第28話後日

不思議な部屋から戻って来て、私は何か事件に関する証拠がないかと探していたが、結局何も見つからなかった。夜が明けてからは燃えていく校舎を窓越しに眺めることしかできなかった。ワイル先輩から伝書鳩が届き、キープアウト装置を張ってから合流するようにと書かれていた。私は書かれたようにしてから先輩と合流した。


先輩は変わらずに会場から少し離れた庭で生徒達をまとめていた。五百人近くいた生徒は百人ほどになっていた。私は騒がしい人混みを避けてワイル先輩の元に向かった。

「ワイル先輩」

「リトさん…とても大変な事態になってしまいましたね」

校舎は今も轟々と燃えている。そして、ここでも火種が生まれている。

「これは一体どうなっている。おい、そこのお前早く父上に連絡しないか!」

貴族の子供達がキャンキャンないている中でも皇族は特に目立っていた。怒り狂うトラッシュに、ヒクヒクと泣き喚くローザ。そして、見え透いた演技でシオルに抱きつくラビー。見ているだけで吐き気がする。

「本当に大変そうですね。」

「リトさん、まだ余力は残っていますか」

「なにするつもりですか?」

「鎮火ですよ……ジロールさん」

あたりをキョロキョロと見回し、シオルの名前を呼ぶ。

「っ!はい」

ラビーから解放されて少し浮き足だったシオルが駆け足でやって来た。

「少し、席を外します。この場のまとめ役を任せても良いですか?」

「はい……ところで……いえ何でもないです。」

私の方をチラッと見てから考え込んだようだが、きっと関係のないことなんだろう。

「リトさん、事態は一刻を争います。なので飛行魔法で僕の後を追ってください。」

飛行魔法への耐性に自信のない私は分かりやすく戸惑った。

「もしかして、苦手でしたか?」

「高いところが……短い時間なら大丈夫なんですけど……」

「では、私の後ろに乗ってください。」

(乗ったからって恐怖がなくなるわけじゃないと思うけど……そんなこと言ってる場合じゃないよね)

「お願いします。」

「では、向かいますね。ジロールさんよろしくお願いします。リトさんは振り落とされないようしっかり捕まっててください」

そう言うとものすごいスピードで校舎へと向かった。校舎に着いたら私の魔力共有と先輩の水の魔法で炎を鎮めることができた。その後、保存魔法が付与された魔道具を使って、隠蔽ができない状態にした。広場に戻ろうとした時、三十人近くの死体を見つけた。考えたくもなかったが、あれは教師の死体だろうと先輩からも話された。これで、長い一日が終わった。


後日私たちは各家への帰宅が国から命じられた。しかし、今回の事件に関しては敢口令が敷かれた。理由としては年明けを祝う祭りを前に解決していない事件を公にして、国民の混乱を防ぐためだと。かなりまともな理由に私は驚いた。他にも大量の救魔法士と将来の優秀な魔法士の死亡。国はこれらに対しての対応をする時間が欲しいのだとか。私の近辺で言えば、クラスメイトはクレラゼ以外生存が確認されていた。みんなどこか悲しそうにしていたが、時間が経てば感情に整理がつくのだろう。別れる時には明るく振る舞う姿が確認できた。


「見えて来た………。」


私の故郷が見えて来て、どこか懐かしい気持ちに包まれる。重い足を動かして私は大地に降り立った。

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