【3話完結】僕と貴方と
瀬戸川清華
第1話
僕は、
誰だろう。不幸の先には幸福があるって言ったのは。
母さんは、4年前に無期懲役になってしまった。
今ならわかる。母さんは妹が死んで錯乱状態になってたんだと思う。誰かのせいにしないといけない気がしたんだろう。頭が上手く回らなかったんだと思う。『自分の子は誰かに殺された。殺したヤツが悪い』そう思わなくちゃおかしくなったんだろうと思う。怒りの矛先が向いたのがあの人だったんだろう。
でも、それであんなことをしてはいけない。僕は、母さんを許せないだろう。
その時、僕はまだ小さかった。でも、あの日のことだけは鮮明に覚えている。
***
僕には、妹がいた時期があったらしい。妹は生まれて間も無く死んだ。これは、完全に母さんのせいだった。
母さんは、春口日向と言う。
日向は、ずっと女の子が欲しかった。そして、待望の子供は男だった。それが奏多だ。
日向は、自暴自棄になり朝から晩まで酒を飲んでいた。自分が妊娠しているとも気づかないで。
日向は
焦った日向は急いで病院に行ったも手遅れでもう、無事に産まれてくるのを待つことしかできないと言われたそうだった。
そして、生まれて来たもののお腹の中で正常に成長しきれず早産してしまった。
母さんの主治医である、関口葵が全力で手を尽くし切ったが死んでしまった。
母さんは、妹が死んだのは関口葵のせいだと思い込んでいた。その時、母さんは妹を亡くしたショックで頭がしっかり回らなかったのだろう。
しばらくして退院してきた母さんと一緒の布団で寝ていた。しかし、朝起きると母さんの影がどこにもなかった。布団も冷め切っていた。
「母さん⁉︎どこにもいないの?」
父さんは、単身赴任で海外に行っていた。
だからこそ、奏多が家を必死に探していると、リモコンをうっかり踏んでしまった。
ピッ
テレビがつく音がした。
〈えー、ここで速報です。自称無職の春口日向容疑者(34)が松井病院、産婦人科の医師、関口葵さん(29)と坂本陽奈ちゃん(7)の腹を包丁で何回も刺し殺害した疑いが持たれています。警察の調べに対し、春口容疑者は『わたしの子供を殺されたから殺した。子供は、近くにいたから殺した』と述べており、警察は春口容疑者と関口さんの間に何らかの関係性があったとみて、調査しております〉
「ハ?はる、ぐち……ひな、た…?松井病院?母さん!?」
「ハァ、ハァ、ハァ」
僕は、母さんに会うため、話をするため松井病院に向かって止まらず走っていた。誰にもいないから、嫌な考えは止まらない。
(どういうことだよ…母さんが人殺し?関口先生を殺した?どういうことだよ母さん!)
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
「こっち来ないでください!」
「関係者以外立ち入り禁止です!」
「写真撮らないでください!」
マスコミが現場に押しかけていた。
警察がなんか言っているが、そんなこと気にしてられない。僕は現場に貼ってある黄色と黒色で立ち入り禁止と書かれたテープを警察官を無視して入っていく。
「ちょっと!キミ!そっちに入っちゃダメだよ!戻って!戻れ!」
「母さんがいるの!」
いた。母さんが、手錠をつけられフードを被り、マスクをつけ、パトカーに乗り込もうとしていた。
「母さん!」
母さんは、視線だけこちらを向いた。すると、警察が
「きみは、この人の息子?なんで、ここに入ってきてるいるんだ」
「母さんは、本当にしたのかを知りたくて……う、嘘だよね?母さんはこんなことする人じゃないもん」
「……ハァ、残念だが、キミの母さんは現行犯で捕まったから後は裁判を待つだけだ。それと、キミ。母さんに会うためにここまで来たのか?立ち入り禁止のテープが見えなかったのか?ああ。まだ読めないのか。まぁ、じゃあ、後で家まで送っていってあげるから一旦出ていって」
僕は、一気に絶望のどん底に落ちた。
「ねぇ、母さん。嘘だよね?嘘だって言ってよ」
「………貴方、誰?うちには女の子しか、いません」
「ハ?」
喉がヒュッと音を立てたのがわかった。確かに、母さんだった。でも、母さんじゃない?僕は、おとなしく警察の言う通りに母さんと一緒にパトカーに乗り込んだ。
僕は、小さく状況が理解できていなかったからパトカーで家に帰されるだけですんだ。
そして、母さんは裁判の末、無期懲役になった。
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