第4話
それと同時に「ニコリと笑いもしない陰険女」という言葉が頭をよぎる。
これは婚約が決められて最初に出会った時に殿下から言われた事で、彼曰く「妻は常に旦那の後ろに控えて旦那を支えるものだろう」という信条を持っているらしい。
そんな彼と「心配だからつい確認してしまう」心配性なソフィアとでは性格も含めてなかなか合わなかった。
そもそも「聖女」のソフィアと後の国王になる彼とでは仕事の内容自体全く違う。
彼は第一王子の為、この国の政治や経済だけでなく全ての事を将来的には担う立場の人間にはずだ。
しかし、彼はいつも何かと理由を付けて雑務の仕事を後回しにしてしまう事が多かった。
でも、その割に国王陛下から振られた仕事には真っ先に取り組んでいるのでやる気がない訳ではない。
ただ、彼は「後でやっても問題ない書類ばかりだ」と言って全くやる気配が感じられず、しかもそれを言い続けるとへそを曲げてしまう。
それでいて周りは「いつになったら返ってくるのだろう?」と言わんばかりに殿下の様子を見に来ているのを何度か目にすることがあった。
彼らも相手が第一王子という事と下手に物を言うと「大声で怒鳴り散らす」という彼の悪癖が出る為強くは言えず、そんな「どうしよう」とかなり困っていた。
なにせ彼の「大声」は普通とは違い、声を出す際に「風属性の魔法」を使用しているのだ。ただ本人曰く「無意識」との事なので、これは彼が魔法を使う者として「未熟」という事を意味している。
なぜなら、自分で自身の魔法の力を制御出来ていないと言っている様なものだからである。
そして、そんなほとほと困り切っている彼らの姿を目にして何も感じないソフィアではない。
そこでソフィアは仕方がなく彼の代わりをしていただけに過ぎなかったのだ。しかし、彼にはそれが許せなかったらしい。
「ソフィア・ホワイト! お前は長年自分を『聖女』と偽り我々を騙し続けて来た!」
この国唯一の魔法学園卒業式で行われた日。その卒業式を締めくくるパーティーの会場で殿下はまるで宣言する様に言い放つ。
「……」
これは一体何の茶番だろうか。
ソフィアが「聖女」なのは何も非公開でもなんでなく、国王陛下から任命された正式なものだ。
そもそも「魔法鑑定」はこの国の子供たちは身分がどうであれ、「王宮」で行われ、ここで「王宮」がどういった物なのかを理解する。
そして、この「魔力鑑定」は貴族の階級だけなく、庶民や孤児と言ったように身分ごとに集められた子供たちが全員いる中で名前を呼ばれて全員の前で行われる。
しかし「身分ごと」とは言っても周りの鑑定に立ち会う大人は魔法に関わる魔法騎士の団長や魔法学園の学長。国の重要な役職に就いている人だけでなく国王陛下も同席された上で行われたものだった。
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