第24話 化粧坂(けわいざか)はあの世の入り口
大姫のお堂を右手に曲がると、横須賀線の線路の下に出てしばらく歩くと、
急峻な坂道、化粧坂(けわいざか)が目のまえに見えてくる。
最初の切り通しとは違い、足場が妙に濡れている。
しかも岩でできた階段状の坂道になっていて、足を一歩一歩大きく上げないと、
前にすすめない。
「今日、初めての難所ね。頑張ろう!」
茜さんはそう言うと、すいすいあがっていった。
「あ、早い!茜さ~ん!」
私たちは、ここで初めて登山靴の有難さがわかった。
普段の靴なら、とっくに滑ってる。
すると上からキャーキャー言ってるカップルが降りてくる。
「え?パンプス!しかもミニスカート!」
なにあれ?彼氏も軽そうな服装で、うえうえ!っと言いながら降りくる。
彼女はずっと彼氏にしがみついて、みっともないったら、ありゃしない。
「なんか、彼氏とかとあんな恰好で来て、あれじゃ別れるんじゃないの」
紀代が軽蔑のまなざしでつぶやく。
しかし、こっちもあまり余裕ない。
景色を愛でる余裕もなかった。
ただひたすら滑らないように茜さんについてゆく。
山岳部とはいえ、未だに、どこの山も登ってないわけだから、
周りから見た私たちは装備はよくても、へっぴり腰で見っともないかもしれない。
「ついたー!」
茜さんの声が聞こえる。
先に行かれてしまった!が、私たちはまだぼとぼと歩くしかない。
「あと、少しだ!」
紀代と二人で励ましあった。
目の前に大きなクスノキが何本も生えている。
「なんて大きな木」
そこを抜けると、急に視界が広がった。
そこは、公園だった。
「ここが源氏山公園よ!」
茜さんが迎えてくれた。
「源氏山?」
なにか台座の上に武者が座っていた。
「あれは源頼朝よ」
「ぬぬぬ、にっくき頼朝!」
「おいおい、紀代、いつの間にか敵にしてるじゃん!」
私たちは、ここで最初の休憩場所にした。
まだ北鎌倉駅から1時間ほどだったが、足が疲れた。
私はコンビニで買ったサンドイッチをザックから取り出した。
「化粧坂(けわいざか)の切り通しって言うの、今登ってきた坂は」
けわいざか?
化粧坂切通しは、かつて平氏の武将の首実験をするときに、化粧をしたという逸話が残っているので、その名前がついてるようだ。
なんとも薄気味御悪い!
「わー、罰が当たれ!そんなキモイことする奴は!」
紀代がわめく。
「滅んだよ、鎌倉幕府は。この坂に新田義貞が攻めてきて、鎌倉幕府は滅んだ」
「え=!」
私たちは声をあげて驚いた。
罰があたったんだ・・・。
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