第13話
「――ん……」
リーダーが目を覚ますと、そこに広がっていたのは雲がまばらに広がっている青い空だった。
「俺……」
どこか頭がスッキリしない感覚はまるで「寝起き」の様だが、彼にそんな記憶はない。
「……」
辺りをキョロキョロと見渡すと、まるで酒でも飲んで酔っ払ったまま寝てしまったかの様に散らかっている。
しかし、そんな酒盛りをした記憶もリーダーにはない。そもそもどうして自分はこんなところで眠っていたのか……と記憶を遡っていると……。
「あ、起きられましたか」
「!」
足音もなく隣に立つソフィアに思わず飛びのいてしまった。
「大丈夫ですか……と聞こうと思ったのですが、これだけ素早い反応が出来るのですから、大丈夫な様ですね」
「……」
そこでようやくリーダーは昨日の深夜。自分の身に何が起きたのか思い出した。
思いっきり振り上げた拳は彼女にあっさりと躱され、彼女の反応に気を取られてしまった事で隙が生まれ、柱から生まれた枝の攻撃に反応する事が出来ずにそのまま直撃してしまった……という事を。
「俺は……気絶していたのか」
「はい。枝の攻撃が頭に直撃してそのまま気絶していましたから」
「ほ、他の奴らは」
「皆さん眠っていらっしゃいます。攻撃を受けて気絶してしまった方もいらっしゃいますが、ほとんどは武器を取られて逃げる事に体力を使って疲れ果てた……といったところでしょうか」
ソフィアがそう説明すると、リーダーはどこかホッとした様子で「そうか」と腰を下ろした。いや、どちらかと言うと「力が抜けた」と言った方が正しいか。
「魔法は……もう止まっているんだよな?」
「ええ。あれは一時的に植物の成長を促進させるものでしたので」
「そんでその結果この船は緑が生い茂っているって訳か」
「はい。ですが、航行には何も問題はありません」
それくらいの事は元々織り込み済みだったのだろう。ソフィアはニッコリと答える。
「あー、思ったんだが……」
「はい」
「あんたは柱に植物の成長を促す魔法を使ったって言ったよな?」
「はい」
「それって下はどうなってんだ? まさか根っこが伸びている……なんて事はねぇよな?」
はたから聞いていれば笑える話かも知れない。しかし、この質問が出来るのはこの攻撃を受けた人だけである。
「……さすがに船の底を突き破るまでの成長はしていません。ただ……」
「ただ?」
「下の船員たちが過ごせる部屋や荷台部分については多少なりとも影響が出ている可能性は否定出来ません」
「……」
しかし、船自体は問題なく進んでいるので船底を突き破って浸水している……という訳ではなさそうだ。
「――そうかよ」
「はい。たとえ船底を突き破ったとしても、すぐに別の緑魔法を使って修復するつもりでしたから」
「……突き破る可能性はあったのかよ」
「こればかりは魔法をかけたとは言え、動くのは彼ら自身。自然が相手ですので……こちらの……人間の思惑通りとはいきません」
「ハハハ。まるで生きているみたいに言うんだな」
「ええ、植物は私たちと同じように生きていますので。だから決して雑な扱いをいいものではない……と私は思っています」
真っすぐと真剣な眼差しのソフィアに、リーダーは「そうかい」とぶっきらぼうに答え、そのまま後ろに倒れた。
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