第2話
「お、俺一体……」
「山菜を取りに来た時に運悪く魔物と出くわしてしまった様です」
「あ、あんたは……」
ソフィアが説明すると、男の子は明らかに「警戒しています」と言っているかの様にソフィアを睨みつける。
「待ってお兄ちゃん! この人はお兄ちゃんを助けてくれたんだよ!」
「そ、そうなの……いや、そうだったんですか?」
「偶然です。女の子が泣いている声が聞こえたので私も駆けつける事が出来たというだけの話。妹さんに感謝してください」
「あ、ああ。ありがとうな、アン」
男の子がそう言って女の子の頭を撫でると、女の子は嬉しそうに「えへへ」と笑った。なんて愛らしい光景だろうか。
「さて、元気になられたのでしたら家に戻られた方がいいでしょう」
「あ、ああ」
日暮れまではまだ早い。でも、このまま森に留まっているのも良くないだろうとソフィアが言うと、女の子は「お姉ちゃんは?」とソフィアを見上げた。
「私ですか?」
「あんたのおかげで治ったんだろ? 何かお礼させてくれよ」
本当であればありがたく頂戴したとこではある。
しかし、ソフィアはホゼピュタ国の検問を通っていない。むしろその検問を嫌って森に入って来た。
そんなソフィアがホゼピュタ国の住人であるこの子たちの家に行くのはどうしてもはばかられる。
「どうした?」
「ありがたい申し出ではありますが、すみません。ご遠慮させていただきます」
「え? なんで? 美味しいごはんとかあるよ?」
納得がいかないといった様子の女の子に申し訳ない気持ちになりながらも事情を話せないソフィアは苦笑いを浮かべるしかない。
「――良いではないか。行ってやれ」
「!」
そんなソフィアを見かねてかいつの間にか隣に現れたフェンリルが助け舟を出す。
「! あ、あなた様は!」
どうやら男の子はフェンリルが「聖獣」である事を知っているらしくフェンリルの姿を見てすぐに驚きのあまり固まってしまった。
「うわぁ! おっきなワンちゃんだ!」
そして女の子の方はと言うと……無邪気にフェンリルの綺麗な毛並みを見て「大きな犬」と勘違いして目を輝かせている。
「お、おいアン! 失礼だろ!」
「??」
男の子はすぐにフェンリルに近づこうとする女の子を諫めたが、当の女の子はよく分かっていなさそうだ。
「ハッハッハ! 我を犬とは! なかなか見どころのある子供だな。よかろう、我自らお主たちを家まで送り届けよう」
「本当!?」
「い、いいのですか?」
「ああ。だが、門の手前までだぞ? ついでに家からこやつにお礼の品でも取ってくるがいい」
フェンリルがそう言った事で「ソフィアは国に入れない」と悟った男の子は「はい」と頷いた。
「……」
ただ、ソフィアはふと「なんだか今の言い方だと私がフェンリルの使いとか使者とか変な誤解を生みそうだな」と感じつつ、二人と共にフェンリルに乗って二人を家へと送り届けたのだった――。
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