東国の勇者の場合23

書庫を出ると外もう陽が沈み切っていた。とりあえず部屋に戻ることにした。だがまだ王宮の内部の事を覚えることができず、リニアさんなしでは帰れなかった。

「申し訳ありません。自分のことなのにリニアさんをこんなに付き合わせてしまって。」

「ご心配なさらなくて大丈夫です。何度も申し上げております通り、こういったことが私の仕事ですので。」

「すいません、以後気を付けます。」

「あまり気になさらないでください。それより、もう陽も沈んでいます。今夜はもうお休みになられてはいかがでしょうか。」

確かに、今日一日起きてから動きっぱなしだ。だいぶ疲労感も溜まってきている。

「そうですね。なんだか疲れて夕食をいただく気分でもないので。」

気を抜いた瞬間にあくびが一つ出てきてしまった。

 それを見ていたリニアさんが小さく笑った。

「どうかしたんですか?」

自分にとっての無防備なちょっと恥ずかしい部分で笑われてしまった腹いせにちょっと嫌味っぽく聞いてみた。

「申し訳ありません。ただ、最初の印象とは違って少し人間らしいところが出てきていらっしゃるので。」

そんなに、言われるほどロボットじみているのだろうか。

「あまりお気になさらないでください。私がそう感じただけですので。」

「あ、はい。」

そう言ってちょうど到着したのは今日、目覚めた部屋だった。

「それでは失礼いたします。」

自分が部屋に入ると一礼をして扉を閉めた。バタンと扉の閉まる音が静寂を生み出す。

部屋の中に灯りはなく月と星の光が部屋の中を微かに照らしていた。気にも留めなかったが廊下は煌々と明るく照らされていた。冷静に記憶を辿ってみると光源となるような灯りは見当たらなかった。魔法によって明るくなっているのだろうか。なんと便利で末恐ろしい。

急に無くなった灯りが自分と世界を分け隔てているかのように切り替わる。こんな空間だとついつい内省してしまう。今日は悪い考えが頭を巡りそうだ。浮かび上がってくる考えを振り払うかのように頭を振り回す。

今日はもう寝よう。

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