第2話 ましお と りつ

宮田 眞汐(ましお)と、律(りつ)は、双子だが昔から正反対な存在だった。


 眞汐は、女性アルファで、律は男性オメガだった。産まれて直ぐの検査でソレが判明し、付ける予定だった名前は、逆にされた。中学生くらいまでは、確かに律はオメガらしく、華奢で繊細な、美しい子だった。そして、眞汐も大胆で活発な男の子みたいな子供だった。


 しかし、ふたりは仲良く交差するように、律は背も伸び体もガッシリと男らしく、昔から良かった成績は他の追随を許さない程に抜きん出はじめた。眞汐もファッションや美容に興味を持ち、容姿は輝くばかりに磨かれていったが、成績は振るわなかった。




(双子のオメガの律がこんなに優秀なら……いつか私、どれだけ天才が開花しちゃうんだろう⁉ 見ただけで何でも記憶しちゃったりとか? 人類が解いたこと無い定理をといちゃったりとか? うーん……あんまり興味ないけど、さすが私だわ)




「あああー、とにかく今は、コレが意味分かんない……何なの逆関数とか……双曲線のグラフ書くより、綺麗なラメ目元に入れる方がよっぽど楽しいし……これ、本当にある日突然理解できるようになんのかな? まぁ、自転車も突然乗れたし、フラフープも突然回せたし……そんなもんかな?」


「……」


 眞汐が背後に気配を感じて振り返ると、牛乳をパックから直飲みしている律が、此方をみていた。パッチリとした目が、半分くらいになっている。


「何見てんのよ!」


「いや……運命の番の元に生まれたアルファって……すごい天才か……ヤバいかどちらかなのかと思って……今、頭の中でグラフにして計算してた……」


「どういうこと?」


 眞汐が口を尖らせて鼻につけた。


「眞汐は相当やばいってこと」


「あんた……今に見てなさい……私、いつかあんたより立派なティンティン生やすから!」


「さっ……最悪だ! ほんと最低だ! 脳みそが腐る! 眞汐と話してるとアホになる!」


「褒めないで」


 ワザと爽やかな天使の微笑みを浮かべた眞汐に、白目を剥いて首を逸らした律が階段の方へ歩き出した。

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