微笑みと慈愛の聖女と呼ばれていたけど、悪女と呼ばれて国外追放されたので好きにしようとます。

黒い猫

第1章 私は聖女ではなく悪女だった様です。

第1話


 海と山の自然が素晴らしい国『ガルフツスカ王国』には「聖女」と呼ばれる存在がいた。


 しかも彼女は国だけではなくこの世界においても指折りと言われるほどの魔力を有しており、またいつも可愛らしい微笑みを浮かべている事から人々から「微笑みの聖女」まは「慈愛の聖女」とも呼ばれていた――。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 ソフィア・ホワイトはこの国では「聖女」と呼ばれる存在だ。


 この国で言う「聖女の仕事」は「この国を人間を脅かす魔物から人々を守る『結界』を張る事」を指している。


 これは魔法が発達しているこの国でも出来る人間はそう多くはない。


 そんなソフィアなのだが、実は教会の前に捨てられていた元孤児だ。


 しかも生まれてあまり日を置かずにに教会の前に捨てられていたせいもあってか、ソフィアは自分の生みの親の顔すら知らない上に、自分がどこで生まれたのかも知らずにいた。


 ただ、この国では十歳になった子供には「魔力鑑定」の儀式を絶対受けなくてはならず、そこでソフィアは「聖女の力」を有している事が判明した。


 本来この国の常識として「魔法が使えるのは貴族」と囁かれている為、そもそもこの「魔力鑑定」をこの国の子供全員に実施する事自体に各所から疑問が上がっている中で判明した今回。


 元々実例は少なかったもののこうした「庶民。または孤児でありながら魔力を有している子供」というのは昔からいたらしく、そうした稀有な存在を見つける為にこの「魔力鑑定」は行われていた為、それが今回の一件で証明される形となった。


 ただ、やはり「魔法が使えるのは貴族である事」という風習を無視する事は出来ないらしく、国王陛下は「早急に彼女を貴族籍に」と命令した。


 そしてソフィアは育った教会近くにあるホワイト侯爵家に入る事になった。


 ソフィアを迎え入れてくれたホワイト侯爵夫妻は二人共本当に温厚な人で、実の家族の様に迎え入れてくれた。


 それに、元々教会近くだった事もあり、面識もあったので突然貴族になる事に戸惑いがあったソフィアもすぐに打ち解ける事が出来たのも大きい。


 実はホワイト侯爵家は「土属性の魔法」つまり「黄の魔法」に分類され、その有数な家の一つだった。


 元々聖女の力はどうしても「結界」などの「守り」に目が行きがちなのだが、実は傷や状態異常を回復させる「癒しの力」も有していた。


 そして、それは「黄の魔法」つまり「土魔法」と相性がとても良く、ホワイト侯爵家では特に植物の育成に力を入れており、それに関連する書物も大量に保持していた。


 侯爵領は農作物。特に「小麦」が特産品で、侯爵は魔法をそれに生かしていたのだが、この膨大な書物の中には「植物」に派生して「薬」に関する物もあり、それがソフィアの研鑽にとても役立った。


 そして、それが実はつかの間の休息だったと知るのは先代の聖女から本格的に「聖女の鍛錬」と魔法を学び初めての事だった。


 しかし、大変ながらも充実な日々を送っている中でいつの間にか「微笑みの聖女」または「慈愛の聖女」など呼ばれる様になるまでソフィアの体感としては本当にあっという間で……。


 大変ながらも懸命に仕事に邁進し、今のところ何事もなく……とはとても言い難いながらも何とか日々を送る事が出来ていた。

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