第7話 神々の膳
こうして出雲の地には、再び平和が訪れました。
避難していた民も元の家に戻り、仁多郡は再び山河の恵みを育む地となったのです。清らかな水が田を潤し、優しい風は稲穂を撫で、緑がきらめく山には豊かな実りが戻りました。
湯村の郷は再び小さな薬湯の里へと戻り、静かに湯煙をあげ続けました。
そしていつしか、この出雲の地は、日の本の神々が年に一度集い、天候、作柄、縁組、国防など、この国すべての営みを話し合う場所となったのです。
その月を出雲の人々は「神在月(かみありづき)」と呼ぶようになりました。
喧々諤々、真剣に議論を交わし、ときにはぶつかり合う神々も、ご飯の時間になると、皆一様に表情がほころびます。
食膳の中心に鎮座するのは、大きなお皿に盛られた、大きな仁多米の塩むすび。
かつてクシナダが握り、素戔嗚尊を笑顔にした、あのおむすびです。
今では神々の会議の場――神謀り(かむはかり)――の膳を飾る神の米となり、出雲に集う神々の顔をほころばせ、笑顔にしているのです。
今も仁多郡は、豊饒の大地として実りを育んでいます。
神話の時代から守られ続けた大地の恵みは、きっと次の神在月にも、神々の笑顔を支えてくれることでしょう。
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