第4話


 それにしても……。


「特に理由がなくても許可証さえ持っていれば大丈夫なのですね」

「ん? ああ。ここはこの国唯一とって言い漁港だからな。当然漁に出ている船もあるが、船旅をしている人たちもいる。他には俺たちの様に一時的に停留するためにこの船着き場を利用してする人もいるな」


「そういったのはどうやって見分けるのですか?」

「役人は許可証で判断しているとは思うが、一番分かりやすいのはどこに留めるかだな」


 リーダーは軽く辺りをキョロキョロと見渡し、ソフィアもそれに倣って辺りを見渡す。言われてみると、確かに少し離れたところでは漁でとれた魚や魚介類を運び入れている船が目に入った。


「ここから一番離れた場所では輸入品の運び入れと検査が行われているが……そっちは国から委託された業者が行っている事が多いから一般人は基本的に立ち入り禁止だな」

「あなた方は違うのですか?」


「俺たちは基本的に一時停留でこの漁港を利用する事がしかないな。漁に出てもガルフツスカ王国に全部おろしているからな」

「そうなんですか」


 そういった契約……なのかどうかはソフィアの知るところではない。ただ「国から委託された業者」と聞くとどうしても「厳しい審査」を連想してしまう。


「――じゃあ、ここからは別行動だな」

「……はい」


「ここを抜けてホゼピュタ国に入るにはあそこの検問所を通るしかない」

「そのようですね」


 リーダーが指した先には甲冑を着て警護に当たっている騎士と思しき人が二人見える。そして……。


「まぁ、この漁港から国に入るための検問所はあそこしかないから少し待つ事になるとは思うけどな」

「そうですね」


 検問所の前には既にズラッと検問を待つ人が並んでいる。これはガルフツスカ王国では見ない光景なのでソフィアは内心正直驚いていた。


 しかし、それと同時に「チャンスだ」とも思った。


 なぜなら、これだけ多くの人が並んでいるという事はそれなりに早いスピードで仕事をこなさなければならないと思ったからだ。


 この国の役人が適当な仕事をしているとは思わない。ただ、どうしても流れ作業になってしまう部分はあるのではないか……ソフィアはそう感じた。


 ただ、それと同時に懸念も当然ある。


 やはり自分は「ガルフツスカ王国の聖女だった」という点だ。これが検問所でバレてしまったら確実に迷惑どころか騒ぎになってしまう。


 そして「どうしてソフィアがこの国に来たのか」という質問は確実にされ、その最中で一連の話が出てきてしまうかも知れない。


 それを考えると……やはり何かしらの対策は練った方が良いかも知れない。だが、この国において「魔法で誤魔化す」という事は絶対に避けた方が良いだろうという結論に至った。


 なぜなら、この国。ホゼピュタ国は世界有数の魔法大国としても有名だったからである。

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