第4話
そうしてあっという間に門番がいる関所の様な場所に近くにたどり着き、ソフィアとフェンリルは近くの茂みで彼らを待つ事にした。
なぜなら二人。いや、正確にはお兄さんに「ここで待っていてください」と強く言われたからである。
「あの、これ良かったら」
「え、こんなにたくさん? いいのですか?」
お兄さんと妹さんが急いで持って来たカゴの中にはたくさんの食べ物が入っていた。
「うん! だってお姉さん、さっきカバンを開けた時。食べ物持っていなかったから」
「なんか、恥ずかしいですね」
正直、食べ物に気を回している余裕がなかった……というのもあったが、それ以上に食べ物に関しては現地調達が基本だと先代の聖女から学んでいたせいもあり、完全に二の次になっていた。
「でも、大丈夫なのですか? 勝手に持ち出してしまって」
「それなら平気。聖獣様にお供えするって言ったらむしろもっと持って行けって言われたくらいだから」
お兄さんはそう言ってニカッと年相応の可愛らしい笑顔を見せ、それと同時にフェンリルは「フフン」と何やら得意げな顔でソフィアを見ている。
まるで「我のおかげだろ」と言わんばかりだ。
「……ありがとうございます。これは大切にちょっとずつ食べますね」
「いや、腐っちゃいけないからサッサと食べてよ」
「そうだよ! 私たち、またお姉さんたちに会いたいもん!」
あまりにも素直で真っすぐすぎる言葉と二人の姿に思わず目がくらみそうになったが、それ以上に可愛かった。
「そ、そうですね。私もまたお会いしたいです」
ただ、そんな可愛らしい二人の姿に悶えている自身の姿を見せる訳にはいかず、何とかソフィアは聖女時代に習得した笑顔で何とかその気持ちを抑えつつ乗り切った。
「――そろそろ日も落ちて来る頃だ。サッサと家に戻った方がよかろう」
そんなソフィアを見かねて……いや、どちらかと言うと暗くなってきた事による森の危険性をよく知っているからこその警告かフェンリルは二人に早く家に戻るよう促した。
「そうですね。帰ろう、アン」
「はーい……。じゃあまたね、お姉さん」
「はい、また」
お兄さんに言われて渋々といった様子ではあったものの、素直に言う事を聞いて二人仲良く門へと向かって行く姿をフェンリルと共にソフィアも見届けた。
「……」
そしてすぐさまフェンリルは何か言いたそうにソフィアをジーッと見つめている。
「……なんでしょう」
「お主、これからどうするつもりなのだ」
「どう……そうですね。とりあえず今日は野宿でしょうか」
「……」
ソフィアはさも当然の様にサラリと言うと、フェンリルは一瞬驚いた様な表情になったが、すぐさま何か言いたげな様子でソフィアの方を見つめたのだった。
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