闇の力とTS、鍛えたら森の王とか言われてた

羅門

クソゲーだな

──現実ってなんでこんなクソゲーなんだよ

 

ファンタジーとかSFとかハーレムとか、結局はフィクション

 現実は学歴社会の究極のクソゲー

 そして俺様、佐山京介は人生お先真っ暗、体型デブの中年フリーター

 

 バイトの上司に怒られ、叩かれ(これ普通にパワハラじゃね?)、後輩から馬鹿にされる。

 終わったら色々寄って最後にコンビニで弁当とか買って、風呂に入る。

 シ◯って深夜のネットサーフィンしてから就寝

これの無限ループだ。

 

 もちろん空から女の子が降ってきたり、異世界に転生とかそういうものはなく、ただつまらない時間を繰り返すだけ。

そんなことを思いながら俺は本屋のラノベコーナーで立ち読み中。

 

何だよこれ、『史上最強の魔女は日常が欲しい』?

 うわ、属性盛りすぎだろ。絶対この羅門っていうやつチ◯コに脳みそついてるわ。

こんなヘッタクソな文章力でよく書籍化なんてできたモンだな。

俺はそのまま本を閉じて本棚に戻した。


……でも、この世界よりは楽しそうだったな。


 ────

 翌日、俺はいつものようにボロアパートで朝を迎える。


「バイトだり……」


 つい口に漏れてしまう。だってだるいんだもん。まだシフトまでには時間があったので、朝風呂に入ってから家を出た。


「おいテイミー!! さっさとそこの荷物運べ!!」


 テイミーというバイトアプリで申し込んだので、佐山呼びでも京介呼びでもなく、テイミー呼び

 俺はアプリじゃねーっつーの。

 こんな脂肪の乗ったアプリなんてあるわけねぇだろ、せめて名前で呼べや。


「返事しろや、聞こえねぇぞテイミー!!」


「は、はい!!」


 はいはい、今行きますよクソッタレ。死ねチンカスジジイ。


 そして一通り作業が終わり、唯一の安らぎである休憩時間……


「テイミー先輩〜。今日もキマってますね~そのヨレヨレTシャツ」


 うわ〜、絶対リア充の部類だ。

 一軍男子とかそういうタイプの奴だわ、喋り方でわかる。


「テイミーさん、アタシの親と同じくらいじゃね? 生まれてくる時代間違えたでしょ」


 黙れブス、豚と話してる方がマシだよ。

 どうせコイツら二人ともヤリチンとヤリマンだろ

 でも俺は無視を貫く。お前らは勝手に股間で膜貫いてろ。



 「なんか答えてよ豚さん」

 


普通ならもっと平和的に避ける方法があったのかもしれない。「うるせぇよ」とかそう言って立ち去るとか、無視するとか。

 でもそう考える前に感情で体が動いた。


いや、動いてしまった。


その感情は単なる苛立ち? それとも男子に対する劣等感か?


辺りに鈍い音が響く。


気づいたら───俺は女の顔を殴っていた。



「うっ……うわぁあああああああぁぁ!!!!」



鼓膜を破るような泣き声をあげる。


「えっ?」


素っ頓狂な声を上げる。

咄嗟に拳を見ると、ほんの少しばかり血がついていた。



周りを見ると、目撃者がちらほらいた。別の場所から来た人は女の泣き声を聞いて来たのだろう。

すると上司がドタドタと走って来た。


「大丈夫か!! 鼻血が出てるじゃないか」


すると上司は俺を般若のような表情で睨む


「おい、テイミー。一線超えたな? もう警察呼んでやる」


「いやっ、ちがいます!」


「何が違うんだよ!」


上司の声の後に津波のように俺に声が降りかかる


「女殴るとか最低だな」「豚が殴ったな」「暴力豚が!!」「豚小屋にでも入ってろ!!」「俺その様子撮ってたww 絶対バズるわww」


 俺に次々と向けられる罵声、全てが心を引き裂いていく。もちろん味方をしてくれる奴なんていない。


 女の泣き声はヒートアップしていくばかり……でも、なぜか俺は不思議とスッキリしたような気分だ。いや正直めっちゃスッキリした。

 もう一回殴ったらどうなるのだろう……そんな気持ちも込み上げてくる。

 でも、俺の理性がそれを制止させる。


 その時、耳元でガシャンと音が鳴り響く。


 目を向けると、俺に向かって棚が倒れていく。


 まるで罰を与えるように。


「ぁぁぁ"ッッッ!?」


 何の前触れもなく、圧倒的な重力が押し寄せてきた。


「ダメだ……」


その瞬間、全ての音が遠くなり、周りの視界がぼやけていく。


痛みを感じる暇もなく、身体が無力に崩れ落ちていった。


「もう、終わったんだな……」


自分の体が沈み込んでいく感覚。

それが、まるで深い深い眠りに誘われるようだった。

 


 ホントクソゲーだな。この世界

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