「スーパー」「縄」「嗅ぐ」
taktak
「スーパー」「縄」「嗅ぐ」
ここは何年も前に廃業したスーパーの廃墟。
「出るよ。」という噂を聞いて彼は深夜に忍び込んだ。
陳列棚は壊れ、天井も崩れかかっている。
不良でも入り込んだのか、ゴミが散乱している。
彼は配信用のカメラを回し始めた。
演出を考えながら、暗い建物を見て回る。
特に何も起きない。それでもいいさ。視聴者は雰囲気を楽しんでる。
食品売り場と思しき区画を抜けて、裏方に入ろうとした、その時だった。
「……臭い。」
思わず呟いた。
異臭がする。何の匂いだろうと、思わず嗅ぐ。
不快だったが彼は匂いを辿った。
ネタになるかもしれないと暗がりを進む。
扉を抜け次の部屋に入った瞬間、何かを踏んだ。
あっ!と彼は転び、落としたライトが消える。
「イタタ…」と言いながら、ライトを探す。
ギィ ギィ
暗がりで音がした。
背筋が凍る。
……いる。
誰かが、いる。
暗がりのすぐそこに。
匂いが強くなる。
口元をおさえる手が震える。
反対の手で必死に床を探る。
ライトは…ライトはどこだ。
息が苦しくなり、鼓動が痛い。
手がライトに触れた。
男はそれを急いで掴むと、光を向けた。
男はそれを見た瞬間、音の意味を理解した。
這い上がる恐怖に震えながら、彼は必死に逃げ出した。
彼は見た。
天井から吊るされた荒縄を。
縄は投げ縄のような輪を作ってぶら下がっていた。
それがどう使われたか、彼には容易に想像できてしまったから…。
「スーパー」「縄」「嗅ぐ」 taktak @takakg
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