第26話魔力

「無事で良かったです、リト!」

「プレッテも、どこか怪我してない?大丈夫?」

「はい、私は……でもセリーが魔力切れで…」

そう言われて、セリーの方を向く。セリーは苦しそうに床に突っ伏していた。

「セリー!」

私はすぐにセリーに駆け寄り魔力切れを緩和させようと魔法を使ったがセリーの表情は暗いままだった。

(どうして、魔法が効かない。それなら………)

焦った私は魔法を連発しようとするがそれに勘づいたプレッテに止められた。

「リト!あなたまで魔力切れを起こしてはダメです!」

「でもこのままなのはっ!」

「リトさんっ、無事ですか」

ワイル先輩がこっちに駆け寄ってきた。私は戸惑いながらもセリーの状態について話した。ワイル先輩はすぐ状況を察知し、セリーに寄る。

「これは…なにか大きな容器を持ってきてください」

「そう言われても、」

戸惑っているとすぐクレラゼが土を出した。

「これでなんとかなりますかね?」

「形を変えれますか?」

「それは俺がやろう」

そう言うのはクワイルだった。彼は風を使い大きな土を器用に削っていった。できた容器にたっぷりと水を入れる。

「リトさん、彼に魔力の供給をお願いします。彼が今の状態を保てるかどうかで彼女への影響力も変わってくる。」

「は、はい」

私はまたすぐに魔力の供給を始めた。

「黒髪のあなた、セリーさんが息をできるように顔を支えておいてください。プレッテさんはセリーさんから魔力を吸い取って欲しい。」

「は、はい?」

「出来るの?それとも出来ない?」

「や、やります!」

その返事を聞いて、ワイル先輩は作業を始めた。できるだけ薄着にさせたセリーを水の入った容器に入れた。ワイルは顔を支え、プレッテはセリーの魔力を吸い取る。ワイル先輩はセリーの口に大量の水を入れた。それにワイルは驚いた。

「え、ちょ、何やってんだ?!」

「説明は後ほど、それよりしっかり押さえといてください」

ワイル先輩は水を増やしつつセリーの肌に触り何やら集中しているようだった。数秒経つと容器内の水が減っていた。それだけでなくセリーの身体から黒い墨のようなものが滲み出てきた。

「水が減ってる?!」

「プレッテさん、魔法を止めてもらえますか?」

そう言われ、魔法を止めるプレッテ。それと同時にセリーは咳き込んでいた。

「ゲホッ…ゴホッ…っ」

「セリー?!」

「これでもう大丈夫です。」

クワイル先輩はすぐセリーを容器から出し、セリーの身体に纏わる水分を集め、セリー本人を乾かした。

「みなさん協力ありがとうございます……まぁお礼よりも僕が何をやったかの方が気になりますよね。説明もしたいんですが今はそんな暇なさそうなのでまた後日セリーさんも交えてでお願いしたいです。」

私たちは辺りを見渡す。なにかが腐敗したような臭いに、泣き叫ぶ人たち。沈下から時間がたち考えられるようになったのか、周囲の惨状もこの場にいる人々も、先ほどより状況が悪化しているようだった。

「リトさん。生徒会メンバーも教師も見当たりませんし、連絡もありません。僕は生徒の生死の確認と、安全の確保に移ります。少々嫌な役回りですが、あなたはこの場の状況の記録ともし隠蔽をしようと侵入者が来たらその処理をお願いします。」

そう小声で話されて、私は小さく頷いた。

「みなさん取り敢えず外に集まりましょう。」

そう会場内に響く声にどんな人も反応して、ワイル先導のもとこの場を去っていった。

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