第8話 知識を力に換えて
魔法人形を見送った俺は、引き続き捜索と連絡を開始する。
遊園地でパニックがどうなるかはこの身を持って知っている。
平和がまかり通っている内に解決したい。
「あの子、魔物がもう一体居たとかいってたか。魔法少女がこの遊園地に居るなら協力願いたいが……俺が居るのは支部じゃないんだよな」
支部であれば魔法少女に連絡を飛ばす手段が存在する。
だが現状あるのはスマホと魔力の有無を示す魔道具のみ。
ティロンっと音が鳴る。
要件は緊急の二文字。
『
慌てて電話に切り替える
「長峰です。
『はい!⚪︎△遊園地で魔物と交戦後、同行していたふりが姿を消しました。
スマホで連絡を試みた所応答は無く、集合場所にはふりの荷物が散乱していました』
「・・・・・・了解しました。私も偶然その遊園地に来ています。そして、はぐれの魔物がこの遊園地に出現した可能性があります。・・・・・・桐原さん。解決に協力を願えますか?」
『当然です!では情報の共有を行います』
そしていくつかのやりとりを終え、
「ではお願いします」
『はい。長峰さんもお気をつけて』
くそっ!
またかっ!!
いや、落ち着け。
少なくとも現地でブッカーズとザ・ビギニング・ドールが解決に奔走している。
あの頃より十分マシだ。
ブッカーズもバディの危機に1人で解決するのでは無く、解決に大人を絡めてきている。
混乱で早口になりつつも、マニュアル通りに情報の共有を終えた。
高校生にしては完璧と言える。
そうだ。学んだ知識は無駄じゃ無い。
走れ。
あの頃の悔いは乗り越えただろ。
⚪︎⚪︎⚪︎
見つけた!
居たのは野外ステージの壇上。の更に上。天井に子供達が吊るされている。
そしてその中にふり君の姿もある。
目を凝らしてみると……逆さ吊りだっ!
まずいっ!いつからだ。
吊るされた人間およそ半日も持たないか。
タイムリミットが明確に定められた瞬間だ。
片手でブッカーズに連絡を取り、位置を伝える。そしてもう片方の手で魔道具を確認。
っ!!
指針が異常に触れていた。
タイプAかSはあるぞ!!
ブッカーズは確かに手数はあり汎用的ではあるがソロでの記録はタイプCまで。
ザ・ビギニング・ドールは本人がSSの魔物だがその能力は未知数だ。相性などわからない事が多い。
「それになんだ、この状況。なんで人が宙吊りにされてて野外ステージが決行してるんだ」
まるで見えていないかの様な素振りだ。
はやる気持ちを押さえつける。
落ち着け。
相手は魔物。
ブッカーズが来るまで時間はあるか?
まずは落ち着いて相手のからくりを解け。
そうだまずは見えているかだ。一般と魔法少女、そして魔対の違いは魔力。
指針を離れた所に置き、再度ステージに目を向ける。
「見えねぇな。つまり、あのステージに何か細工があるか。自己世界を創れるだけの強敵か」
「長峰さん!ふりは!?」
「あのステージにいる。変身は解いたのか。魔力は足りるか?いけるならまずは救出を優先してくれ。臨時としてサポートは俺が着く」
焦っているのか若干言葉遣いが荒くなる。
「はい。お願いします!では行ってきます!
ブッカーズ!赤の書!緑の書!青の書!」
一目があるため大きくは動けないがそれでもかなりの速度でブッカーズはステージに向かっている。
『緑の書!範囲指定!。鉄から対象の下へ網を!鉄から鉄へ切断を!』
「なんだと!?」
宙吊りにしていた天井の一部を切断し、落下予想地点に網を張ったが、そもそも落ちてこないなら意味は無い。
『嘘っ!?・・・・・・直接的な接触に切り替えます』
そしてわかるや否や飛び出すブッカーズ。
だが。
『ぃっっっだぁ!』
見えない障壁に阻まれ激突。
そして、それらを見ていた長峰達也は別の疑問が浮かぶ。
「魔法少女がこれだけ暴れて、まだステージが続いている。それに観客も騒ぐ気配が無い。・・・・・・まずいな。ブッカーズ撤退だ!」
『っ!はい!!』
「あれは自己世界だ。
子供が拐われている事から幾つか絞ることが出来るが、
恐らくタイプS。神隠し。揺らぎは無かった。
最近この地で、揺らぎが起きたなんて聞いた事が無い。つまり昔の討伐漏れだ」
「タイプS。ですか」
いつの間にか横に来ていたブッカーズが問いかける。
「あぁ、これは面倒だぞ。だが神隠しだとわかれば、タイプSの中では対処が比較的容易とされる」
「教えてください」
「神隠し、この自己世界は神域。この神域に侵入するためには幾つか条件を突破する必要がある。古来より神域は常世とされ、
「つまり、常世に行くために死ぬ必要が?」
「いや、そうじゃ無い。この神域はあくまで自己世界。元となる魔物が必要だ。そいつを見つけ出し、手順を踏み封印を施すか同じく手順を踏み消滅させる必要がある」
「了解しました。一度変身を解き、白の書を出します」
「あぁ。頼ん」
「とぉぉぉおおおおお!!ちゃぁぁああああ!!!くぅぅぅうううう!!!!。
シュタ!!!!」
⚪︎⚪︎⚪︎
「なるほど!!!つまりピンチです!!!」
匿った女の子は実は、ザ・ビギニング・ドールという魔法少女であったとブッカーズに説明した。
「うん。すっごくびっくりしたけど、飲み込んだよ。頑張ろうね。ザ・ビギニング・ドール!」
「はい!!!おお!!遂にワタシにも名前が!!!感動です!!!」
よほど嬉しいのかくるくる回っているが、和んでいる状況では無い。
「説明の続きをするぞ。ザ・ビギ、長いな。ドールで行くがいいか?」
「はい!!!ドールです!!!」
「よし。ドールが探し回ったが結局それらしい魔物はこの遊園地に見当たらなかった。
つまり神隠しを引き起こす、神霊や天狗の類いは除外する。山一体が神霊だった事もあるそうだが、今回この地に山はない。つまり残されるのは
「岩!!!」
「岩が魔物ですか?」
「あぁ、今回の魔物は恐らく過去の揺らぎでこの地に発現したのだろう。自己世界を出力する魔力量を鑑みても発展系である可能性が高い。
故にその場にあったも気にもとめず、違和感が無いモノ。それが
「理屈は理解しました。なら私は予定通り白の書で探知を行います。対象を絞れたのは大きいですね」
「岩です!!!たっくさんあります!!!」
「遊園地とは数多くの世界観を作り出す。その上で岩は溶け込むには最適だろう。大変になると思うが頼んだぞ」
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