第2話
「……」
会場の外に出て振り返った瞬間に「ここが会場だった事をもっと疑うべきだった」と改めて反省した。
なぜならここは「第一王子派」筆頭と言われている財務大臣が所有している別荘だったからである。
本来であればこうしたパーティーは王宮で行われるのが普通だ。
しかし、今回に関しては「今回の卒業パーティーは国王陛下も王妃陛下もいらっしゃらないのであれば大々的に王宮では行わず、式が終わり次第の後は各々親しい友人たちとパーティーをした方が良い」などと都合のいい事を殿下が言ってこのパーティーが行われた。
本来であればあのパーティーは卒業生全員が同じ会場にいる状態で行われるはずだったのだ。
それを殿下の一言によって形式が変わった。
要するにあの場には彼の味方をする貴族だけしか参加していない……というわけではなかったが、あの場にいた有力な貴族のほとんどが第一王子派の面々だった。
つまり、あの自分たちに都合の良い状況を意図的に作り上げたのである。
そもそも「どうしてそんな事が出来たのか?」という疑問には「彼が第一王子だから」という理由だけでなく、もう一つ「生徒会の役員だったから」というのがあった。
魔法学園の生徒会長は最高学年を迎える前に出される総合成績の最優秀者しかなれない。
だが、この生徒会の役員に関しては生徒会長が指名する形を採用している。
そして、その生徒会長こそがリリー様だったのだ。
副会長には一つ学年が下のジェラルド様が指名されたのだが、なんと彼女はアーノルド殿下を書記として生徒会に迎え入れたのである。
これにはソフィアも驚いてしまったが「ひょっとしたら派閥のバランスを見ての事かも知れない」とこの時は考えていた。
だから、まさか彼女が彼のとっぴょうちもないと思える「卒業パーティーを個々人で行う」という提案を採用するとは思ってもいなかったのである。
もしかしたら、この時には既に彼女は今回の計画に一枚嚙んでいたのかも知れない。
それならばこれも納得がいく。
「それで私はまんまと引っかかった……と」
この会場を有している財務大臣のご子息も卒業生として名を連ねていた。その辺りを警戒をしていなかった自分に非は当然あるのだから今更文句を言うつもりはない。
それに、むしろ殿下が魔法学園を卒業したまさに「今日」国外追放を宣言された方が良かったかも知れない。
なぜなら、仮にもしこの場にソフィアがいなかったら彼との結婚は決定的になっていたからだ。
そうなってからではそう簡単に彼のそばを離れるのは難しくなり、ずっと彼女の妻として聖女としてこの国に縛られる事になっていただろう。
まぁ、あの魔力鑑定の結果を受けてから元よりそのつもりで……将来の事なんて諦めてはいたのだけど。
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