第9話
なぜなら、ジェラルド王子だけでなく、ミリア嬢とも仲良しこよしとまではいかなくともそれなりに仲良くしていたと思っていたからである。
しかも、ミリア嬢は「将来は国の為に」と自身の将来について志高く語っていたのがとても印象的だった。
それ故に今の状況には驚きを隠せない。
しかし、それと同時にもし仮にミリア嬢が聖女だったとして……第二王子のジェラルド様との婚約は一体どうなるのだろうかとソフィアは自分の事よりもそちらの方が気になってしまった。
「ふん、しかも貴様は私の弟。ジェラルドを密会した事は知っている!」
アーノルド殿下は更に決めつける様にソフィアを指さした。
「え、本当に?」
「確かジェラルド様ってミリア様の婚約者ですわよね?」
「さすがに第一王子の婚約者で妻女のソフィア様とと公爵家の令嬢と婚約しているジェラルド様が密会となるととんでもないスキャンダルになるぞ」
これに対して周りはやたらとざわついている。この反応を見るに、どうやらここにいる人たちは皆、ミリア嬢がいる事もあってか殿下の話を信用しそうになっている。
「……」
この国には現在二人の王子がいて、アーノルド殿下は実は正室の子供で第二王子であるジェラルド様が側室の子。つまり先代の聖女の子供だったのだ。
それでも本来であれば第一王子であるアーノルド殿下に王位継承権があるはずなのだが、先程からの発言から分かる通り殿下はかなり子供でとても国を背負えるほどの力量もなければ器でもない。
これを危惧した宰相を筆頭とした数人の役人が「ここは魔法の才に溢れ、聡明なジェラルド様こそ国王にふさわしい」と言い出した。
ただ、宰相たちの考えとしては「ここで危機感を持って自身を顧みてくれたら」という目的があったのかも知れない。
そもそもジェラルド様自身「将来平穏に過ごせるのであれば王族。最悪貴族じゃなくてもいい」と言っている程で、王位継承権に関心は全くなかった。
元々、ジェラルド様だけでなくアーノルド殿下も「魔法鑑定」では同じくらいの潜在魔法力があると結果が出ていた。
ここで魔法の勉強や鍛錬を積めば自分の力になるのだが、殿下はその結果に満足してしまい、そこから勉強はおろか鍛錬もしなくなったと言うのだ。
そして「魔法鑑定」で分かるのは魔法の適正とその属性なのだが、後もう一つ潜在魔法力で、殿下はこれがあくまで『潜在』であるという事に気が付いていなかったのだろう。
その結果。殿下とジェラルド様の魔法の実力は雲泥の差がついてしまったが、そもそもジェラルド様自身が魔法に対する探求心が高いというのもあるとは思う。
ただ、そんな彼とお茶をしただけで「密会」と言われるのはソフィア自身だけなくジェラルド様にも迷惑がかかってしまう……ソフィアはそう思った。
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