ありのままの。

久米橋花純@旧れんげ

自分

ありのままの自分を失った気がする。

あの子の前でも、君の前でも。

あれは本当の私じゃない。

あのまま、ありのままの私を出していたら、私はここにいないだろう。

でもきっと、ありのままの私を出せていたら、私はこんなに苦しんでいないんだろうな。


あの子は、君のことが好きなんでしょう。

そして、君もあの子のことが好きなんでしょう。

あの子は、自分を見せてる。

ありのままを、見せている。

だから君も、あの子に惹かれるんでしょう?


「僕は、おとなしいほうが、いいな。」

それは、あの子を、示しているんでしょ?

その言葉が君の口から出た瞬間、ガラガラとなにかが崩れ落ちた、気がした。

何が崩れ落ちたかなんて、わかりたくもない。

でも、君は私に現実を突きつけてきたよね。

君の、好きな人なんて、とっくにわかってるのに。

どうしてこんな、もやもやしてるんだろう。


私は、死んだよ、君のおかげで。

あの言葉が、私を殺したんだ。

なんて、責任の押し付けなんだけど。

でも、私のせいで、君のせい。

君を好きになった私のせい。

あの言葉を放った君のせい。

お互い悪いんだよ。

でも、私は悪くない、って思ってる。

君のあの言葉がなければ、私は死んでなかったんだもの。


あの日から、おとなしくなったよ。

あの日から、自分を出そうとしてたよ。

でも、それはありのままの私を殺したんだ。

だから、君は私のことが嫌いなんでしょう。

嘘で塗り固められているんだもの。


もう、何言ってるか、わかんなくなっちゃった。

でも、ひとつだけ、これだけは、君に届いて。

——————ありのままの、私を愛して、ください。

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ありのままの。 久米橋花純@旧れんげ @yoshinomasu

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