第3話 呪われた焔

その夜。

焚き火の周りで笑う人々の背後に、ふと影が立った。

焦げた毛皮と骨だけの狐であった。炎の光に照らされたその瞳は、なおも金色に燃えていた。


「お前たちの命は、この火でつながれた。

だが忘れるな――これは神々から盗んだ呪いの焔だ」


焔がぱちりと弾けるたび、狐の尾が揺れ、呻きが風に混じる。

その声は次第に人の声に似て、死者の嘆きのように響いた。


人々は震え、焚き火を囲んで祈りを捧げた。

火を絶やしてはならない。火が消えれば、再び狐が現れ、魂を喰らう――そう信じられるようになった。


それからサハの村では、夜ごと火の番が置かれ、炎は絶えることがなかった。

だが、嵐の夜に雪原を歩けば、遠くで青白い光が揺らめくことがある。

それは狐が流した肉片の残り火、あるいは魂を導く呪火。


氷原を照らすその光を見た者は、決して生きて村に帰ることはできなかった。

狐火は今も吹雪の夜に燃え続け、人々の恐怖とともに語り継がれている――。

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