第2話


 これを持っているという事は、なんだかんだ「チンピラと変わらない」とは言いつつ彼らはちゃんとしているところはちゃんとしているタイプの人間という事になる。


「それに、私が船着き場に着いた時。あなた方は既にいたのではなく、船に乗って来ていました。だからこそ気が付いたのです。普段から乗り慣れていると言う事に」

「……なるほどなぁ」


 ソフィアの言葉に、リーダーだけでなくチンピラたちは納得したように頷いた。


 これで許可証も何も持っていなければ彼らはチンピラなどではなくそれこそ「海賊」と呼ばれる様な存在だっただろう。


 だからこそ、ソフィアとしては「どうして殿下の話に乗ったのか」と謎ではあった。


「……お察しの通り俺たちはしがない船乗りだ。持っていた武器もあのバカ王子からもらった物。使い方なんか適当な説明を聞いただけでまともに分かっちゃいねぇ」

「なぜ殿下の話に乗ったのですか」


「そりゃ金がねぇからな」

「……」


 単純明快。それ故に「元」とは言え殿下と婚約者だったソフィアとしては申し訳ない気持ちになった。


「……別にあんたにどうこう言うつもりはねぇよ」

「え」


「俺たちはあんたに恨みがある訳でもねぇからな。いや、むしろあんたがいるおかげであの国の中は安全だったとも言えるか」


 そう言いながらリーダーは「ハッハッハ」と笑う。


「そんな大層な事はしていません。あれが私の仕事ですから」

「まぁ、確かにな。でも、嘘か本当かはこの際置いておくとして、あれを管理できるのは聖女様だけなんだろ?」


「それは……まぁ、はい」

「じゃあそれでいいじゃねぇか。国民の平和を守っているって事で」


「俺たちがいろいろ言いてぇのはむしろ国の方。んで、そんな今度国のトップになるかも知れねぇのになーにも世間を知らねぇ坊ちゃんが訳の分からねぇ話を膨大な金と武器を持ってやって来たって訳だ」

「……」


 これが国王の耳に入ったらそれこそ大混乱だ。なにせ彼は「元」とは言え聖女を亡き者にしようとしたのだから。


「……」


 しかし、そこまで考えてソフィアは思わず「フッ」と小さく笑った。


 なぜなら、それはあくまで「普通であれば」という前提で成り立つ話だったからだ。今の自分は「聖女と偽った悪女」と言われて国外追放を言い渡された身だ。


 いわゆる「犯罪者」と言っても過言ではない。今のところ追手の気配はない事からまだ国王の耳には届いていないのだろう。


 しかし、国では既にソフィアが「偽聖女」だったという話はあっという間に広がっているはずだ。そんな状況の中でソフィアが襲われたと言う話が出ても「自業自得」としか言われないだろう。


 ひょっとしたら殿下は国王陛下に知られる前にかたをつけたかったのかも知れない。


 いや、多分そうだったのだろう。


 ただ、これを計画したのはきっと殿下だろう。そうでなければあまりにも杜撰過ぎる。つまり、やはりあのパーティーや一連の計画を立てたのは別の人間という事になる。


 なぜなら、殿下本人が立てたであろうこの計画は……正直鼻で笑えてしまうソフィアの実力も何も考慮していないと分かる程だったから。

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