姫サマだって密かに恋を謀る
そうじ職人
孫家の帰還
第0話 とある姫サマの想い
「あたしは、あの方に会いたいのよ!」
屋敷の奥から、ひと際大きな声が響き渡る。
名家の屋敷ともなると、奥の部屋には女官の部屋が連なる。
もちろんひと際大きな最奥の部屋は、この屋敷の正室の居室である。
『七年男女不同席』
男女は七歳にもなれば、みだりに竹で編まれた敷物(寝台)を共にしてはならない。
これは
そして
それは、ここ
最奥の正室の部屋の手前には、唯一の跡取りの娘が住まう。
名を朱
その中でも妙齢の女性が、
「
「そんなことを言っても施
もちろん
「
妙齢の女性が、優しく
「
(施
名家の姫サマとしては良く言えば活動的。平たく言えばジャジャ馬である。
そんな行いを施
(あんなに優しくて理解力があって、おまけにイケメンだわ! この想いだけは大事にしたい)
***
時に、興平二年(195年)秋。
後漢の末期。
皇帝の
その後も権力欲に駆られた有力な皇帝の側近らは、治世を
もはや帝位の威光は地に落ちていた。
天下の覇権は
特に最大の兵力を誇る
それに対抗できる者は限られるものの、各々独自に勢力の拡大を図りつつ天下の覇権を狙っている。
また
そして江東の地では、先年戦没した
まさに群雄割拠する乱世の真っ只中である。
***
当時の高貴な姫サマにとっては、読み書き礼儀作法を学んでいることは当然のこととされ、特に才女と名を
そして気品を際立たせるには、楽器の演奏や舞踊の
「もう飽きたわぁ」
今は舞踊の鍛錬の時間だ。
稽古場には
中央の舞台では、
小さな水瓶を頭に載せて、腰は低く保ちながら袖には重りが入れられている。
舞踊にとって重要なのは、身体全体で『
『
それを姿勢や歩き方で体現して、更には袖の角度から指先の繊細な仕草、そして音楽に合わせた振り付けと視線の動きが優雅さを表現するのである。
「それでは、今日はここまでに致しましょう」
頭上に載せた水瓶は派手な音を立てて床を転がり、辺りを水浸しにする。
「ねぇ、
「まだまだ、やっと立って歩けるようになった
そう言うと、舞台の端を演奏なしで静かに踊り始める。
その姿を見ると、伴奏の
(す、凄い! いつも思うけど、あんな
「汗で濡れた上に水瓶を頭から引っくり返して水浸しですよ。早く
「はあっ、
溜め息
(あたしも
まだまだ残暑に、辺りは蝉の声が響き渡る。
窓から差し込む日差しは未だに高く、奥の
これから
***
【人物註】
・朱
・
・施
・沈
【用語註】
・古代中国の行政区:全国は十三州に区分されている。その下に郡が置かれて更に県に区分される。
・『
・
・
・
【イラスト】
・本作扉絵:https://kakuyomu.jp/users/souji-syokunin/news/822139837232153807
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