世界迷作劇場

無邪気な棘

第1章 夢のギター『Chitarra di sognu』

第1話:コルシカの爆裂娘、ルチアの旅立ち


​1974年、コルシカ島のアジャクシオ。


太陽は地中海に向けて猛烈な熱を注ぎ込み、海岸はオリーブと潮風の混ざった匂いに満ちていた。


青と白のコントラストが美しい景色とは裏腹に、海を見下ろす丘に立つ民宿「ソラーレ」は、潮風でペンキが剥げ落ち、今にも潰れそうな危機にあった。


​その民宿の主、マッシモ・ソラーレは、オリーブ農園も経営する頑固親父だ。


しかし、最近は借金のことで頭がいっぱいで、得意のオリーブオイルの瓶を磨く手も空回り気味だった。


​マッシモの一人娘、ルチア・ソラーレ、15歳は、そんな重苦しい空気を一瞬で吹き飛ばすような、太陽のように明るい少女だった。


​夜。ルチアは、のんびり屋の兄、ルカが漁に使う古いボートに腰掛け、ギターをジャカジャカと掻き鳴らすのが日課だった。


​「このポリフォニー、めっちゃええやろ、知らんけど!」


​ルチアは、コルシカの伝統的な多声合唱(ポリフォニー)を、アコースティックギターの弾き語りにアレンジし、大声で歌い上げた。


その歌声には、幼い頃に亡くした彼女の母の面影がある、とマッシモは密かに信じていた。


​周りには地中海を放浪するヒッピー客や村の若者が集まり、「ルチア、最高!」「地中海のフィーバーだ!」と熱狂する。


ルチアは得意げに笑った。


​「うち、ルチアや、よろしゅうな!愛と平和、めっちゃ大事やん! ピンチは『なんとかなるって、知らんけど!』で乗り切るんが、うちのポリシーや!」


​彼女が10歳の時、昼寝する警官を爆竹で起こしたという「爆裂娘」のエピソードは、村では伝説になっていた。


ルチアが来ると、静かにしていた場所でも必ず何かがハジける—それはソラーレ家の人間だけでなく、村人たちの共通認識だった。


​しかし、陽気なビーチとは裏腹に、民宿の状況は深刻だった。


​ある日の夕食時、寡黙なマッシモが重い口を開いた。


​「ルチア、ルカ。民宿、借金でヤバい…もう、どうにもならんかもしれへん…」


​ルカは「仕方ないわ、お父ん」と、手入れ中の漁網をいじりながら肩を落とす。


​ルチアの胸に、初めて焦燥感が込み上げた。


この、海と音楽に満ちた場所を、母の面影が残るこの家を、守りたい。ルチアはフォークギターを抱きしめた。


​その時、「ソラーレ」の扉が、場違いにド派手な70年代スーツを着た男によって開かれた。


パリから来たという彼は、パリの洒落た標準語で話す音楽プロデューサーだった。


​彼は、ビーチでのルチアの歌声を聞きつけてやってきたのだ。


​「君の声は、すごい。その地中海の熱いリズム! それに、その…訛りも逆に個性的だ。ディスコでバズるよ! パリに来て、スターにならないか!」


​プロデューサーはパリの音楽業界での成功を約束した。


​ルチアは、マッシモの苦悩と、憧れのパリ、そして「ソラーレ」を救うという大きな夢を天秤にかけた。


一瞬の逡巡の後、ルチアはギターストラップを掴んだ。


​「うち、こんな田舎で死にたないわ! パリに行って、スターになって、この民宿『ソラーレ』を救うで、知らんけど!」


​マッシモはルチアに「パリは厳しいで…」と心配し、ルカは「ルチア、やりすぎんなや」と不安を口にしたが、ルチアの決意の輝きに、二人は押し切られた。


​数日後、村のヒッピー仲間や住民たちが総出で送別パーティーを開いてくれた。ルチアは船に乗り込む直前、港で叫んだ。


​「みんな、またコルシカに遊びに来てや~! 待ってるで~、知らんけど!」


​そして、ルチアは小さなギターケースを抱え、大きな夢と、コルシカの海と太陽の全てを胸に詰め込み、パリ行きの船に乗り込んだ。


​「なんとかなるって、知らんけど!」


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​第2話:パリの壁、コルシカ弁娘のドタバタ


​1974年のパリ。


船を降りたルチアの目に飛び込んできたのは、コルシカの素朴な光景とは全く違う、ギラギラと輝くネオンの街だった。


カフェからはアバの曲が大音量で流れ、人々は最新のファッションに身を包み、洗練された標準語で軽快に会話している。


​コルシカの海風で色褪せたワンピースにフォークギターを抱えたルチアは、その場違いな装いと、胸いっぱいの大きな夢を抱えて、ディスコブームの都会に降り立った。


​「ついにパリや!ボンジュール!うち、ルチアや、よろしゅうな!」


​ルチアは、道行く人にコルシカ弁で元気よく挨拶したが、パリっ子の反応は冷たいものだった。


​「え、なんて言ったの? その喋り、変すぎない?」


「何かの冗談? もしかして、イタリアから来たの?」


​ルチアはすぐに言葉の壁の厚さに直面した。


彼女の陽気な言葉は、この都会ではただの「奇妙な訛り」として受け止められたのだ。


​スカウトしたプロデューサーの事務所を訪ねるが、彼の態度は一変していた。


​「ルチア、君の歌は悪くない。だが、その訛りが問題だ。売れないよ。標準語を学びなさい。」


​ルチアは食い下がった。


「なんでやねん! これがうちのリズムや、気にせんといて!」


しかしプロデューサーは「ビジネスにならない」とルチアを突き放した。


​ルチアは失意の中、職を探し始めた。


​「この歌、めっちゃええやろ!」と自慢の歌を披露しても、「訛りが強すぎる!」「発音がなってない!」と面接で次々と落とされた。


コルシカで「爆裂娘」と呼ばれた自信は、パリの冷たい空気の中で徐々にしぼんでいく。


​「パリ、めっちゃシビアやん、知らんけど…」


​パリに来て一週間。


ルチアは空腹を抱え、寂しさからついコルシカの家族を思い浮かべた。


マッシモとルカのために、諦めるわけにはいかない。


​ある日、ルチアは賑やかな通りにある小さなカフェの窓に「バイト募集」の貼り紙を見つけた。


​面接に現れたのは、昔気質でぶっきらぼうなカフェの大将(標準語)だ。


彼はルチアの奇抜な見た目と訛りの強い話し方に、最初から懐疑的だった。


​「君、その話し方で注文取れるのか?」


​ルチアは意気消沈し、うつむいた。


その時、彼女の視線が、店の隅に置かれた鉢植えのサボテンに留まった。ルチアは思わずボソッと呟いた。


​「なんや、あのサボテン…仕事サボってんのんか…」


​大将は一瞬静止し、次の瞬間、腹を抱えて爆笑した。


​「ハハハ! 面白い子だな! よし、採用だ! 君はフロアではなく、厨房の手伝いからだ!」


​ルチアは驚きながらも、「やったー! ほな、がんばるで、知らんけど!」と元気を取り戻した。


​こうしてウェイトレスとしてではなく、皿洗い兼雑用係としてパリの生活をスタートさせたルチアだったが、初日からドタバタだった。


​注文の品を厨房に伝える時、ルチアは「コーヒー、ほな淹れるで!」と叫んだ。


だが、大将には「コフィー!?(コーヒー)」が「コンフィ(肉の保存食)」に聞こえ、エスプレッソではなくジュースを出す大混乱を引き起こす。


​客は標準語で「何この注文ミス!」「このウェイトレスを変えろ!」と文句をつけた。


ルチアは「パリ、めっちゃシビアやん…」と落ち込むのだった。


🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊


第3話:カフェの仲間、コルシカ弁ラテンの絆


​カフェでのバイトは、ルチアにとって初めての都会での試練だった。


厨房で皿を洗うルチアは、時々フロアの注文を標準語で聞き間違え、しょっちゅう大将に怒鳴られていた。


​「ルチア!『エスプレッソ』は『エッセ』だけで通じるんだ! 変な訛りを持ち込むな!」


「う~ん、すんまへん!『エッセ』だけって、めっちゃシンプルやん、知らんけど!」


​ルチアは落ち込んだが、その明るさは底抜けだった。


そんな彼女を、カフェで働く二人の若者が優しく見守っていた。


​一人は、店の片隅でいつも音楽を聴いている、ロックバンドのドラマー、ジュール(16歳)。


もう一人は、シャイで大人しいウェイトレスの少女、マリー(14歳)。


​ある日の休憩時間、ルチアがギターを取り出し、コルシカの素朴なメロディを口ずさむと、ジュールが興味津々で近づいてきた。


​「君のその歌、いいね。そして、その訛りも、めっちゃ面白いよ!」ジュールは標準語で話す。


「え、ほんま?うちの喋り、面白いん?」ルチアは目を丸くした。


「ああ。ロックンロールだ。そのノリ、最高だよ!」


​ジュールはルチアにバンドを組むことを提案した。


ルチアは「バンド!めっちゃノれる曲やん、知らんけど!」と即座に快諾した。


​一方、マリーは、ルチアが皿を割るたびに落ち込む姿を見て、そっと声をかけた。


「ルチアの歌、ほんとに素敵。聞いていると、コルシカの海が見えるみたい…」マリーの標準語は優しかった。


ルチアはマリーの優しさに触れ、すぐに意気投合する。


「マリー、あんたシャイやけど、感性めっちゃピュアやん!うちのステージ衣装、作ってや!」


マリーは恥ずかしがりながらも、「う、うん、頑張る!」と、ルチアの情熱に押され、コルシカ風ヒッピー衣装のデザインを始めた。


​さらに、ルチアとジュールが練習しているところに、カフェの常連客でイタリア系のギタリスト、ニコ(17歳)が加わった。


​「ルチアの喋り、なんかイタリアの親戚みたいで懐かしいよ!」ニコも標準語だが、ルチアのラテンのノリに共感を示す。


「おっ!ニコ、あんたも地中海育ちの血が流れてるんちゃうか?このリズム、めっちゃええやろ!」


「そうだ、これこそ地中海のビートだ!」


​こうして、ルチア、ジュール、ニコのバンドが結成された。


​三人はカフェの裏の路地で、秘密のストリートライブを始めた。


ルチアは、コルシカの「ポリフォニー」に、ディスコブームに乗った強烈なビートを合わせ、関西弁風の歌詞で歌った。


​「🎼太陽ギラギラ、めっちゃ熱いやん! みんなハジけようや~、知らんけど!🎵」


​当初、パリっ子はルチアの奇妙な喋りに「何その喋り!? 変な田舎娘!」と笑うだけだった。


しかし、ルチアの溢れんばかりの情熱と、誰でもノれる地中海ディスコのリズムは、徐々に人々の心を掴んでいく。


​「この音楽、めっちゃ楽しいぞ!」「彼女の訛り、なんかクセになる!」


​ストリートライブには標準語を話すパリっ子たちが集まりだし、彼らはルチアの「知らんけど!」という口癖を真似て笑い合うようになった。


言葉の壁は、ルチアの音楽と笑いによって、少しずつ崩され始めていた。


​ルチアは、パリの冷たさに心が折れそうになった時もあった。


しかし、ジュール、マリー、ニコという仲間を得て、再びコルシカの太陽のような輝きを取り戻したのだった。


🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊


​第4話:カフェのピンチ、ルチアの初舞台


​ルチアとジュール、ニコがカフェの裏でストリートライブを始めてから数週間。


彼らの地中海ディスコはパリの若者の間で密かに話題になっていた。


カフェの大将も、彼らが店の外で集客していることは知っていたが、黙認していた。


ルチアのサボテンギャグ(「仕事サボってん」)以来、大将はあの「爆裂娘」をどこか気に入っていたのだ。


​そんなある週末の夜。


カフェで定期的に演奏する予定だった看板歌手が、インフルエンザで急遽ドタキャンしてしまった。


​大将は焦っていた。


客は既に集まり始めており、このままでは店の評判に関わる。


彼は厨房で皿を拭いているルチアに、半信半疑ながら声をかけた。


​「おい、ルチア。お前、ギター持ってたよな? 歌えるのか?」


「え、うちが? もちろん歌えるで!大将、任せとき! 知らんけど!」


​ルチアは即座にOKした。


このチャンスを逃すわけにはいかない。


ルチアの夢は、コルシカのフォークソングをパリでスターにして、マッシモの民宿「ソラーレ」を救うことなのだから。


​急遽、ルチアのバンドの初舞台が決定した。ジュールとニコは興奮を隠せない。


「ルチア、ここで決めようぜ!」(ジュール)


「パリのミュージックシーンに、地中海を見せてやろう!」(ニコ)


​そして、マリーが作ったコルシカ風ヒッピー衣装を身につけたルチアがステージに上がった。


​カフェの中は満席だった。


客たちは、突然ステージに現れた派手な衣装の田舎娘を見て、標準語でクスクス笑っている。


​「あの娘、誰?」

「あの訛りで、歌なんか歌えるの?」


​ルチアは、かつてプロデューサーに言われた言葉を思い出した。—「その訛りは売れない!」


​緊張で手が震える。


しかし、ふと、遠くコルシカの海の匂いと、大好きな家族の顔が頭に浮かんだ。


負けてたまるか。


​ルチアは、マイクを握りしめ、コルシカ弁で思い切り叫んだ。


​「ほな、行くで~! みんな、ノッてや~、知らんけど!」


​そして、激しいディスコビートに乗せて、彼女はコルシカの血が騒ぐような熱いメロディを歌い始めた。


​曲は、ルチアがこの日のためにアレンジした、名曲を熱唱した。


「Chanson de la Côte de Chaco(チャコの海岸物語)」だ。


​ルチアは、サビの部分でコルシカ弁風の歌詞を叫んだ。


「🎼海のキラキラ、めっちゃええやろ、知らんけど! 愛と平和、めっちゃ大事やん!🎵」


​ルチアの溢れんばかりの情熱と、コルシカのポリフォニーを取り入れたハーモニー、そして体が勝手に動いてしまうディスコビート。


そのミスマッチな魅力が、パリの観客の心を打ち抜いた。


​最初は静観していたパリっ子たちも、気づけばグラス片手にリズムをとり、次第に総立ちになって踊り始めた。


言葉は通じなくても、音楽と情熱は伝わったのだ。


​演奏が終わると、カフェは割れんばかりの拍手に包まれた。


​ステージ袖で見ていた大将は、目を潤ませてルチアに駆け寄った。


「ルチア…お前はすごい! 今夜から、うちの看板娘だ!」


​そして、その拍手の輪の中に、あのド派手なスーツのプロデューサーの姿があった。


彼はルチアの予想外のパフォーマンスに呆然としていたが、次の瞬間、満面の笑みを浮かべ、標準語で叫んだ。


​「その訛り…売れる! すぐにレコードを出そう! 世界中がこのリズムを待っている!」


​ルチアは、プロデューサーのスカウトを断った。


だが、その夜。


パリのミュージックシーンに、「コルシカの爆裂娘」という新たな風が吹いたことは、誰の目にも明らかだった。


🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊🌊


​第5話:コルシカのビート、民宿の救世主


​カフェでの初舞台以来、ルチアは一躍パリで「コルシカの歌姫」として大人気になった。


彼女のバンドはカフェの看板バンドとなり、連日大盛況だ。


ルチアの歌う「Chanson de la Côte de Chaco(チャコの海岸物語)」はパリのラジオで流れ始め、そのコルシカ弁の歌詞は「めっちゃクセになる!」と若者たちの間でトレンドになった。


​ルチアは、かつて彼女を撥ねつけたプロデューサーからの猛烈なオファーを蹴り、カフェのバイトと歌手活動を両立させるという、ルチアらしいスタイルを貫いた。


​「うちの音楽は、高い建物の上じゃなくて、みんなと近いカフェで歌うのが一番ええねん!知らんけど!」


​ジュールとニコは最高の演奏でルチアを支え、マリーはルチアのために次々と斬新なコルシカ風ヒッピー衣装をデザインした。


ルチアはパリでの成功を心から楽しんでいたが、その情熱の源はいつもコルシカの家族だった。


​稼いだお金は、一銭残らず故郷のマッシモへ送った。


​そして数ヶ月後、ルチアが目標としていた額がついに貯まった。


民宿「ソラーレ」の借金を完済し、リフォームするのに十分な金額だ。


​「うち、役目を果たしたで!パリもめっちゃ楽しいけど、今だけコルシカに帰るわ!」


​ルチアは、カフェの大将と仲間たちに感謝を告げ、コルシカ行きの船に乗った。


パリの都会の光はまぶしいが、ルチアの胸にあるのは、地中海の素朴な太陽の輝きだった。


​コルシカ島のアジャクシオ港に到着すると、ルチアを待ち構えていたのは、オリーブ畑から駆けつけたマッシモと、漁を中断して戻ってきたルカの姿だった。


​「ルチア…ようやったな!」


マッシモは、頑固親父とは思えないほど目を潤ませて、ルチアを力強く抱きしめた。


彼の口調は、いつになくコルシカ風で、心からの感動が伝わってきた。


​「めっちゃすごいぞ、ルチア!民宿も、おかげでピカピカや!」


ルカもルチアのギターケースを抱えて満面の笑みだ。


​ルチアは、心臓の鼓動が海のリズムと一体になるのを感じた。


​「ふふん!コルシカの海、めっちゃええやろ、知らんけど!うちの夢は、この家を救うことやったからな!」


​民宿「ソラーレ」は、ルチアが送ったお金で新しく改装され、コルシカの青い空の下で再び輝いていた。


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​エンディング


​夏の終わり。


ルチアは、コルシカのビーチで、パリからやってきた仲間たちと再会した。


​ジュール、マリー、ニコは、ルチアを追いかけて「ソラーレ」に遊びに来たのだ。


彼らの他にも、パリでルチアの音楽に夢中になった若者たちが、「コルシカの歌姫の故郷」を見たいと、大勢民宿に泊まりに来ていた。


​民宿「ソラーレ」は、もはや潰れかけの民宿ではない。


ルチアの音楽と、地中海の陽気さを求める人々が集まる、活気に満ちた場所になっていた。


​星空の下、マッシモが焼いたオリーブとハーブの香りが漂う中で、ルチアは再びギターを弾き始めた。


​彼女は往年の名曲「ya ya あの時を忘れない」を歌い上げた。


​ルチアは、遠く離れたパリで出会った最高の仲間たちと、故郷で愛する家族に囲まれて歌った。


パリっ子仲間は、ルチアの歌声に合わせて「ルチア、最高!」と標準語で叫んだ。


​ルチアの地中海の情熱と、コルシカ弁のようなユーモアは、言葉の壁を乗り越え、コルシカとパリを結ぶ「夢のギター」の音色として、永遠に響き渡るのだった。


永遠に…


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