嫌ないたずら電話

猫ララ

第1話 嫌ないたずら電話

「ちょっと、お母さん、山田さんのお通夜おつやに行ってくるから、あまりおそくまでゲームやんないで早めに寝てねぇ」


「うん、分かった。早めに寝るから大丈夫だいじょうぶだよ」


「まあ、はセキュリティーがしっかりしているから心配しんぱいいらないわよねぇ、ジョンもることだし」


「そうだよ、心配いらないよ。じゃあ、いってらっしゃーい」


 夕方、お母さんが葬儀場そうぎじょうにお通夜という儀式ぎしきに出かけた。僕は宿題しゅきだいから解放かいほうされ、やっと自由になった。

 今日はラッキーだ!一人で留守番るすばんなんて!……今夜はゲームやり放題ほうだいだ。今日こそ魔王をたおしてエンディングまでたどりいてやる。

 今、近所きんじょの山田さんと、どっちが先に、このゲームをクリアできるか勝負しょうぶしているところだ!

 負けた方がアイスをおごらなきゃいけないんだけど、山田さんは大人おとなだから、もし僕が負けても子供にアイスを奢らせるようなことはしないと思う?たぶん⁉


「よーし…お菓子かしでもべながらゲームをはじめるぞ!」


 ……うーん、ちょっと、トイレにに行こう。つかれた…ちょっと休憩きゅうけいしよう!ゲームは教会きょうかいでセーブしないで、オートセーブにしておこうかな。

 ……あれ、トイレに入っている時に電話でんわるとか、マジかよ?こまったなあ…⁉

 ……まったく…しつこい電話だなぁ、ずっと鳴らしているんだから!

 はいはい、今、すぐ出るよ!


「はい、犬飼いぬかいです」


「もしもし、おたくはたけの中から、おとなりの田中さんの声が聞こえてくるんですけれどもー」


「あの、どちら様でしょうか?」


「私ですか、私は、近所にむ山田ともうします」


「えっ、山田さんですか?」


「はい、山田です。もしかしたら、お宅の畑に田中さんがまっているかもしれません!」


「えっ、それで…?」


「いやぁー、畑を見てきたほうが良いのではないかと思いまして!」


「えっ、本当ほんとうに!いっ、いそいで見に行ってきます⁉」


 大変たいへんだ⁉僕の家の畑に田中さんが埋まっているかもしれない。事故じこなのか?それとも事件じけんなのか?早く行かなくちゃ。

 僕は、いそいで懐中電灯かいちゅうでんとうを持ってうちの前にある畑にやってきた。

 夜の畑は何だか不気味ぶきみだ。しかも、でこぼこしていて歩きづらい!


「田中さーん、いるんですかー?返事へんじをしてくださーい。…あれ?変だなぁ、何も聞こえないぞ⁉」


 急いで畑に来たけど、何も聞こえない。いたずらかな?そう思って僕は家に戻った。

 そして、家のドアを開けた瞬間しゅんかんまた電話がかかってきた。


「はい、犬飼です」


「もしもし、お宅の畑の中から、田中さんの声が聞こえてくるんですけどー!」


「おい、お前!いい加減かげんにしろよ、イタズラだろ!」


「本当なんですよ、私ですよ、山田ですよ!」


「えっ、今…気が付いたんですけど、声が以前いぜんお会いした時の山田さんの声とは、ちがうような気がするんですけど?」


「そうですかぁ?…私ちょっと今…風邪かぜをひいてしまいまして、いつもと声が違うんですよー」


「……本当ですかぁ?信じても…?…かりました。じゃあ、もう一度見て来ます。うそだったら山田さんの家に行きますからねぇ!」


「その方が良いですよ!何かがきてからじゃ、手遅ておくれになりますからねぇ!」


 僕は走った。急いで畑に行き、畑の中をおそおそる歩いて、あやしいところがないか、あたりを見渡みわたした。

 せまい畑だから何かあればすぐ見つかるはずだ。だけど何も聞こえないし、何も見つからない。

 これでは、イタズラではなくて、たちの悪いいやがらせだ。そう思って畑から道路どうろに出た瞬間しゅんかん、何かやわらかいものんだ。足のうらから、何だかとてもいや感触かんしょくが、僕ののうつたわった。

 僕の足元あしもとから何か不気味ぶきみで、とてつもなくいやにおいがただよってくる。


「これは、犬のウンコなのか。それとも…人間から出たブツなのか?」


 しかも…こいつは!もう考えたくもない!……でも、これはもう間違まちがいない!人糞じんぷんだ‼…ショックだ!……はなにかなりのダメージを受けてしまった!

 僕は、とんでもないものを踏んでしまった。 

 もう、このくつはダメだ!においが取れないからとか、そんな問題じゃない!気分きぶんの問題だ!……お気に入りの靴が台無だいなしだ!これは、てなければならない。そう思ってすぐ家に戻った。

 ―気持ちが悪い……あたまがおかしくなりそうだ!

 そして、また電話がる。……絶妙ぜつみょうなタイミングでかかってくる。

 まるで、どこかから監視かんしされているかのように。


「もしもし、犬飼です」


「あのー、山田ですが、田中さんは、見つかりましたかー?」


「おい、ふざけるな!おまえか、ウンコを仕掛しかけたのは!お前だろう!」


「あのー、私は山田ですけれどもー」


「ん?……ひょっとして、ひょっとすると声を変えているなー⁈」


「いえ……私は、山田です!」


「お前ボイスチェンジャーを使つかってんだろう!かってんだよ、こっちは!」


「いいえ、そんなことは…ありません。これは、私の声です!」


「僕の家にはなあ、あたまの良い犬がいるんだよー。お前のウンコのにおいで、かならずお前を見つけ出してやるからなぁー!」


「それはこわいですねぇ、犬飼いぬかいさんがいぬっていたなんて、私は知りませんでした。怖いですわぁ…!」


 まったく、ふざけやがって!こいつだけは絶対ぜったいゆるさないからなー‼僕は生まれてはじめていかりをおぼえた!


心配しんぱいはご無用ごむようです、ご安心ください!私は、山田ですから!……」


「ん、……今の声?…たっ、田中君じゃないのかー?」


「はて、さて、いったい、何のことやら?私にはまったく身におぼえのない事です……⁉」


「…その声だ!僕をだましたなー!その変な言い回しが!お前だということを証明しょうめいしているんだよ!バレてるんだよ!そんなに僕にゲームで負けたのが、くやしかったのかよ!」


「僕じゃないよ……⁉僕は?……田中君じゃないよ……!」


かった!いまからそっちに行く。お前の家はすぐとなりにあるんだからなー!」


 僕は、愛犬あいけんのジョンをれて、お隣の田中君の家に向かった。

 そして、玄関げんかんのドアをたたいた。


「あれ、犬飼君どうしたの?こんな夜遅よるおそくに!何か約束やくそくしてたかなー?僕眠いんだけどー?」


「うん、約束したよ!さっき電話で。さあ、ジョン!いい子だから田中君とあそんでおいでー!」


「やっ、やめろーーー、お前の家の犬怖いんだよーーー!ドーベルマンなんて飼うなよーーー‼」


「あれ?……何だか畑のほうから声が聞こえてくる。たぶん…田中君のお父さんの声だ⁈」


 僕は、家に帰って途中とちゅうでセーブした所から、またゲームのつづきをやり始めた。


「そうだ、バッテリーの充電じゅうでんをしなくちゃ!」


 ……あっ、お母さんが帰ってきちゃったよー!ゲームクリアできないじゃん。


「ただいまー、あんたまだ起きてたのー!もう今日は大変だったんだから!お坊さんが突然とつぜんに出るんじゃなーい‼』なんて、おきょうを読んでいる時に、大きな声でさけんだのよー⁉……お母さんビックリしちゃったんだからー!」


「僕も電話に出たんだよ!いたずら電話だったんだけど!」


「あら、嫌だ、誰からかかってきたのかしら?」


「あー、うーん、…近所の山田さんからだったよ‼」


「……今ねぇ、その山田さんのお通夜から帰ってきたのよ⁉ほら、あんたがゲームの約束をした、あの山田さん。亡くなられたのよ、あんた、分かんなかったのー?」


「えっ、犯人は田中君だったけど!」


「あら大変、警察に電話しないとまずいわねぇ。山田さん殺されたんだもの⁉」


「マジで?」


「そうよ?犯人はお隣の田中君って言ったわよねー?」


「うん、…言った。でも、今たぶんらしめられていると思うよ!」


「えっ、…そうなの?犯人捕まったの⁈これで安心できるわー」


 僕は何が何だか訳が分からなくなった。


「ほんと、なんだかお母さん、すごくつかれちゃったわぁ、あんたも早く寝なさいねぇ!ジョンにもしずかにするように言ってねぇー!」


 やばい、もう十二時になるのか?ジョンは今頃、活躍しているのかなあ?もう夜遅いのに、まだ犯人と戦っているのかなあ?ジョンのやつ、なかなか帰ってこないんだけど。

 ……確かに犯人は田中君だったんだけど、それはの犯人であって、殺人犯さつじんはんではないんだよなー?

 まあ、僕としては田中君がジョンと仲良くなってくれて、すごくうれしいんだけど……⁉

 だって、…今まで、ジョンのことをすごくこわがっていたんだもん。

 そうだ、結局けっきょく、山田さんは誰に殺されたんだろうか?

 それを考えるとねむたくなっても、全然眠れないんだけど!

 早く殺人犯が逮捕たいほされないかと気になってしょうがない……。


 こうして、いまだに事件じけん未解決みかいけつのまま……僕のクラスでは、田中君はと言うあだ名がけられた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嫌ないたずら電話 猫ララ @nekorara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画

同じコレクションの次の小説