あっ、どうぞお帰りください勇者様。Go homeですよ勇者様。

猫月蘭夢@とあるお嬢様の元飼い猫ショコラ

正義の味方の勇者様?ハァ?あいつ、家に堂々と上がり込んで物を奪う窃盗犯でしょ?

「おーい、家を開けろー」


 家の方角から嫌われもの様の声がする。

 あぁうざったいったらありゃしない。

 自覚がないのか?

 今は朝だぞ?

 つまり俺らの仕事の時間。


「へいへい、なんのご用でしょうかね勇者様」


 事情も汲まずにやってきた、勇者なんて仰々しい肩書きを持ったお偉い人。

 お貴族様の出らしいし俺らの事情がわからないのもしょうがないのかもなぁ?

 周りの畑から覗かれてんぞ勇者様?


「ふむ、貴様の家にある食料、宝物その他使えそうなもの全て寄越せ。この俺の役に立てるのだ、光栄に思え。感謝しろ」


 へーへー。

 あげますよ。

 こっちが困らない程度は。全部渡したりでもしたら生きれなくなっちまう。

 宝物なんて元からない。そういうことにして勇者様を騙す。

 実はちょっと隠し持ってるがな?それは秘密だ。


「勇者様、これが限界でっせ。これ以上は無から産み出すことになっちまう」


 さっさと行ってくんねぇかな。仕事が滞る。

 割とマジで非常用感満載の食料まで渡したんだ、許せ。

 あー残した食料でも数日が限界かなぁ。

 周りの家に融通してもらうか。対価どうしよ。

 いつもみたいに代筆と代読でいいか。学ぶ気がない奴らで助かる。

 魔法使って成長促進させてもいいんだけど詰まんねぇからなぁ。魔族と疑われたらせっかくこの生活に馴染んできたっつーのに台無しだしよぉ。


「ほぅ。貴様農民にしては意外と溜め込んでいるようだな。それらを全て渡すとは感心だ、素晴らしい」


 うんだから何さっさと行けよ。おめーのこと誰も呼んでないから。


「ふむ、これで旅支度ができた、やはり俺様は素晴らしい」


 礼儀を知らない勇者様、さっさと魔王とやらを倒してきてね。

 害がないものを倒すのはどうかと思うんだがな。


 あと、魔王ってその討伐相手誰だ?

 俺が魔王なんだが。絶賛スローライフ中なんだが。部下は全員休暇中だし。誰だよ魔王。


「うし、畑仕事再開」



 まぁ、なんでもいいや。

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