第9話


「……」


 さて、一言に「戦意喪失」と言ってもどうするのが最善だろうか。


 ソフィアは全属性の魔法を使う事が出来、また魔力も膨大だ。それを使って一蹴するのもいいだろう。


 ただ……そうした場合「どうするのが一番効率的なのか」という事を考えなければならない。


 もちろん、何も考えずに魔法を使っても逃げ出す奴らは大勢いるだろう。


 それこそ圧倒的な実力の差を目の当たりにしてそれでも立ち向かってくるほど骨がある人間がこの中にいるとは思えない。


 しかし、問題があるとすれば「ここが海の上」という事だ。


 ソフィアとの力の差を思い知るのは別に問題はない。ただ、それによっては「死なばもろとも」と船を沈められたら元も子もない。


 山の方であればいざ知らず。


 いくら膨大な魔力を持っているソフィアであったとしても、船のない状態で今の位置からホゼピュタ国へ向かうには少々骨が折れる。


 そうなると、いかに彼らを刺激せず、また船に損壊を与えず武器を下ろさせるか……これが課題だった。


「おらぁ!」

「!」


 そんな中。突然大笑いしたにも関わらず何もしかけてこないソフィアを不気味に思ったのか……はたまたただ短銃にしびれを切らしたのか一人の大柄な男性が大振りで剣を振って来た。


「――っと」

「ん!?」


 あまりにも大振りで剣の軌道は簡単に読めたので、それを軽く避けてついでに足を残して引っかけると、男性は盛大に転び……。


「うわぁぁぁ!」

「うぉぉ!」


 ついでに転んだ男性の近くにいた何人かを巻き込んだ。


「何やってんだ! お前ら!」


 随分とお間抜けとしか言いようのない転びっぷりだったが、さすがに全員が全員こう簡単にはいかないだろう。


 しかも、目に入る二人か三人の手には「魔法陣が施されている武器」がある。


 一体、こんな物をどこで仕入れたのだろうか。


 そもそも「武器」だってタダではない。


 そうなると……多分、貴族の中にこのチンピラたちにこうした「武器を横流ししている輩がいる」とのだろう。


「なるほど。これは……ちょっと話が変わってきたわね」


 しかも、その中に「魔法陣が施された物」もあるとなれば……国王が思わず眉がピクッと動きそうになる事案に発展する可能性だってある。


 これを解決したら……なんて全く思っていない。そんな事をしたところで自分のかけられた冤罪が晴れるわけでもない。


 もはや国外追放された身とは言え、これを放っておくと困るのはここを利用する人たちだ。それはさすがに目覚めが悪い……と思い立ち、ソフィアはゆっくりと再度チンピラたちと対峙した。

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