第33話 花
食事の後、フィルさんは仕事をするため部屋に戻り、私はルミナスに着いて行くことになった。ルミナスはいつも魔法の鍛錬をしているのだと言う。私はその手伝い、お目付け役としてその練習を見ていた。今日も小さな部屋で枯れた花を再生する魔法を練習している。案外簡単そうだが、植物への理解と植物を再生する想像が上手くできないと、成功させられない。生物としての種が違うから求められる想像力も高いのだそう。程なくしてルミナスは枯れた花を再生させることに成功した。
「一時間で一本か……まだまだ先は長そうだな。リト、お前なんかアドバイスないか?」
珍しく素直に助言を求めてきて少し驚く。
「えっ……と私もそんなに得意じゃないし……ていうかやったことない……」
「やってみるか………いややってみろ!」
目の前に強く枯れた花を差し出されて仕方なく花に手をかざす。
「石よ、リト・ホーリーが願う。花を再生させろ。」
そう唱える。その後も唱え続け、一時間が経った。隣ではルミナスが二本目の花を再生させた。
「よし、さっきより上手くできた気がする。リト、お前……才能ねぇな。」
直球にいわれ、軽く拳を握る。
「こういの苦手なの」
「俺が学校辞めたあとから首席になったやつが良く言う」
「知ってたの?!」
「お前メディア見てねーのか、ちょっと待ってろ」
暫くしてから薄い平の水晶を持ってきて、「魔法学園創設以来初めての事件」という題目が出てきた。そこにはあることないこと書かれており、それらを見た第三者たちが色々と議論している。
「ほら、ここ小さいけど」
そこには私をはじめとした。一年生が多く生き残ったとかいてある。
「代表として書かれるってそう言うことだろ?」
そう言うことだったのを見抜かれてることに敗北感を覚え、頬を膨らます。
「そんじゃこれ、片付けるな」
そう言い、水晶を持つが手を滑らせてそれを足の上に落とす。
「痛った」
「ちょ、足大丈夫?!」
足を見ると軽く内出血しているようだった。
「すぐ治療するから」
「助かる」
私たち治癒魔法士は怪我をすることを良しとされない。それは生存本能が働き、相手の治療よりも自分の治療を優先してしまうからだ。軽度の傷だと話は変わるが、その考えを頭に縫い付けるため、軽度の傷も治してはいけないことになっている。
「よしこれで大丈夫!」
「おぉありがとな」
その後も修行を続けて一日が終わる。
「今日も家に帰るのか、気をつけろよ」
「うん、ていうか神父さま遅いね」
噂をすると駆け足で本人がやってきた。
「すいません、少々仕事が長引いて。本日もありがとうございました。」
布団に入り、今日もお父さんが読み聞かせをする。今日のお話はドラゴン退治の話だと言う。
「その日はお祭りでした。街のみんなは家からでてきて笑い声が響く。しかし、悪いドラゴンが街を襲ったのです。そのことを知り、騎士はすぐ駆けつけました。苦戦しながらも騎士はドラゴンを倒すことに成功しました。しかし、ドラゴンは再び復活しました。二回、三回繰り返しても結果は変わりません。何回も繰り返し、ドラゴンはとうとう虫の息となりました。しかし、後ろを振り返るとそこに、街の人々はおらず、一人の踊り子だけが立ち尽くしていました。騎士はなにが起きたか聞くため、踊り子に近づきます。踊り子は言いました。"みんな消えたわ、ドラゴンに食べられたの"。その時、騎士は街の人の生命力がドラゴンへ移っていたのだと気づきました。踊り子は言いました。助けてくれてありがとう。騎士は釣られて笑い、踊り子と一緒に空の星へと帰ったのでした。」
話が終わる。私は眠れず外に行き、空を見上げた。
神父であるフィルはルミナスが寝た後、修行していた部屋へ行き、成果を記録する。枯れた花を再生させる訓練は昔からしてきたため、フィルは心配していなかった。しかし、四本あるうちの一輪だけ花が枯れていた。ルミナスの態度は少し悪いが、根が真面目な子だと知っていたフィルは驚いた。また、時間が掛かってもこのくらいのことで躓くほど劣っていないことも知っていた。
(神殿に来てから一日たりとも修練も、祈りも、手を抜いたことのないのに……)
フィルは嫌な予感を感じながらも一時の気の迷いであることを願ったのだった。
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