Glitter
Milkey1003
第1話 目覚め
この世界には隣接する4つの国家が存在する。
平穏を望む国 ショウヨウ
自然に恵まれた国 フウゲツ
日々進歩する国 カイカ
海が無い砂の国 バンジョウ
16年前のいつもと代わり映えのない夜、突如各国の中心地点にそれぞれ一柱ずつ光の柱が出現した。
人々が戸惑う暇も無く、実体の無いその柱からは直径5センチ程の光の粒が国の各地に飛散した。直後、役目を果たしたかのように光の柱は姿を消した。
国中に降り注いだ光の塊は、触れた者に様々な変化を与えた。
ある者は火を操り、ある者は赴くままに風を吹かせた。
当初、この奇妙な力は病や呪いとされていたが、人々は次第にそれを『目覚め』と呼んだ。
"目覚め"を手にした人間はそう多くは無かったが、その異様さ故にすぐに世間の注目を集める存在となった。
"目覚め"持ちの能力者が出現してから2年後。各国の関係を良好に保ち、世界平和のため積極的に活動していたカイカの王女メルダが何者かに暗殺された。
急遽カイカで報じられたこの衝撃的なニュースは、瞬く間に他の三国にも伝わった。
そして、メルダ暗殺事件を皮切りに各国は自国ファーストの考えを強め、彼女の想いとは裏腹に国同士の侵略争いが散見されるようになった。
_____メルダ暗殺事件から14年後の現在____
母:「アルバ、いつまで家にいるの。9時から入隊試験なんでしょ。」
ダダダダダダッ
階段を勢いよく下る音が響く。
アルバ:「やばぁぁぁぁ、もうこんな時間!母さんもっと早く言ってくれよ!」
母:「今言ってあげただけでも感謝してほ..」
アルバ:「行ってきまーーーす!」
バンッ!!ガチャンッッ
母:「ほんと朝から忙しないんだから」
この落ち着きのない少年はアルバ。平穏な国であるショウヨウで育った生粋のショウヨウっ子だ。
普段から落ち着きはないが、特に今日は一段と彼がバタバタしているのには理由がある。
それは、今日がこの少年の待ちに待った
厳命護衛隊とは、ショウヨウを他国の侵略行為や、光の柱が出現したあの日以降現れ始めた化け物"オーバー"から国民を守る国家直属の防衛機関だ。
アルバ:「父さん、ようやくスタート地点に立てるよ。見守っててくれ。」
アルバの父はメルダ暗殺事件が起きた2年後、勃発する侵略戦争に巻き込まれ、無差別に降り注ぐ銃弾の雨からアルバを庇って目の前で亡くなった。
当時まだ4歳で泣き叫ぶことしか出来なかったアルバにはその事実は到底受け止めきれなかった。
『人は光を目指し歩く。お前が人類の光になれ』
雑多な音が飛び交う中、父がまだ幼かったアルバへ向けた最後の言葉となった。
そして、父の死をキッカケにアルバは無駄な争いを世界から無くし、父の言葉通りの人を導き照らす光になることを決意する。
アルバの壮大すぎる夢は馬鹿にされることが日常茶飯事だった。
しかし、1度決めたことは死んでもやり抜き通す性格のアルバには逆風にすら感じなかった。
時は戻り今日、夢を叶える最適解としてアルバは厳命護衛隊の入隊を希望しているのである。
改めて厳命護衛隊とは、この国ショウヨウの東、西、南、北にそれぞれ配置されている隊と中央の本部から成る。
齢16歳から35歳まで入隊資格があり、毎年入隊希望者が5000人を超える。
入隊試験では東西南北4人の隊長が試験会場に一堂に会し、受験者は隊長達の前で実力を示し自分を売り込む必要がある。
そして、隊長直々に自分の隊に入隊させたい受験者を選ぶ。
複数の隊長が同じ受験生を指名した場合は候補者が自分で入る隊を選択できる。
ただ、この試験の合格率は毎年5%を切るほどかなり狭き門である。
アルバ:「どこに入ってあげようかな〜。南の
合格率5%なのに何故この少年はこんなに気楽そうなのか。
それはこの合格率5%という数値が"目覚め"の使えない非能力者の受験生に限った数値だから。
そう、つまりこの少年は"目覚め"が使える数少ない能力者なのである。
そうこうしている内に試験会場に到着する。
アルバ: (危ねぇ遅刻ギリギリだ)
アルバ:「すいません、今日の試験の予約をしていたアルバです。」
ガサガサ バッ
ポケットに入れていたクシャクシャの受験票を勢いよく受付のカウンターに出す。
受付職員:「時間ギリギリだね。君の番号は1240番。奥が試験会場になっているから、そのまま進んで」
言われた通り真っ直ぐ進み会場の扉を開ける。
アルバ:「なんだこりゃ、とんでもねぇ広さと賑やかさだな」
会場に入るやいなや目の前は受験生でごった返し、耳には音楽隊の壮大な演奏が飛び込んできた。
それは試験会場ではなく、まるでお祭りに来たような錯覚に陥るほどの光景だった。
司会:「ゴホン、それでは只今より3016年度 厳命護衛隊入隊試験を始めます」
アナウンスが流れた途端、先程まで話し声、笑い声で溢れかえっていた会場は途端に静まり返り緊張感が駆け巡る。
司会:「それでは試験官である隊長達の入場です。2階にご注目下さい」
隊長達の登場に合わせて音楽隊が演奏を始め、奥から空気が割れそうなほどのオーラを放つ4人が現れた。
それぞれ纏う雰囲気は違えど、共通して言えるのはあまりにも次元が違うということだ。
5000人以上いる受験生の息を飲む音が同時に聞こえたような気がした。
司会:「皆様から見て左にいらっしゃるのが、
ニトラ:「ほう、今年も根性ありそうな奴がチラホラいるな」
受験生がざわめきだす。
受験生A:("目覚め"は
受験生B:(私もその話聞いたことある。けど、唯一の女性隊長で女子からの人気が高い隊長よ。私は白織隊に入りたいな)
司会:「続いてその隣にいらっしゃるのが、
ジェリー:「チッ、どうせ雑魚ばっかで使い物にならねぇよ」
受験生C: (すごい性格捻くれてるで有名だけど、最小限の被害で確実に任務をこなすエリートなんだって)
受験生D: ("目覚め"は
司会:「その隣にいらっしゃるのは、
ゼラノス:「毎年なんでこんなに受験生多いんだよ...全員見なきゃいけない俺らの身にもなってくれよな...」
受験生E: (ここ数年緋縅隊の合格者いないらしいよな、受かるのは能力者だけって聞いたぞ)
受験生F: (そのせいで人数少なくてハードワークなんだよな。そのくせ隊長は面倒くさがりで全然仕事しないらしいぜ)
司会:「そして最後に、
シルネ:「芯のある有望な人材が集まってるな、今年も楽しみだ」
受験生G: (圧倒的人格者!毎年青襦隊に入隊希望のやつで溢れてるよな)
受験生H: ("目覚め"は
司会:「それでは受験番号1から100番の方はそのまま会場に残っていただき、それ以外の方は待合室でお待ちください。」
アルバ: (いよいよ始まったか。まぁ俺の"目覚め"を見たら1発合格だし心配ないけどな)
その後2時間程が経過し、とうとうアルバの番が回ってきた。
司会:「それでは互いに対戦相手を見つけ、5分間試合を行ってもらいます。腕利きのヒーラーが待機しているので相手を殺す以外は何をしても構いません」
受験生は慌てて対戦相手を探し出す。
周りがどんどん相手を見つける中アルバは完全に出遅れた。
アルバ: (やべっ、誰でもいいから相手してくれーー)
すると金髪でアルバと同じぐらいの身長の青年がアルバの方目掛けて一直線に向かってくる。
レン:「やぁ僕はレン。突然だけど、君かなり強いだろ?」
アルバ:「俺はアルバだ。正直この中じゃ俺がダントツで強いだろうな!」
レン:「あながち冗談じゃなさそうだ。君だけはこの会場に入ってから緊張するどころか常に余裕に満ち溢れていた」
アルバ:「ゲッ、全員のこと観察してたのかよ!気持ちわりぃやつだな。でもまぁ見る目はあると思うぜ!」
レン:「強い人と戦わないと自分の本気を隊長達に見せつけれないだろ?だから探してたんだよ」
アルバ:「一理あるな。けどいいのか?俺相手だと見せ場無くなるぜ」
レン:「確かに。君に恥をかかせたら僕じゃなくて君に注目が集まっちゃうな」
軽く言葉を交わし微笑む。
レン:「手を抜くのは無しだよ、本気でね」
レンが構えると、それに応えアルバも構える。
アルバ:「あぁ!」
周りの受験生も準備が出来、会場は静まる。
司会:「それでは、始めっ!」
開始の合図と共に50組の試合が始まった。
レンとアルバは開始後も数秒見つめ合い、お互いの間合いを確認する。
最初に仕掛けたのはアルバだった。
アルバ:「安心しろ、その綺麗な顔は傷つけないから」
勢いよく間合いを詰め、右の拳を突き出した。
しかし、レンは焦ることなくその一撃を華麗にいなす。
レン:「そんなものか?じゃあ次は僕だね、歯食いしばった方がいいよ」
そう言うとレンはアルバの顎に重い一撃をお見舞いする。
アルバ:「 クハッ!」
(なんだ今の)
アルバは一瞬の出来事に戸惑ったが、負けじと何度も殴りかかる。
しかし、レンは涼しい顔をして全てを受け流して間髪入れずに反撃する。
レン:「地元じゃ強い方なんだろうけど、その程度じゃ何年経っても厳命護衛隊には入隊出来ないよ」
レンのその言葉にアルバはカチンときたが、実際ここまで通用しないと逆に笑えてくる。
アルバ:「へへ、今痛いほど思い知らされてるよ。俺も試験に向けてかなり鍛えたつもりなんだけど。レン、お前の動きは質が全然違う」
レン:「当たり前だ、僕は幼少期から武道に勤しんで大人相手にやり合ってきたんだ」
アルバ:(やっぱ単なる体術じゃ俺はまだまだひよっこだ。もっと鍛錬しねぇと)
アルバ:「そうか。悪ぃなレン、お前を倒して隊長達の注目集めなきゃいけないんだ。本気出すけどズルとか言うなよ」
レン:「大丈夫、君の実力は分かった。何をしても無駄だよ」
アルバ:「どうだろうな」
アルバは小さく笑い、胸の前で両拳を合わせて目を閉じ集中した。
レン:「何をしようと無駄だけど、待ってあげる程僕はお人好しじゃないんだ」
そう言うとレンはアルバに向かって走りだした。
アルバ: (まだだ、まだ力を。胸から拳に力を流して、もっとだ!もっと!)
レン:「僕は何としても入隊しなくちゃならない。悪いけど君にはここで諦めてもらう」
レンの渾身の蹴りがアルバの顔目掛けて繰り出される。
アルバ: (溜まった!よっしゃ今だ!)
アルバが目を開けた瞬間、その体から輝かしい光が解き放たれ会場を光が覆う。
ザワザワ ザワザワ
受験生I:「なんだ?何が起きたんだ?」
受験生J:「何も見えない!どうなってるんだ!?」
会場にいる受験生は光に視界を奪われる。
次第に光の影響も薄れて目が慣れてくる。
そこで目に映ったのは、確実に決まったと思われたレンの蹴りをアルバが片手で軽々と受け止めている光景だった。
そして、その手には先程まで無かった光のグローブのようなものを身につけている。
レン:「なにっ!?どうやった?」
混乱する会場にレンの声が響く。
ジェリー:「へぇー、"目覚め"か。あんな能力者がこの国にいたんだな」
黒衣隊 隊長 ジェリー・スティンガーの言葉に他の受験生が騒ぎ出す。
受験生K:「私初めて生で"目覚め"の力見た!」
受験生L:「嘘だろ、能力者いたのかよ」
誰もが驚愕したが、1番驚きを隠せなかったのは対戦相手であるレンだろう。
レン: (目覚めだと...百歩譲って能力者だとしても、今の蹴りを止められるわけが無い。僕の蹴りはほぼ顔に届いてたんだぞ)
アルバ:「どうした?さっきまで涼しい顔してたのに、そんな冷や汗かいて」
通常なら笑って聞き流すようなアルバの煽りに珍しくレンは冷静を保っていられなかった。
レン:「うるさい!君が能力者でも僕はここで君を倒して、何としてでも厳命護衛隊に入隊しなきゃいけないんだ!」
アルバ:「それは俺も同じだ、俺も厳命護衛隊でやらなきゃいけないことがあるからな」
そう言うと、アルバは右の拳に力を溜めた。
アルバ:「
すると、さっきまで構えていたはずのアルバの右手が一瞬でレンの左腹にめり込み、簡単に数十メートル離れた壁まで吹き飛ばす。
ドンッ
レン:「ぐほっ!!...かはぁっ」
急いで司会がレンに駆け寄る。
司会:「レンさん、だ、大丈夫ですか!?この試合ここで終了とし...」
レン:「まだ僕は負けてない、だからまだ」
司会の肩を持ち、立ち上がろうとする。
???:「いや、もう終わりだよ」
全員が声のする方へ振り向くと、そこには先程まで2階で見ていた青襦隊 隊長シルネ・ブルースがレンの前に立っていた。
レン:「シ、シルネ隊長!なんでここに...そ、それより僕はまだやれます!!」
シルネ:「その体じゃ立つのがやっとだろう、それに他の受験生達は君らの試合に釘付けでとても試験にならない」
レン:「クソっ、じゃあ僕は...」
シルネ:「別に負けても入隊出来ないわけではない、間違いなく君の体術は他の受験生より頭1つ飛び抜けている」
レン:「えっ」
シルネ:「どうだい?君が良ければ青襦隊に来て欲しいんだが」
それはレンにとって思ってもみない提案だった。
ジェリー:「待てよ偽善者、何勝手に決めてんだ。俺だってそいつ欲しいんだけどよぉ」
2階の自席から黒衣隊 隊長ジェリー・スティンガーが割って入る。白織隊 隊長ニトラ・イグニスもそれに続く。
ニトラ:「こいつと意見が合うのは虫酸だけど、ブルース!私もそいつに興味がある」
本日初! 3人の隊長からの指名被りに司会も開いた口が塞がらない。
シルネ:「ニトラまで...仕方ないレン君自身に決めてもらうか。ゼラ、君はいいのかい?」
ゼラノス:「ん?あ〜俺は寝てたから見てなかったや、皆さんで奪い合っちゃっていいよん」
シルネ:「とのことだ。レン君どうする?」
レンは全く予想していなかった展開に言葉が出なかった。ただ感情は素直なもので、とめどなく涙がこぼれた。両手で必死に涙を拭い、
レン:「せ、青襦隊でお願いします!」
シルネ:「それは良かった、これから頼むよ」
ジェリー:「ちぇっ、なんだよ。見る目ねぇガキだな」
ニトラ:「素直に入隊を褒めればいいだろ、陰湿男」
ジェリー:「うるせぇ火薬女」
隊長2人の端喧嘩が始まる。
シルネ:「彼らは無視してもらっていい。それより、アルバ君だっけ?君の目覚めは凄いね、そんな力初めて見たよ」
シルネはアルバの方に歩き始める。
アルバは自慢げに鼻を擦った。
アルバ:「ありがとうございます!じゃあ俺も青襦隊に入隊っすよね?」
シルネ:「そうだよね、君も厳命護衛隊に入隊したいからここにいるんだよね」
ガチャッ
ドドドドドドッ
入口から30人ほどの武装した兵士が会場に入ってきた。
___________________________________________
母:「はぁ、あの子無事に試験終わったのかしら。悪目立ちせず、"約束"をちゃんと守ってればいいんだけど。」
___________________________________________
アルバ:「...ん?...えっ?」
カチャッ
会場に入ってきた30人の兵士はアルバを囲み、銃を構えた。
そして、シルネはこう続けた。
シルネ:「悪いけど君の入隊は認められない」
__________あとがき__________
初めまして、Milkeyと申します。
今回はGlitter 第1話を最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
元々私は漫画が大好きで、絵が上手ければオリジナル漫画を書いてみたいなと学生時代から常々考えるくらいでした。
ただ社会人になってから漫画が読む時間も減り、次第に小説に移行するようになっていきました。そこで通勤の暇つぶしも兼ねて、小説を娯楽程度に書いてみようとなったのが運びです。
ただ私は今回読んで分かって頂けた通り、昔から国語は大の苦手です。文章を書く時は毎回ぐちゃぐちゃの拙い文章ばかり。文の構成は終わり散らかしています。
こんな私が書く物語ですが、是非アドバイスいただけたら改善していこうと思いますのでよろしくお願いします。厚かましいですが物語の主人公アルバと共に私自身の文章力の成長も見届けていただけると嬉しいです。
普通に感想とかもコメントに書いていただけると泣いて喜びますのでコメントも是非お願いします!
最後に、初回ということもあり6000文字程度で書かせていただきましたが、次回以降は1000文字以上、3000文字以下で投稿していこうと思っています。ご理解頂けると幸いです。平日毎日投稿出来るよう頑張ります。
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