第4話 FRUITS ZIPPER

 昔からアイドルソングが好きだ。そんな私がここ数年ハマっているのが、女性アイドルグループ『FRUITS ZIPPER』である。


 ハマっていると言っても、YouTubeでライブ映像を観たり実家の父に音楽番組の録画を頼む程度。でも私は基本ドラマもバラエティも金曜ロードショーも観ず、テレビとは縁のない人生を送ってきた人間なので、「実家の父にわざわざ録画を頼む」はかなりハマってる寄りの行動なのである。


 父はけっこう幅広く音楽を聴く人間で、AKBグループや乃木坂、少女時代、KARAなどのアイドルソングもよく車で流していた。だから私も、テレビこそ観ないが曲は知っている状態で、アイドルソング特有の青春感、多幸感、前向きなメッセージ性などに強く惹かれた(アニメ『ラブライブ!』の楽曲ももちろん大好きだ)。


 FRUITS ZIPPERとの出会いは彼女たちが有名になる少し前、ちょうどInstagramで松本かれんちゃんの動画が流れてきて「可愛い!」と思ったのがきっかけだった気がする。YouTubeで調べたら『わたしのいちばんかわいいところ』のMVがヒットして、全員めちゃくちゃ可愛くてびっくりした。


 個人的には、この「全員めちゃくちゃ可愛い」がFRUITS ZIPPERの人気の根底にあると考えている。今までの女性アイドルは「数が命」的な部分があり、なんて言うんだろう……女性の立場としては「結局男はこういうのが好きなのねー」的な、極端な話ハーレムを連想してしまってゲンナリするような感覚がどうしても拭えなかったのだが(※もちろん、私個人の感想ですよ!)、FRUITS ZIPPERは違う。七人七方向にお世辞抜きで飛び抜けて可愛い。数合わせ感が全くないし、全員の顔と名前がちゃんと一致する。


 アイドルソング自体元々好きだった私は、あっという間にFRUITS ZIPPERも好きになった。初期の曲で一番好きなのは『ぴゅあいんざわーるど』、有名になった後の曲だと『フルーツバスケット』『かがみ』あたりがドストライク。新曲の『JAM』『はちゃめちゃわちゃライフ!』もかなり良い。


 FRUITS ZIPPERの楽曲で歌われる「可愛い」は「自己肯定」とほぼイコールだ。この傾向がよく出ているのが、『かがみ』の「ママから聞いたことあるわ。似た人を好きになるんじゃなくて、好きな人には似るものなんです。本当です」という歌詞だと思う。超可愛いFRUITS ZIPPERのメンバーが、FRUITS ZIPPERを好きな皆に向けて、この歌詞を歌ってくれるのだ。ラスサビ前の「もう大好きです。大好きですって目の前の君に言っていいのかな。自分で言います魔法をかけます、嘘でもかかったフリしてね」もかなりグッとくる(「嘘でも」の部分が特に)。キャッチーでありながらノスタルジックさも感じさせる曲調といい、『かがみ』は私の中でかなりお気に入りの曲になっている。


 持論なのだが、少なくとも今の日本社会では、女性は特に「見た目」の影響から逃れられないと思っている。見た目がよくても悪くても、それを自分でどう捉えるか・それによって他者からどういう扱いを受けて育つかという観点が、男性よりも顕著に性格形成に影響してしまう傾向にあると思う。


 そんな社会において、FRUITS ZIPPERの圧倒的自己肯定ソングは、男性よりもむしろ女性に刺さるのではないだろうか。私もどちらかというと、自分の見た目を好きになれないまま大人になったタイプの人間なので、FRUITS ZIPPERの楽曲を聴くと胸がジンとして、どうにも泣けてくるのである。

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