第5話 魔法少女はファミレスに行く!

目の前に現れたのはとても綺麗な和装の子供でした。

髪はぱっつんの黒髪ストレートで淡い青色の和服がその容姿と合わさり、とても神聖な物に感じます。


「綺麗」


『・・・・・・って。落ち着いてくださいブッカーズ。こんな所に子供1人は怪しいですよ』


「えっと確かにそうだね。こんばんは。君の名前を教えてくれるかな?」


「初めましてっ!ワタシは!、ん〜。名前が無いんです!」


「名前が無い?」


『孤児でしょうか。外見年齢を鑑みても確かに痩せ気味ではあると思いますが。情報が足りませんね』


「ワタシを生んだのか誰かは知らないんです!でもでも!楽しく生きてます!」


あれ?眼帯?


「その目どうしたの?痛く無い?」


「はいっ!ワタシもびっくりしたんですよ!左目が無いなんて初めての経験です!。でも生まれた時から無いのならそれが普通かもしれません!!」


「強いんだね」


「えへへ〜」


つい頭を撫でちゃった。

でも喜んでくれてるし良かった。のかな


でも、どうしようかな。子供が1人こんな山奥に住んでるって危ないよね。

ふりさんと相談した方が良いよね。


「あの、」


『はぁ。魔法少女についてはこれ以上進展は無さそうですね。採取したデータから誰の魔力かを鑑定します。その子供については一旦支部長に報告しますので連れて帰って来てください』


「わかった。ありがとうふりさん」


流石ふりさん。言わなくてもわかってくれていた。


「ねぇ君。お腹とか空いてないかな。美味しいお店知ってるんだ」


「はいっ!とても空いてます!!」


「それじゃお姉さんの手に捕まって」


「はーい!!」


・・・・・・子供を誘拐してる絵面にならない?

いや。ちゃんと講習通りだからね。

怖がらせない為の段取りなんだから。


それにしても。


この子、ずっと無表情というかずっと薄く笑ってるのはデフォなのだろうか。

少し怖いと言うか。でも本人は明るいからそれでも良いのかな?




⚪︎⚪︎⚪︎




「凄いです!凄いです!!!!」


私達はファミレスへと足を運んでいた。

私も夕飯を食べていないため、それなりの量を頼んである。


『そのまま聞いて下さい。彼女ですが、外見から得られる情報と我々が保有する情報で一致する人物はいませんでした。

それからこの地域で得られるデータから彼女の親と思わしき人も見受けられません』


「つまり?」


『遠方からこの地に来て山奥に捨てられたか、魔法少女崩れが噛んでいるか。どちらかかと』


「うぅ、なんだか嫌な事だね」


「ん?美味しいですよ!」


「んーん。お腹いっぱい食べてね」


「はいっ!!!」


『それからすみません。明日も学校があるため、私はここで失礼します。

そちらには大人のサポーターが向かっているため、夕飯を食べ終えた後、引き渡しを行い現地解散をして下さい』


「確かに、もう21時超えてるね。気を遣ってくれてありがとう」


『いえ、これもサポーターとしての仕事ですから。

それではお先に失礼します。ブッカーズ、お疲れ様でした』


「うん。ふりさんもお疲れ様。帰りの道中気をつけてね・・・・・・ふぅ、疲れたなぁ」


魔法少女の肉体は体力の消耗が少ない。それは魔力が実質的なスタミナになるため。


魔力が無くなると急激にバテるのはこの影響かな。

それに照らし合わせると、今日は戦闘を行なっていないため、余力は十分ある。


だけど、平日の学校終わりに21時付近まで山登りをして子供保護。ファミレスで夕飯を食べるというのは精神的にキツいものがある。


特別手当は出るんだけど、そういう事では無い。

久しぶりの魔法少女の活動という事で張り切りすぎちゃったかな。


「お姉さんは食べないんですか?美味しいですよ!モニョさんより味は落ちますが、それでも色んな味が楽しめて最高です!」


「そうだね。折角だし私も沢山食べようかな」


時間的にはあんまり食べたく無いけど、魔法少女として少しコスパの悪い胃袋。

任務中の食費は全て魔対支部持ち。

しかも今は運動後。


つまり食べない選択肢は無かった。




⚪︎⚪︎⚪︎魔法少女 視点 ⚪︎⚪︎⚪︎




「ふぅ!美味しかったです!ずっと美味しかったって!言ってる気がします!お気に入りです!!」


「元気だね。眠たくは無いのかい?」


「はい!お腹は膨れましたけど元気です!」


「流石は子供だ。おじさんとは大違いだよ」


今は車に乗ってきます!

お姉さんとはお別れしました!!

また会う日まで!!!


「僕の名前は長峰ながみね。魔物対策委員会⚪︎△支部のしがない職員だ」


「おぉ!長峰さん!!男性は珍しいです!初めて話しました!」


「前線で身体を張るのは彼女達だけど、後方でする事は幾らでもあるからね」


「むぅ!魔法少女は人を守る存在です!」


「ははっ、うん。確かにそうだ。彼女達は圧倒的なその力で僕達を魔物の脅威から守ってくれる」


「はいっ!!!最強です!!!」


「でもね。彼女達も人間だ。一人一人に意思があり、生活があり、大切な何かがある。・・・・・・そろそろ着くよ」


魔法少女は最強です!

でも1人じゃないです。


言われてみれば、プリンちゃんも誰かと話していたですね!

それにノーレンジもいましたし!!!


むぅ!!

腕切ったりあんな酷い事したの!

まだ許してないですから!!!!!


「おぉ!縦長です!」


「このビル一つが支部になるんだ。寝泊まりするスペースがあるから、今日はここで寝よっか。大丈夫かい?」


「はい!ワタシ寝る所も何も無いです!」


「そうか。なら案内するよ。お話はまた明日にしようか」


「はいっ!!!」




⚪︎⚪︎⚪︎長峰達也 視点 ⚪︎⚪︎⚪︎




不思議な子供だ。

ブッカーズからの簡易的な報告でも「不気味さを感じる」と言われていたが、確かにと理解できる。


あの薄く笑った顔はどうにもがする。

表に出さなくて済むのはあの人懐っこい、懐かしさを感じる性格故か。


あの子を案内し終え、支部長の執務室をノックし入る。


「失礼します。長峰帰還いたしました。子供の保護し、現在は3階の仮眠室にて就寝しています」


「ご苦労。迷惑をかけたな。また随分と怪しいのを拾ったもんだ。あれの資料作ったのはお前だよな?実際見てどう思った」


「はい。やはり不気味。外見からしておそらく中学生頃。しかしその年齢にしては精神が幼過ぎるかと。言動に悪意は感じられないが、魔法少女に対して一定の価値観がある様子。

戸籍やら何やらが無い事も加味しても、やはり関わっているのは魔法少女崩れが最有力と思っております」


「ま、そうなるよな。ならコレを読んでみろ」


渡されたのは極秘と判を押された用紙。


「タイプSS。魔法人形ザ・ビギニング・ドール 交戦記録・・・・・・つまり、あの子が魔物と?」


「理解が早くて助かるぞ。長峰君。彼奴あやつは1位と3位から逃げこの地へ来た厄災だ」


「・・・・・・そう、ですか」


「不満があるな?

ふり君からの報告も読んだとも。敵対的な行動は取らず、年相応な無垢さであったとな」


「えぇ、私の所感とも一致します。ただそうなると、彼女の魔法少女への価値観が気になります。

魔法少女は人を守る存在。これは彼女が言った言葉ですが、魔物だとするのならこの発言の意図が読めません」


思い返すのは彼女の顔。表情はあまり変わらず、薄く笑いで止まっている。

口や目などは動くが、発せられる元気な応答には似合わないほど簡素なモノ。


「最もだ。加害者は奴等であり、被害を受け自衛をしているのは我々だ。

その言葉を真とするのなら、まるで人を守る存在を見たいがために襲っておるようなものだ」


支部長は首を横に振る


「どうでしょうか。わかりかねます。では彼女はどうしますか?本部に引き渡しを?」


「いや?まだ連絡しとらんよ。そもこの交戦記録とて、共有されたのは事件から4日は経っとる今朝の会議。

明けに知らせ、暮れに報告じゃ取り合わんだろうて」


詭弁だ。相手はSS。何より優先される。

子供の見た目をしているが、理解できない存在であることを考慮に入れ行動する必要がある。


「ではなぜ?」


彼奴あやつは言わば新世代の魔物。交戦記録を読む限り、人に対し危害を加える行動はしておらん様だ。

そしてら会話ログから考えるに十中八九だろうな。

知っとるだろうが、

俺等と奴等は水掛け論やイタチごっこのさま。どちらかが成長すれば片方がそれに追いつく。

60年前の発展ほどにないせよ、魔物の種類は増減し時代に応じて変化しよる。

彼奴あやつの様な魔法少女そのもを真似る奴はおらなんだがな」


支部長が落ち着き、あまつさえ厄災と称した彼女を懐に入れた理由はこれか。

魔物が暴れればひとたまりもないという達観もあるだろうが、それよりも相手を理解し対応する事を是としている。


つまり。彼はこの状況は未知では無く、既知の延長と言っているのか。


「流石、支部長ですね。私ではその考えに至る事は出来ません」


「はっ!俺もそろそろ歳だ。順当に行けばお前がこの椅子に座る」


「貴方に居なくなられては、みんな困りますよ」


「夜もけてきよった。結論を話すぞ。

俺は奴を捕えるのは反対だ。

何故ならそれは彼奴あやつの性質にあるからだ。

魔法少女して生まれ、言葉を知り、魔法までも学びよる。

俺はその学びこそ、人類が次へ進む道となると考える。

魔法少女、並びに人を理解するのが彼奴あやつの無意識の使命ならば、そこに一滴の墨を入れるのも悪くはなかろうて」


「・・・・・・つまり彼女に善性を与え、そのフィードバックを魔物に起こさせると?」




「またぞろ新種が出よったら話も変わるやもしれんが、長くなるぞ。

人類とて長い生を持つ。一支部の試みが意味をもつのは、先の世代になろうな」

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