第5話適性

魔法学校三日目、午前中は基本魔法の授業をして午後からは始めての適性別授業だ。

(私の教室ここだよね)

楽しさと緊張が混じった気持ちでドアを開けると、そこには一人の男の子がいた。目が合う。逆光で輝く銀髪に澄んだ青い瞳。私は見惚れた。

(あっ……)

目を逸らされた。私と同様あまり社交的ではないのかもしれない。チャイムがなるが、生徒は私と彼の二人だけ、ドアが開く。

「今年は二人かぁ、七十八人中二人ってだいぶ偏りすぎだろ、そう思わね?」

「あ、はいそうですね」

急に話をふられて困る。何だこの人は教師なのだろうか。

「二人ならここ座ってよ」

そういい一番前の席を指差す。

「さぁ初めまして二人のホーリー。俺は治癒魔法専門教師ドレアン・ホーリーだ。特異魔法である治癒魔法は七適性に比べて適性者が少なくて人数が少ないが今年は例年に比べ、更に少ないらしいな。そんで、分かってるだろうが、適性者が少ないからって他の魔法より優れているわけではないことを頭に入れておくように。」

(ドレアン先生、早口で少しこもった話し方をする人なんだな……少し聞き取りにくいかも)

「じゃあ銀髪をした青い瞳の子から自己紹介頼むよ」

「俺の名前はルミナス・ホーリーだ。よろしく頼む」

「じゃあ次白髪の緑の瞳の子」

「リト・ホーリーです。よろしくお願いします。」

「じゃあ、さっそくだが治癒魔法とは何かを教える。まず、魔法は大きく二つの枠組みに分けられる。自然魔法と人工魔法だ。自然魔法は自然を操ることで物事に干渉させる魔法のことで火、水、草木、風、大地、光、闇を各々の適性により操る。次に人工魔法。これは別名基本魔法と呼ばれているが、その内容は物体を操る魔法のことを言う。これは自然魔法の基本だ。しかし、治癒魔法には必要ない。治癒魔法は特異魔法だからだ。特異魔法とは願い、想像することで創造、破壊、再生ができる魔法のことだ。治癒魔法では他の魔法よりも特に"願い"の部分が大切になってくる。より詳細に"願う"ためには共感力が必要だ。そのためにお前らにはまず、この世に存在している全ての毒を摂取してもらう。」

「「………………………。」」

(聞き間違いかな?今あの人毒食べろって言った?…………死ねってこと?私たちに?)

そんな自問自答を心の中で繰り返す。

「もし、死ぬようなことがあったらどうするんですか?」

「死ぬ、誰が?」

「私たちが」

「俺がいるからそんなことにはならないに決まっているじゃないか。」

何がおかしいと言いたげな顔で返答する。

(………殴っていいかな?)

「それは先生が居る前で毒を摂取するってことですか?」

「当たり前だろ。勝手に死なれちゃ俺の責任として訴えられるじゃないか。」

(よく考えるとそうなのだろう、なのにドレアン先生は説明してないことを当然のように言ってきて、よく分からない人だ。)

「死なない保証は?!」

「俺を誰だと思ってるんだ。………結構有名だと思ってたんだがな。」

そう言うとドレアン先生は首に下げていたであろうネックレスを取り出した。

「……!!それは!」

「神官の証。神格だ。」

神格とは神官の証である。魔法士には属性ごとに階級が設けられている。治癒魔法士はそれが三つの段階に分かれていて全体の八十五パーセントは治癒魔法士、十ニパーセントが聖女、残りの三パーセントが神官という階級である。つまり、治癒魔法士のトップ。

「これで質問の答えになったかな。じゃあ今日は初めてだから三つの毒を摂取して体のどこがどう痛くて、どんな症状なのかをまとめよう。」

「「…………………」」

この時から私たちの地獄が始まった。

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