第7話 隣は隣は愉快な人だ
次の日の朝。
7時か……眠い。無理やり体を起こす。
「はぁー、ねむ。」
頭の中がまだ霞がかかったみたいに重い。
昨日は配信機材を貸したあと、そのまま布団に倒れ込んで寝落ちした。
夢の中で話してたような気もするし、現実だったような気もする。
……いや、あれ、ほんとに貸したんだっけ?
ピンポーン。
「……うわ、タイミング完璧すぎだろ。」
寝ぼけ眼で玄関の方を見る。
足音が近づき、聞き慣れた声が響く。
「すみませーん、昨日借りた機材とタオルを返しに来ましたー!」
ドアを開けると、そこには桜が立っていた。
いつものように喧嘩腰でも、昨日の夜みたいに慌ててもいない。
なんか、今日はちょっと雰囲気が違う。
(……おめかししてる? いつもより整ってる気がするな)
「ああ、ありがと。」
「昨日は本当にありがとうございました! おかげで配信、無事に終わりました!」
「役に立てたならよかったよ。」
言葉がそこで途切れる。
お互いに、次を探しているのがわかる。
(気まずい……このまま終わりにするか)
「じゃあ——」
終わりの言葉を言おうとした、その時。
「あのっ……失礼でなければ、一緒にゲームしませんか?」
「っは?」
一瞬、頭が真っ白になった。
まさかのゲームのお誘い。
「え、っと……」
「あ、やっぱ迷惑でしたか!? すみませんっ!」
「いや、別にいいけどさ……」
「ほんとですか!? よかった! じゃあ、やりましょ!」
(いやいやいや、なんで!?
前まで喧嘩してたじゃん!?
どういう流れでこうなるんだよ!!)
「じゃあ持ってきますねー!」
(まじで何なんだよ……?)
数分後、
「持ってきましたぁ!」
(……まぁ気にしても意味ないか)
そしてゲームが始まった。
――一時間後。
(こいつ……かなりうまいな)
今やっているのは、話題のPVPゲーム。
三人のヒーローに指示を出し、自分で操作するキャラを変更したりする――戦略とPSが試されるタイプ。
(よく負けて発狂してるイメージあったけど……上手いな)
「はいそこそこそこぉ、三連コンボっ!」
「ぐっ、そこ落とされるのキツい……下がろ」
「はい、裏取りぃ!」
「なっ!?」
「いぇーい! 勝ったぁ!」
また負けた。
「そのキャラだとこのルート通るでしょ? だからトラッパー行かせて罠置いてたの」
「定石が通用しないなぁ……」
「まぁ、私それなりにランク高いから」
数戦こなしたころには、部屋の中にちょっとした熱気がこもっていた。
桜は勝つたびに小さくガッツポーズをして、負けると「くぅ〜!」と唇をかむ。
感情が全部顔に出るタイプだ。
「いやー楽しいですね! 柱石さん意外と強いじゃないですか!」
「意外とってなんだよ、普通に強いだろ」
「えー? でも五連敗でしたよね?」
「それは……お前の罠がえぐいんだよ」
「ふふっ、戦略勝ちです!」
満足げに笑う桜。
その笑顔を見て、柱石は少しだけ息をついた。
(なんだろ、前みたいにうるさい人じゃない。
普通に遊んでるだけなのに、楽しい)
「そういえば、配信の方はどうだったんだ?」
「昨日ですか? あのあとなんとか間に合いました!
でもマイク変わってたから声がちょっと響いちゃって、コメント欄が『今日声キレイ!』って盛り上がってました!」
「それ、俺の機材のせいだな」
「えっ、いい意味でですよ!?」
「ならいいけど」
一瞬沈黙が落ちた。
ゲームのBGMだけが流れている。
でも、不思議と居心地は悪くなかった。
桜はコントローラーを置いて、チラッとこちらを見る。
「ねぇ、また今度も一緒にやっていいですか?」
「は?」
「いや、その単純に楽しかったんで!」
「ま、まぁ暇ならな」
「やった! じゃあ次は負けませんからね!」
「いや、もう十分勝ってるだろ」
「ハンデついても全勝したいんで!」
「よしてくれ」
「あもうこんな時間か」
時計は12時を指していた
「そろそろ昼食だし帰るね」
「....まて今から俺が作ってやるよ」
「へ_?」
「まぁ、久しぶりに楽しゲームできたお礼だよ」
「あー、じゃあお言葉に甘えて」
「おう座って待っとけ」
キッチンへ向かう
「ていうか柱石さんって料理できるんですね」
「まぁ、簡単な料理がそれなりに作れる程度だがな、たとえば肉じゃがとか」
桜が驚いた顔で言った
「肉じゃが作れるんですか?」
「ああ、まぁ簡単だし」
「あの料理が?そんなわけない」
「そんなことないけどなぁ」
ここで柱石にひとつひらめきが起こる
「さてはお前料理したことないなぁ?」
ギクッ——。
そう音が聞こえそうなくらい、桜の体が固まる。
「そ、そんなわけないじゃん、いっつもお湯を沸かして入れて三分まって食べてるもん」
圧倒的カップ系の食べ方だった
「ほぼ自白したようなものだぜその言い方」
「いいじゃないですか!?、朝はパン、昼にカップ系、夜にカレー」
「韻を踏んでキレイに見せるな!」
「おらできたぞ、カルパッチョだ」
「おい、簡単なものじゃないの!、しかもこの場でなんてセンスのものをだすのよ」
「え?、カルパッチョ簡単じゃないの?」
「簡単じゃ何よ、はぁもう何?怖いだけど、もう帰ります」
「あ、帰る?ジェラードあるけど」
「よし早く持ってきて!、食べよ!」
そして出されたカルパッチョはかなりうまかったとさ
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