8日目 ゴースト『お化けって本当にいるの?』

 ニアが目を覚ますと、ゼルが黒猫のノクスと人形のフランを抱えていた。


『ほら、ニアが目を覚ましたわ! はやく遊びましょう!』

「にゃあにゃあにゃあ!」


 フランとノクスに詰め寄られてゼルが少し困ったような顔をしていたので、ニアは思わず吹き出してしまった。


「今日は何をして遊びましょうか?」

「今日はフランともっと遊びたいわ! おままごとがしたい!」

「わかりました。それでは、ドールハウスをもっと大きくしましょうか」


 そう言うと、ゼルは先日の子供部屋だけのドールハウスを更に広げた。おもちゃの洗面所や台所、バスタブやリビングのソファを見てニアはとても喜んだ。


 ニアは村の子供たちが楽しそうにままごとをしていたのを思い出した。村長の娘を中心に小さい子から大きい子まで仲良くままごとをしていた。ニアは気が付いたときからひとりぼっちだったので、ままごとを見て家族構成というものを学んだ。そしてお父さんとお母さんというものが他の子供にはいるのだ、と思って大変羨ましく思っていた。


「それではニアには、お母さんの役をやってもらいましょうか」


 ゼルはニアに「お母さん」の服を着せた。いつもの可愛らしいピンクや水色の軽やかなワンピースではなく、しっかりとしたシャツウエストドレスが大人の服装のようであった。幅広い肩口に腰でベルトを巻くスタイルが大人の間で流行っていたことをニアは薄っすら思い出した。


「まあ、お姉さんになったみたい」

「お母さん、ですよ」

「でも、私お母さんって知らないわ」

「それではフランにお母さんをやってもらいましょうか」


 ゼルが手を振ると、フランが大きくなっていてニアが人形の大きさになっていた。フランが母親の服を着て、ニアはいつものワンピースではなく赤ん坊の服を着ていた。


『まあおちびちゃん、何の心配もいりませんからね』


 フラン母さんはそう言うと、優しくニアを抱き上げた。ゆっくりと優しいリズムがニアを包み込んだ。


「お母さん、お化けは来ない?」


 ニアはままごと遊びでよく子供たちが歌っていた台詞を呟いた。


『大丈夫よ、お母さんが追い払ってあげる』


 フラン母さんはままごとのように優しく答えた。ままごとならそこで終わりだったが、ニアには気になることがあった。


「お母さん、お化けって本当にいるの?」

『お化けはね、死んでも神様のところに行けない魂のことよ』

「それじゃあ、私はどうなるの?」

『大丈夫よ、貴女は魔女になるんだから』


 フラン母さんはどこまでも優しかった。ニアは安心してフラン母さんの腕の中で目をつぶることができた。


 それからニアはたっぷりフラン母さんと昼寝をして、ゼルやノクスと一緒にドールハウスでのままごとを楽しんだ。こんなに楽しくて魔女になれるのか不安になったが、ゼルは「今のままでよいです」としか答えなかった。もし魔女になったら、何をするかをニアは考えることにした。いろんな気づきがある日であった。


『8日目:終了』

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