闇武器すごいね

しばらく経ち、なんとか状況を整理した。


「あれとってこーい。」


 木にぶら下がるリンゴを指差す。指示を受けた黒い腕は伸び、それを千切る。そして俺の方に差し出してきた。


「ん、ありがと。」


 手が闇の中に戻ると、リンゴを見やる。さて、異世界の味がどんなものか、味合わせてもらおうじゃないか。

 そのまま齧ると、甘みと瑞々しさが口の中に一気に広がる。

 う、美味すぎる!! 青森県の農家さんにも引けを取らないくらい美味いぞ、流石異世界。


「あ〜、幸せすぎる……前のクソゲー世界とは大違いだ」


 この世界ならウザイ後輩や上司もいないし、食べ物はうまいしな。転生に感謝感激だな。

 

 でもさっきの力はなんだろう? よく異世界モノで見る転生特典ってヤツか?

 わかんねーけど、多分そんなもんだろ。大抵がチートだったりするけど、俺のはハズレ……かもな、残念。


「はぁ、チートだったら言ってみたいこととかよく考えてたな……」


 俺またなんかやっちゃいましたとか言ってみたかったな…いや、イタい奴って思われちゃうからやめとこ。


「でもな〜、やっぱり武器持ってかっこつけたいなぁ〜」


 ボソリと呟いた瞬間──


 ズズッ……


 足元にあった影が段々と広がったような気がした。


「え……?」


 目を凝らすと、自分の影がムクムクと盛り上がり、そこから


 ズン───!!!


 重厚な音と共に現れたのは、漆黒の大剣だった。


 え、え、え? どゆこと?

 俺ただ独り言で言っただけなんだけど?

 特徴を言うと、しっかりと重量感があり、全身は真っ黒に覆われていて、なんかオーラもやばい大剣

 困惑している途中でなんかステータスっぽいのも出てきた。


 <深淵剣タルタロス>

 種別:闇属性・大剣

 ランク:A+

 スキル:

 【深淵波動】シャドウ・インパクト攻撃時、闇の衝撃波を発生させる

 【呪魂の刃】デス・グレイド:切り裂いた相手に継続的なダメージ


 うわ、設定痛すぎだろ……ネーミングセンスめっちゃダサいし。

 けど、なんでちゃんと強いんだよ

 思わず引いた。

 ゲームのラストダンジョンでようやく手に入る武器じゃねえの、これ。

 持ってみると、触れただけで重量感、オーラ、冷たさが伝わってくる。

 ……とにかく重い。こんな小さい体じゃ持ち上げるのも精一杯だ。もっと軽いのは……


「う〜ん……じゃあ短剣とかかな?」


 ズズッ───


 再び影から出てきたのは、金と黒が混じった二つの短剣。


 <影穿剣グラズニア>

 種別:闇属性・短剣

 ランク:A

 スキル:

 【二双闇突】ドグラ・マグラ:高速で突進し、短剣で同時に刺す。刺した相手は、毒の継続ダメージが入る


 【穿魂刃】ソウル・ピアス:魂に直接ダメージを入れる防御貫通スキル


 ちょっと技名かっこよくなってないか?

 これも試しに持ってみると、さっきよりはとても軽くて持ちやすい。なんだか体が馴染む。

 あの大剣は確かに強いが、この体では負担がデカすぎる。だから、これで魔物狩りにでも行こうかね

 そして、俺は森を彷徨き始めた。

 


 しばらく歩いてみたが、中々出てくる気配はなかった。


「やっぱそう簡単に会えるわけないか〜」


 そう思った時、後ろからガサッと音が聞こえる。

 振り返ると、そこから兎が茂みから出てきた。でも普通のうさぎじゃない。体毛は黒く、目は真っ赤、口元には……牙?

 プロフィールが表示される

 


 【種別:凶兎】

 【ランク:F+】

 【特性:獰猛・俊敏】


「バイオレンスなプロフィールだなオイ!!」


 そう叫んだ瞬間、凶兎は地面を蹴る。


「くっ!」


 俺はギリギリで躱し、距離を取る。小さいくせにすばしっこい。早速使ってみようじゃねぇか!!


【二双闇突】ドグラ・ダマズ!!」


 次の瞬間、俺は爆発的に突っ込む。技名言っただけでコレはデケェ!!

 

 そして、奴の喉に短剣を同時に突き刺した。


 ──ズシャッ!!


 「グギャァ!!」


 凶兎の断末魔とともに、その体が地面に崩れた。


「すげぇ……」


 デビュー戦で勝利はかなりデカい。この調子でどんどん狩ってくぞ……!!


 【LEVEL UP】

 レベルが2に上がりました

 HP:250→270

 攻撃力:30→36

 防御力:40 → 52

 俊敏性:28 → 31

 魔力:60→71

 筋力:30→35


 【新スキル獲得】

 【影喰い】《シャドウ・デヴォウア》:対象の力を吸収し、自分のものにする


 え、何このゲームみたいなシステム

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