へ出る。

少し雲が多いけど青空が見えるだけマシ。



鍵を締めて階段を下りて車に乗り込む。

エンジンをかけようとブレーキを踏んだ所で

「ちょっとでも長く特別でおれるように頑張る」

ひよの言葉に笑う。

エンジンをかけて動き出す車。

真っ黒いモンスターみたいなこの四駆はゆっくりと走り始める。


「何を頑張るん?今でも十分過ぎるんやけど」

「飽きられんようにとか」

「そんなん言うたら莉兎も頑張らなあかんやん」

「一緒に努力する?」

「もちろん」

片方だけがそういう努力をするのは間違ってる。

お互い太く濃く長く付き合っていけるように。

心も体も愛し合っていられるように。


マンネリは怖いけど、きっとこの恋の炎もいつかは落ち着く。

そういう時でも愛を紡いでいけるように。

そんな関係が理想。

落ち着いた時こそ互いを大事に思える関係性がいい。


莉兎は欲張りだからひよみたいに「ちょっとでも長く」とは言わない。

「長く長く長く」と言いたい。

でも「永遠」は言えない、なぜか。

ないものだって知ってるからかも。

ほんの一握りのカップルや夫婦だけが掴める星みたいなもの。

莉兎とひよの間にその星が芽生えて手にできるか分からない。

きっと努力して日々を積み重ねた暁に見えるはず。


永遠が欲しい。

付き合ってまだ一週間も経ってないのにもうそんな事を思うとか異常かな。

でも莉兎は勝手に運命を感じていて。

更には永遠が欲しくて。


これだけ聞けばどれほどひよを愛してるのか誰でも分かると思う。

早過ぎるって異常やって言われても構わない。

勝手に決めてんねん。

ひよが運命で、ひよ以外誰もいらんって。

酔ってるし大分やられてる。

でも片思いしてた頃から何となく分かってたけど。





ショッピングモールに着いてからは楽しいの連続。

友達同士で行くのとは違う、もちろん男とも全然違う。

友達より距離が近くて男の感性とはまるで違う。


服を見る行為一つでさえ、ひよには素直に言える。

似合う似合わんとかこっちの色がいいとか。

ひよが選んだのはボウタイブラウス。

これからの季節に着れそうな半袖で素材もいい。

色で迷っていたけどドットを勧めたらすんなり決めた。

仕事で着るらしい。

このブラウスを着たひよを仕事の時に見れる事が嬉しい。


莉兎は仕事上カジュアルスーツ。

営業や展示会もあるからどうしても服装自由とまではいかない。

でもジャケットの中に着れそうな白いブラウスがあって悩んでいたら

「可愛いやん」

ひよの一声で決めた。

「可愛いよな。ちょっと大人っぽい感じもあるし」

「似合うんちゃう?」

お互いニコニコしながら存分に服を選ぶ、見ては立ち止まって話す。


これが男だとそうはいかない。

勝手にメンズコーナーに行く男もいるし、疲れたと言って離れる男もいる。

果ては着いてきてくれるけどチラチラ時計を気にする男も。


女の買い物って服や靴なんか特にそうだけど見て周りたい。

実際自分の目で見て素材を確かめたい。

だから男にとってはしんどいし苦痛な時間かもしれない。

早く決めろよと言われても即決できない女あるある。



とあるブランドショップで服を一頻り見てサングラスコーナーで立ち止まる。

車を運転する時に欲しいと思いながら安いものは買ったけど、腹立たしい事にサングラスが大きいのかちゃんとフィットしなくて放置していた。


見ているとひよが隣にやって来た。

ゴリゴリの大きな黒いレンズのサングラスを手に取って

「ちょっと、これかけてみて」

渡されるままひよがサングラスをかける。

「…めっちゃ強すぎて声かけれんわ」

「かけさせた意味は何なん?お前ええ加減にせぇよ」

「貸して。莉兎もかけてみる」

ひよからゴリゴリなサングラスを受け取ってかけてみれば

「多分、どっちもどっちやで」

笑いながらひよは言う。

「何か似合いそうなやつない?」

「普段かけるわけじゃないんやろ?」

「運転中とかかな」

「でもそれ似合ってるけどな。変にフレームが細くて薄い色より」

「これにする?ゴリゴリやで」

「態度ゴリゴリやからええんちゃう」

何やねんそれ。

態度ゴリゴリとか聞いた事ないフレーズやねんけど。

呆れながらも確かにと思う部分はある。

フレームの細さ、薄い青やオレンジ、たっぷり丸みを帯びた形。

そういうものより攻めた方が似合うのかも。


「これにする」

「いいんちゃう?」

「ひよも買おうや」

「めっちゃ強い言うたやん」

嫌そうなひよに笑いながら「冗談やって」と適当な事を言った上で

「お揃いしたいやん」


ゴリゴリ四駆に乗るゴリゴリサングラスをかけた二人、もう負ける気せぇへんな。

ふふんと思いながらそれよりお揃いが欲しい。

ひよとのお揃いが未だにないから欲しい。


黙って見つめていたらひよは何も言わずにサングラスを手に取った。

「…莉兎ってお揃い好きなん?昨日も言うてたやん」

昨日、昨日…あぁそういえば食器の話をした時にしつこく言ったんだったと思い出す。

お揃いは元々どっちでもいい派。

向こうが同じものを欲しいならええよくらいの感覚だったけど、ひよとのお揃いにはこだわってしまう。


「ひよだけや」

「このサングラスかけて海行きたいなぁ」

「めっちゃガラの悪い二人やなぁ」

呟くとひよは笑っている。

でも海に行く時、活躍しそう。

ほら、目も日焼けするって言うやん。

そういうネットニュースの記事を読んだ事あるから。






お会計を済ませた後、飲食店が並ぶフロアにやってきた。

何が食べたい?とか言いながら迷いながら結局パスタ。

ひよは野菜たっぷりのクリームパスタ。

莉兎はアオリイカとたっぷりの大葉が乗った明太子パスタ。


向かい合わせで食べながらふと感じる。

ひよと外食したのは初めてだと。

いつもひよの手作りご飯を美味しく食べてたけど、たまには外食もいい。

喜んでスプーンを添えてフォークでくるくるとパスタを巻くひよに微笑む。


些細な事なのに心の中で初めて外食、という項目に丸をつけたい気分。

これからもっと丸をつけていきたい。

「初めて」を重ねていきたいと感じながらパスタを食べれば大葉がアクセントになっていて美味しい。



食べ終えてから少し二人で話す。

穏やかな照明の光と落ち着いた店内。

周りは女性同士やカップルが目立つ。

莉兎とひよはどう見えているんだろう。

きっと「仲の良い友達」なんだろう。


「カップルって勘づく人おるんかな?」

「おらんのちゃう?」

ひよは氷の入った水を飲みながらあっさり言う。

まぁ周りの目なんか関係ないけど。

お互いが分かっていればいいこと。


「朝まで激しいえっちしてたのになぁ」

呟けばひよは思い切り咳込んでいる。

苦しそうに眉間に皺を寄せて少し落ち着いた後で

「普通に言うな!」

怒りながらもまた一つ二つと咳込んでいた。

照れる所が可愛いけど事実やもーん。

へらへら笑ったけど睨まれたから押し黙る。



そろそろ出ようかと立ち上がった所で伝票をサッと奪われた。

莉兎も手を伸ばしかけていて本当に僅差。

まぁ会計の時に出せばいいやと思っていたら莉兎を押し退いてひよが支払いを済ませた。

「なんでやねん」

財布を出して払おうとしたのに体をグイグイ押されてイラつく。


レシートをもらって店を出た後で言われたのは

「ガソリン代」

してやった感を出しながらニッと笑うひよに呆れてしまう。

そんなん気にせんでいいのに律儀な奴。

生真面目すぎるやんと思いながらもひよの気持ちは有難く受け取る事にする。

「ご馳走様でした」

「いーえ。生活雑貨見に行こ」


ひよが手を繋いでくる。

それに応えるように握り返して歩いてエスカレーターで下る。

段々と下降していくとひよより身長が高くなった気分。

ひよの頭のてっぺんを撫でれば

「優越感に浸ってるかもしれんけど今だけやからな」

振り返ったひよは偉そうに言う。


ほんの数十秒やけど夢くらい見させてくれ。

これくらいの身長差があれば、の夢。

ひよを包み込めるし上目遣いも見れる。

それに顎に指先を添えてキスもできる。


あぁ、そんなんしたいと思った途端地面に辿り着く。

ひよより身長が低いチビな莉兎が露わになる現実。

くそ、今から牛乳飲んで伸びんかな。

牛乳嫌いやし今更感たっぷりやけど。


そんな残念そうな雰囲気を感じ取ったのかひよは手を繋ぎ直しながら小声で言う。

「今の莉兎が好き」

歩きながらひよを見ればちょっと恥ずかしそうだけどそれを誤魔化すように笑っている。

途端に嬉しくなって身長差を気にする気持ちがなくなる、莉兎の単純さ。

ひよって莉兎の操縦上手すぎ。


「莉兎も同じやで」

「ん、」

「今のひよが好き」

「知、ってるし」

横柄に言ったつもりかもしれないけど恥ずかしさが出て吃ってる、可愛すぎか。






二人でニコニコしながら生活雑貨の店舗に到着。

ひよはもっとニコニコになって目を輝かせながら見ている。

莉兎は並ぶ商品にさほど興味がないけどひよがニコニコなら伝染してニコニコ。


見守りながらキッチン雑貨を手に取って「いいなぁ」とぼやくひよ。

「買わんの?」

「今はまだ我慢かな。買い足すなら引っ越した後かも」

「まぁそうやな」

「食器見に行こ」

「うん」


キッチン雑貨から名残惜しそうに離れて食器を見れば可愛い色や丸みを帯びたり角張った食器と様々。

お皿や小鉢、お茶碗やマグカップ。

二人で見ながら

「とりあえずお茶碗とお箸だけにしよ」

そう言い合って決める。

結局青のお茶碗とお箸が莉兎、黄色のお茶碗とお箸がひよ。

どちらもパステルカラーで可愛い。

もちろん色違いだけどお揃い。

満足そうにニッコニコな莉兎を見てひよは笑う。

「ほんまそれだけでいい?コップとかは?」

「引っ越してからでええよ。ひよの家にコップあるもん」

「まぁそうやけど」

食器を買う事。

お茶碗とお箸だけど嬉しい。

一人暮らしを始めてから自分の食器なんてなかったから。

それもひよとお揃いだ。

喜びは倍だ。

このお茶碗とお箸でご飯を食べる時が楽しみ。



これで買い物は終わりかと思いきや、ひよが立ち止まって何かを見ている。

覗き込めばお弁当箱のコーナー。

買い替えるのかと思っていたら

「どれがいい?」

その問いに迷う。

サイズもあるし色だって様々。

でもひよなら黄色じゃない?と思ってクリーム色の少し小さなお弁当箱を指差した。

「…莉兎のお弁当箱やで?」

「え?莉兎の?」

「あたしの分はあるもん」

「…作ってくれるん?」

驚いたままひよを見つめる。

そりゃいつだってひよのお弁当のおかずを狙ってきたけど。

普段はコンビニのお世話になってるけど。


瞬きを繰り返しながら

「二人分作るん大変ちゃう?」

心配すればひよは笑う。

「一人も二人も一緒やもん。いらんかったらええけど」

「ほ、欲しい!」

「それなら選んで」


え、やば。

ひよが作ってくれるお弁当を持って仕事に行けるとか。

午前中疲れた気持ちをひよのお弁当で癒されるとか。

午後からの仕事を頑張れる気しかせぇへん。


嬉々とした様子で真剣に選ぶ。

そしてやっぱり手に取ったのは落ち着いたブルーのお弁当箱。

グラデーションになっていておしゃれだし可愛い。


「これがいい!」

「はいはい」

「めっちゃ嬉しいんやけど」

「はいはい」

「ひよありがとう大好き愛してる」

「…もうこれでおかず泥棒されんで済むわ」

ぶっきらぼうに言うひよの照れ隠しだと気付く。

だってひよを纏う雰囲気が跳ねている感じがするから。


へへっと笑いながら喜んでお会計。

ひよが支払いをしようとしたけどそれを制してクレジット払い。

後ろで文句を言ってるひよを宥めつつ片手に素敵な食器とお弁当箱を持って店内から抜け出す。


「プレゼントしたかったのに」

「気持ちだけで十分。ほんまおおきに」

「そんなんええよ」

なんという幸福感。

まるで生温いプールに浮かんでるみたい。

ひよといる間、ずっとそんな感じ。


人から見れば小さすぎる幸せかもしれない。

でも莉兎にとっては大きすぎる幸せ。

幸せのものさしは人それぞれ。

小さな粒のような幸せだとしても集まれば大きな幸せになる。

きっと、ひよとならそういう幸せを延々と感じられる気がする。






一通り買い物を終えて手を繋ぎながら外に出た。

外は昼をとうに過ぎて夕方に入りつつある。

楽しかった週末の幕引きみたい。

でもひよが言ってくれた通り、何度だってこんな週末は訪れる。

また一週間頑張って仕事に勤しもう。

月曜日から始まる戦いにたっぷり活力をもらったんだからいくらでも頑張れる。



「ちょっと風があって気持ちいいな」

「うん、暑くもないしちょうどいい」

「家帰ってからどうする?」

「んー…ダラダラしてイチャイチャして本気になって」

「お前の頭はそれしかないんか」

呆れるひよをよそに莉兎は笑う。

だって触れてたい。

せめて家にいる間は。


「黙って抱かれてろ、ひよこ」

ライオン級の態度の大きさ、ひよ曰く。

ふふんと偉そうに笑いながら車に近づき、手を離して運転席と助手席に別れようとした時

「もうやばい…」

ひよは俯いて耳が赤くなっている。

こういう強引さとか大胆さが好きらしい。


後部座席に荷物を載せて車に乗り込めばすぐにくっついてきた。

「そんな可愛い事されたらこっちがやばいねんけど」

「あたしの方がやばいわ」

「ここで襲っていい?」

「アホか」

パッとすぐさま離れるひよは甘い雰囲気が消え失せている。

冗談やのに、とぼやいたけどもしも「ええよ」と言われたら多分スイッチオンになってたと思う。

車のエンジンをかけるより莉兎自身のエンジンがかかったはず。


「家でたっぷりやな」

「アホな事言うたら拒否るから」

「あいにくひよに拒否権ないねん」

「なんでや」

不貞腐れる様子に笑いながらエンジンをかける。


車に流れるロック。

この曲はベースが響いて心地良い。


運転を始めながら、さぁ家に帰ろか。

夜を目一杯楽しみたい。


でもお酒は飲まない方向で。

ひよの酒癖悪過ぎ。

あんな淫らになられたらほんま頭のネジ吹っ飛ぶ。

絶対濃いめのハイボールは外で飲ませんからなと固く誓った昨晩のこと。

アホな男共に好き勝手やられるに決まってる。

そんなん許すわけがない。


「ええよって頷かせる自信あるもん」

「そんな事ないし」

「ふーん…家帰ったらええよな?ひより」

ニッと笑いながらチラッとひよを見れば返す言葉を失って真っ赤。

からかってるわけじゃない。

莉兎だって名前を呼ぶ時、結構ドキドキしてるんだから。


前を向いて安全運転を心がけていたら

「…ほんまずるい」

寄り添ってくるひよが愛おしい。

莉兎の勝ち。

でも偉そうにふふんと笑う事はできず、心拍数上昇中。



名前を呼ぶ。

単純な事やのにこんなにも嬉しくて心がスーパーボールみたいに跳ねるなんて子供っぽいかなぁ。

それでも何度だって呼びたい。

真剣に真面目な顔して。

愛してると瞳で伝えながら舌で転がすように呟く、ひより。

自然と頬が緩みながらくっついたままのひよの髪を一度だけサラッと撫でた。


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