農業機械の技術とレーシングカーの極限性能を結びつけた、圧倒的に緻密なメカニズム描写が圧巻。
超ジュラルミン製エンジンブロック、180度V型6気筒の偶力振動、ターンフローの排気流速をあえてシジミ漁の網から着想したカーボンメッシュで解決するプロセスなど、技術的裏付けのリアリティが凄まじい。架空のマシン「IZUMO Type11」が本当に実在したかのような錯覚を抱いてしまう。いや待て、実在してないよな?
また、単なるマシンの開発劇に留まらず、背景にある学徒出陣の記憶と特攻兵器への負い目という戦争の爪痕、そして迫りくる通産省による業界再編(合併話)という時代の危機感が、主人公・松平耕平をはじめとする男たちのドラマに深い重厚感を与えている。