タイマーが止まる時

アイス・アルジ

第1話 タイマーが止まる時

 いつもと変わらない月曜日の朝だった。チコは胸騒ぎを感じ、目を覚ました。


「ヤバ! 寝過ごし」

 なんで? 目覚まし、どした?


 即着替え、片足で

「ソックスどこ」

 掴むと玄関へ走った。リビングには誰もいない? どして? 気にしてる暇はない。

 速、アパートを出た。


 途中で、走って来たカズが追い越そうと

「チコ、遅刻するぞ」

「カズ、どした?」

「アラームが、クソッ」


 バス停はすぐそこ

「どうした? もう10分も遅れてるんじゃ」

「バスまだ来ねーかッ!」

「電話……」

 イラついた客達が集まって文句を言っている。


「え? 運転手が来てないって!? 遅刻って事!」

「どうなってんだ! どう責任…… 」


 チコとカズはバス停を横目に、通行人を避け中学校へ走った。走りながら周りを見る、どうも様子が変だ。


 時計を見ながら小走りのサラリーマン、通行人、駆け出しては 駆け込む人々。

 開いていないコンビニ、駅に止まったままの電車、あちこちから悲鳴や言い争う声が聞こえる。クラクション、遠くから救急車の音さえ、パトカーに消防車? エッ、それにジェット機やヘリまで?? 意味不明。


 近くの小学校の大時計が8時を指し、消防署の時計も8時を指した。いつも鳴り響くチャイムとサイレンが聞こえない。


 いっぽうナナは、この異変に全く気付かない。進学してからずっと引き籠っている。

 目覚ましなど不要だ、寝たい時に寝、起きたい時に起きる。カーテンも開けず、二階の部屋に籠った。何がきっかけだったのか……


 チコとカズは走りながらも不安が……

「なんかヤバくない?」

「ああ、どうしたん」

 と、その時、二人のスマホのアラームが鳴りだした。

 ドキッ


 そして、圧倒的轟音がゴンゴン! と響き渡った。

 学校のチャイム、消防署のサイレン、駅のベル、高層マンション、家々、商店街から。

 目覚まし、アラーム、ありとあらゆる警報音が超混ざり合った。

 道行く人々は耳を抑え立ち止まった。


 ナナも、さすがに驚いてカーテンを引き窓を開けた。新鮮な風と共に轟音が襲ってきた。


 ちょうどその時、チコとカズが窓下の歩道にいた。

「チコ、ナナの部屋! 開いてる!」

見上げると、ナナが

「ナナ!!」


ナナは二人の姿を見ると、過去の記憶が閃光の様に戻ってきた。

「チコ? カズ?」

何年ぶり?

驚き!


 轟音はまだ続いている。

 さっきまで止まっていた、街中のタイマーが動き出したのだった。

 それと共に、止まっていたナナの時も動き始めた。チコとカズの時計の針と、再び重なるかの様に。





 (後書き)


 淡雪様の自主企画〝第72回私の短歌で物語を綴って下さい〟への参加作品。

〝お題339『狂気タイマー』-「狂気」〟からイメージした作品。短歌の内容とは、少し違うかもしれません。(参加ルールを誤解していたら申し訳ありません。別途、公式企画「1分で読める創作小説2025」にも応募予定)


 苦手なタイプの内容ですが、試し(ちょっとしたチャレンジ)として書きました。


 (2025/10/04 アイスA)


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タイマーが止まる時 アイス・アルジ @icevarge

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