第4章 モフモフな聖獣に出会いました。
第1話
「――さて、と。やっと『道』に出れた!」
先代の聖女から「どんな時でも自分の力を発揮出来るように」と仕込まれていた事もあった成果が出たのか、ソフィアはホゼピュタ国を通らずとも冒険者たちが利用してそうな道に出る事が出来た。
「うーん」
ただ少しだけ残念だったのはあのリーダーから聞いていたよりも遭遇した魔物の数が少なかったという点だ。
リーダーの話では「ホゼピュタ国を通らずに直接森に入って山に向かう事も出来るが、その場合は聖獣が敵だと感知して魔物をけしかける」という話だった。
それを踏まえて考えたソフィアは思わず「多勢に無勢」を連想していたのだ。
そもそも、リーダーが教えてくれたのは正規のルートではなくいわゆる「ズル」である。だからこそ「魔物をけしかけてくる」のだろうとソフィアは踏んでいた。
しかし、実際に出会った魔物はそれなりに強そうに見えたものの手ごたえはあまりなかった。
それだけでなく、中には「ソフィアに敵わない」と思ったのかソフィアを見た瞬間に逃げたり相手をしているちょっとした瞬間をついてに向こうから逃げてしまったり……なんて事もあった。
普通の魔物にそうした「隙をつく」なんて事はなかなか出来ない。そうなると考えられるのは「相手の魔物もそれなりに知性がある」という事になる。
それこそ戦っている内に「敵わない」と判断出来る程に。
そんな事を戦っている間に出来るのだから下手をすると人間よりも賢いかも知れない。
そもそもソフィアとしても無駄な殺生はしたくないので逃げられるのであれば全然逃げてくれて構わない。ソフィアだって深追いをするつもりなんて毛頭ない。
ただ「お腹が空いてどうしようもなく」という場合を除いてではあるが……。
しかし、これには意外な誤算だと思って肩透かし感を覚えたのもまた事実ではあった。
ただ、実はリーダーの言っていた事は何も間違ってはいなかった。
問題だったのはソフィアが魔法の実力だけでなく魔力量も含めた全てが普通の冒険者パーティーの魔法担当よりも桁違いだったから……というただ単純に「力が強かったから」という事だけだったのだ。
そして、そもそもソフィアは結界を張っており、それによってレベルの低い魔物はソフィアに近づく事すら出来なかった。
だからレベルの高い魔物しかソフィアの前に現れなかったのである。
しかし、そうした知性のある魔物は数が希少なだけでなく、人間よりもそうした危機管理能力が高い。だからこそソフィアを見て逃げたり隙をついて逃げたりしてしまったのである。
そうしたところを見ると、人間よりも魔物の方が場合によっては賢いのかも知れない。
それだけでなくソフィアは先代の聖女の方針から騎士団と同じ様なサバイバル技術も身に着けており、こうした状況にも対応が出来た。
ただ、本人は自己評価がかなり低い。だからこそ余計に肩透かし感を覚えてしまったのだ。
しかし、この肩透かし感が念のために張っていたソフィアの結界にわずかな「隙」を作ってしまい、猛烈な勢いで近づいて来ている強い魔物の気配にソフィアは気付くことが出来なかった。
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