魔法少女失格〜契約失敗から始まる私のドタバタ魔法少女活劇?!〜

ユウキ・アカツキ

序章魔法少女というもの

第1話契約失敗

「残念だけど君との契約は、残念ながら不成立となった」


「……は?」


「ごめんね、風美円香かざみまどか。僕が不成立としたい訳じゃないんだけど……どうにも、僕ではどうにもできないみたいだからね。その願いに比例して願望の数が膨大みたいなんだ。だから、その……ごめんね」


「は、はぁ……というか願望ってどういうことなんですか……?」


「だから、君が契約出来るまで僕は一緒にいてあげるからね、卑屈にならなくて大丈夫だよ」


「ひ、人の話を聞いてよ……訳が分からない……」


 風美円香十七歳、私はたった今……魔法少女に……!!


 しかも、このよく分からない……耳から耳が生えている……しかも、猫耳かな?そんな感じの耳からうさぎ耳が生えていてちょっと不気味に感じるけど……これを可愛いと世の中の女の子は思うのだろうか……


 というか、なぜ訳が分からない?


 →さっぱりだから、私も訳が分からない。


 なぜ意味がわからない?


 →私も意味がわからない、急すぎて。


 この生物はそもそも何者ですか?


 →私にも分かりません。


 質問されたら……こんな感じだろうか……


 うんうん、まあ、人に質問されても多分そう答えるだろうね。

 それは私もわけがわからないよ!!だって、いきなりやってきたこの地球外生命体に問いかけたいよ!!


 いや、いやいや分からないというかどうしていきなり私なんかに問いかけたの?!


 それが、一番の気がかりなんですけど!!

 それはなんか、なんも言ってくれないの?!


「風美円香、君の言いたいことは分かる。だけどごめんね、これは決まりなんだ。呪いの送料と言うより……願望が強い子は魔法少女には向かないし、なることが出来ない」


「な、なるほど?」


 いや、ここ納得していいのか?

 それは圧倒的に違う気がする、というか、納得したら絶対負けな気がするんだけど……

 気のせいでは、ないな。


「それと、君の思考は読ませてもらった」


「は?!」


「とてつもなく願望が強いみたいだね、しかも趣味に関してじゃないか」


 いや……いやいや、ちょっと待って……ほんとにちょっと待って……

 な、なんで?というかどうして?

 私の、思考を読んだ?なんでそんなに気持ち悪いことを平気でできるんだ、この耳から耳が生えた小動物……


「失礼だな、崇高な生物と呼んでもらいたいね」


「それは嫌」


「残念だ」


 残念だ、じゃないよ。

 私は、あなたが居なくなってくれないから残念なんだが?

 まあ……そういう問題じゃないんだろうけどさ……


「はぁ……それで?あなたは私の願望が無くなるまでついてくるってこと?」


「ああ」


「家まで?」


「うん?うん」


「トイレも?お風呂も?」


「そのつもりだよ?」


 こいつ一周まわって変態か?

 そう言ったらまた、崇高な生物な僕をぞんざいに扱うなんて酷いじゃないか……とかいいそうな気がしてなんだか最悪だ……


「何が最悪なんだ?」


「ぎゃぁぁぁ!!」


「ん?どうしたんだい?」


 どうしたんだいじゃないよ!!

 今、凄く……驚いちゃったよ!!いま、なんて言ったのよ……


「い、いや……今、私の考えてること……わかったような……」


「ん?ああ、言ってなかったっけ」


「な、なにが?」


「君の考えてること、全て分かるようにしたんだ。これなら、問題ないだろう?」


 問題ありまくりだよ……

 もう既にあなたの事が嫌いだよっていう状態だよほんとにどうしてくれるのさ……


 いや、これも聞かれてるとか信じられない……気持ち悪すぎる……いや、気持ち悪いにも程があるよ!!


「え?世の中の少女はそういうのに憧れるんじゃないかと思ったんだが……」


「そんなわけないでしょう!!さっきから気になってたんだけど口を動かしてよ!」


「動かした方がいいのかい?」


「やっぱそのままがいい……」


 いや、気持ち悪すぎる……口が動いたらそれだけ気持ち悪くなるとか芸術でしょ……

 こんなのと契約するとか世の中の少女正気を疑うよ……


 というか、現在進行形で私のこの思考読まれてんでしょ?最悪すぎるよ……

 どうすればいいのさこれ……


「もう君は僕に選ばれた、だから逃げることは出来ないよ?」


「脅迫でしょ……」


「え?だめ?」


「はぁ……」


 なんかもう……手に負えない……

 いや、負えないと言うよりなんでこんな問題のあるよく分からない生物……

 どうして他の子は疑問を持たなかったのだろう……そもそも、こいつの名前すらよくわかってないし……


 てか、なんでこんなことになったのさ……



 数分前……


 私は、何事もなく高校から自宅へと帰ろうとしていた。

 いつものある日常が、当たり前が……

 なんというか、こう慣れないというか嫌になってしまうほど私は飽き飽きしていた。


 私の中で……こう、パーッと……爆発してしまって欲しいと思うほど……私は変化が欲しかった。

 それがいけないということはわかっているけれど……でも、私はこの日常を終わらせたいと思ってしまった。


 まあ……そんな事なんて思ってしまったら最後、なんて思うけれど……

 でも、そんなことはもう関係ない。


 そんな思いを秘めつつ……とっとと私は家に帰ろう。


「力が欲しいのかい?」


 力が欲しい……か。


 まあ、この世界を壊す……なんてとてつもないことは望まないから……この私のありふれた日常を変えるほどの事が起きて欲しいかな。


「それなら、僕は君にそういうことをしてあげられるよ?」


 そう言われても……


 信じるわけが無いだろう。というか、どんな権利があってそんな事……


 いや、ちょっと待ってくれ?

 さっきから、私誰と話してんだ?なんか……よく分からない何かと話してたような……

 独り言か?それにしても……やけにリアルのような……


「独り言、君はそれで済ませてしまうんだね」


「……誰?」


「驚かないんだね、面白い。なら、君の後ろを見てご覧?」


「後ろ?」


 私が後ろを振り向くと……

 そこには……一言で表せば……


 地球外生命体というやつが、そこにはいた。


 驚きはしなかった、だけど……思ったこととしたら……

 なんで、こんな可愛いと思えないヤツに声かけられたんだろ。


 そこに……なんというか、合理的に感じてしまった。


「君は……」


「?」


 なんだか、迫真みたいな言い方しているような感じなんだけど……

 嫌な感じがするんだけど……気のせいではないよね?


 気のせいだと信じたい。


「残念だけど君との契約は、残念ながら不成立となった」


 そして、今に至る。


「ってか、家まで着いてくる必要ある?」


「うん、そりゃあ……君の願望をなんとかして無くさないといけないって思ったからね」


「願望を無くすって……それはそれで人としては生きていけなくなるような……」


「まあそうかもしれない、だけど……君がこのまま魔法少女になったら……この世界が滅んでしまうからね、それは僕達イアからしてみればそれは悲しいことだからやらないけど」


 イアって言うのか……こいつ。


 って事は、もしかしてだけどこいつと契約した他の女の子は……騙されたのだろうな。

 なんだか、気の毒に思ってしまうのも事実だけど、こうやってとんでもないやつと一緒に居なきゃいけないなんてとんだ罰ゲームだなとも思ってしまった。


「だけど、ほんとに初めてだよ」


「なにが?」


「君のことだよ、こうやって……一緒に居なきゃいけないなんてこと全然無かったからこれは前代未聞さ」


「なるほど……」


 ということは……

 契約したらしたで放ったらかしということか……

 なんか、ガバガバって感じなのもあるけど……それはそれで酷いな。


 もしかして……魔法少女ってそんなにいいものじゃないってこと?!


「……止まって」


「え?」


 イアが止まれと言ったのも束の間……どうやら……何か嫌なものに巻き込まれてしまったみたいだ。


 空間が歪みだし、絵の具全色をそのまま出したような感じがして……とても気持ち悪かったけど……瞬きを一回、また一回としていく事に空間の歪みがどんどんと酷くなっていった。


 そして、最後の歪みが終わったその時……


 ここは……異質でほんとによく分からない……とんでもない空間に出てしまったようだ……


 でも、恐怖が自然と湧かない……


 ただ湧くのは、恐怖よりワクワクした気持ちと日常が音を立てて崩れていくような異様な感じだった。


「ここは……どこ?」


「……魔女結界、君がなろうとしている魔法少女達の、敵さ」



 to be continued

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