第6話飛行授業

魔法学校入学から一週間。私たちは気力を失っていた……一人を除いて。

「うっおおーーーー!見ろよ!!俺もう板浮かせられるぞ!三十分余裕で!」

「なんでそんなに元気なのか分からないわ」

「?セリーお前顔色悪いぞ………って半分くらい顔色悪いじゃねぇか大丈夫かよ?!」

「あんたがおかしいのよ!!」

毎日毎時間続く基礎授業。楽しくもなければ体力、精神力が削られる。それに目に見えた成果が中々表れず、私たちは疲弊しきっていた。

「みなさん、授業の前に一つ大事なお知らせがあります。来月の最終日に大型テスト期間があります。テスト期間は普通三日間から四日間に渡り行われますが、あなたたちは一年生で授業の科目も少ないので二日間でテストを行います。なので、テストへ向けての準備をしておいてください。」

「先生テストの詳細については教えていただけないのでしょうか?」

(クワイルさん始めて声を聞いた気がする。でも、テストがあるって初耳すぎます。)

「すいません。詳細については三日前に通達されるのがうちの学校のルールなんです。ですが、基本日々の授業で学んだことしか使わないので、変にテストの対策などしなくても大丈夫ですよ。」

「先生"大型"ってことは他にもテストの形式がある、ということですか?」

「良い着眼点ですね。シオルくんの言う通り小型テストというものもあります。そちらは二ヶ月に一回定期的に行われる適性魔法でのテストです。ただし、一年生のみなさんは入学の関係により、年に四回のテストとなります。……まぁこんなところでしょうか………では、本日の授業を始めますが、基礎魔法の授業の後の三時間の体力作りの授業は飛行術に触れますので、気合を入れておいてくださいね。」


基礎魔法の授業が終わり、飛行術の授業が始まる。

「さぁみなさんこんにちは。そして、初めまして、私の名前はペガ・フロー・アース。飛行術の担当をします。ミス・ペガと読んでちょうだい」

「ミス・ペガは〜飛行に長けているのですか〜?」

「あなたはミスター・クレラゼね。えぇそうよ。きっと名前に疑問をもったのね。ラストネームに魔法適性が入っているのはとても珍しいのことです。なぜかというと七天大魔法士に認められた人工魔法の頂点だけがつけられるものですから、覚えておきなさい私はこの世界で最も飛行術が優れている魔法士です。それでは飛行術の一歩目としてみなさんには空に慣れてもらおうと思います。杖よ我が命ずる目の前にいる全ての人間を浮かせたまへ」

そう唱えると私たちは宙に浮いた。

「す、すっげぇぇー俺ら浮いてるぞ」

「それだけじゃない………すごい高いよーー!」

景色が綺麗というダズに対してセリーが言う。

「そこじゃないでしょ!」

「えっ、そうなの?!」

「……はぁプレッテまで。物を浮かすのは簡単よ、でも生物を浮かすとなると話が変わるわ。不規則で個人差があり、体内に水分を保有していて、私たちの上昇に合わせて気圧も変化する。それらの調整をして私たちに不快な思い一つさせず、20メートル近く浮かせるなんて凄すぎるわ。」

セリーが若干早口気味に説明をするとペガ先生のも上空までやってきた。

「お褒めに預かり光栄よ、ミス・セリー。この中に高所恐怖症の方はいらっしゃるかし………ら?」

先生が聞くまでもなく一人明らかに萎縮している人がいた。

「…………せ、せせんせい、死にそうです……」

「……ミス・リト」

そう、私さっきから足が、ガクガクして内臓が動く感覚に気持ち悪さを覚えていたのです。

「高所恐怖症は高いところは怖いという自分の中の認識を変えなければどうすることもできません。……ミス・リトは過去になにか………いえ、高所恐怖症を直したいと思ったらどの日でもいいから放課後に私の元を尋ねてください。ミス・リトに限らず、無理は一番良くないので体調が悪くなったら私にすぐ言ってください。また、私が危険だと判断した場合強制的に地上に戻すことも頭に入れておいてください。」


三時間の飛行授業が終わり、私は地上と重力の存在のありがたみを一人噛み締めていた。

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