第10話


 基本的に「魔法」が使えるのは「貴族のみ」とされているのだが、実は「魔法陣を施した武器」という物が存在している。


 これらは使用者本人に魔法を扱う。つまり「魔力」がなくても使用する事が可能で、普通の武器では出来ない「攻撃を飛ばす」や「魔法などを跳ね返す」などが出来、さらに桁違いの威力を発揮する事が出来る。


 そんな大それたことが出来る要因は偏に武器に「魔法陣」が施されているからだ。


 ただ、この「武器に魔法陣」を書ける人間というのは「ある少数の種族」にしか出来ないとされているため生産数がものすごく少なく、また現存している上に今も魔法が使用出来る数も少ない。


 これらを巷では「正規品」と呼ばれてかなりの高価で取引されており、それこそこれを使用しているのはこの国では通常部隊の隊長クラスの人間だと言われている。


 どうしてそんな言い方をしているのかと言うと、この国には「魔法騎士団」という物が存在しているからだ。


 そちらは下の位の貴族で実家を継がなかった者たちが多く在籍しているとの事なのだが、中には優秀な者たちもおり、ソフィアはそんな彼らと「護身術の実践」と称して何度か手合わせをした事もあるほどだ。


 こちらの「魔法騎士団」は基本的に魔法を使って戦闘をする為、こうした物は必要がないので対象から外されている。


 ちなみに、国によっては「国王のみが使用出来る」など様々な取り決めがあるとにかく価値のある物でもある。


 それが彼らの手にある……様に見えた。


 しかし、それが「正規品」ではなく「粗悪品」だとソフィアはすぐに気が付いた。


 要するに「正規品」があるという事は「粗悪品」という物もあるというわけだ。


 この「粗悪品」は本当に最初の数回は魔法を使用したかの様な威力が出せるのだが、すぐに効果が切れてしまうのが特徴だ。


 これだけ巷で「価値がある」と言われているのだ。当然「偽物」や「粗悪品」だって出回る。


 そして、彼らが手にしているのは数ある「粗悪品」の中の代表的な物だろう。


 これでもし彼らの手にしている物が「正規品」だったとしたら、そもそもこんなバカげた事をせずともすぐに売ればいいだけのはなしだからだ。


 物にもよるとは思うが、それでも売れば五年は遊んで暮らせるほどの大金が手に入ると言われる。場合によっては国が直接買いに来るとまで言われている代物でもある。普通に考えたら「売る」一択だろう。


 ただ、こうした「武器」を手にしていたとしても、ソフィアは全然気にしていなかった。なぜなら「正規品」だろうが「粗悪品」だろうが使用者がチンピラである事に変わりはなかったからである。 

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