きえたあいさつのひみつ
霜月あかり
きえたあいさつのひみつ
ユウくんの通う小学校では、朝のあいさつ運動が行われていました。
校門の前には、元気な声が響きます。
「おはようございます!」
「おはよう!」
でも、ある朝――。
「……あれ?」
いつも一番にあいさつしてくれる、となりのクラスのアカリちゃんの声が聞こえません。
「今日はお休みかな」
そう思って教室に入ると、黒板のすみに貼られた紙が目に入りました。
> 『あいさつが きえました。 さがしてください。 ヒントは“かげ”のなか。』
クラス中がざわつきます。
「なにこれ? 誰のいたずら?」
「“かげ”って、どこのこと?」
ユウくんは首をかしげながら、友だちのソラといっしょに校内をまわりはじめました。
---
まず向かったのは、校舎のうしろにある植木のかげ。
そこには、風に揺れる黄色いリボンが結ばれていて、小さなメモがひとつ。
> 『よく見て、よく聞いて。あいさつは ことばのプレゼント。』
「……ことばのプレゼント?」
ソラがつぶやきます。
「なんだか、メッセージみたいだね」
ユウくんは、さらに校庭のすみ、体育倉庫のかげへ。
そこにも、同じリボンとメモがありました。
> 『だれかが さびしいとき、ことばが あたためてくれる。』
だんだんと、いたずらとは思えなくなってきました。
---
そして最後のヒント――。
図書室のすみにある大きな地球儀のかげ。
そこに、小さな箱が置かれていました。
箱を開けると、中には一枚の写真。
あいさつ運動のとき、みんなが笑顔で「おはよう!」と言っている場面です。
その裏には、アカリちゃんの字でこう書かれていました。
> 『“あいさつ”がきえたら、心のあかりも消えちゃう。
だから、みんなでもう一度――“おはよう”をひろめよう。』
その瞬間、チャイムが鳴りました。
廊下から、明るい声が聞こえます。
「おはよう!」
「おはようございます!」
ユウくんとソラが顔を見合わせると、そこには――笑顔のアカリちゃん。
両手には黄色いリボンのかごを持っていました。
「今日は“ことばを探すミステリー”だったんだよ」
アカリちゃんはにっこり。
「“あいさつ”って、見えなくても心をつなぐ宝物なんだ」
ユウくんは少し照れながら言いました。
「そっか……じゃあ、ぼくの“おはよう”もプレゼントになるんだね」
みんなの声が校庭に広がります。
まるで風のように、あたたかい言葉がいくつも重なって――
“きえたあいさつ”は、いちばん明るい形で戻ってきました。
きえたあいさつのひみつ 霜月あかり @shimozuki_akari1121
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