第20話 不安な彼女
テストが始まってからは理奈とあまりイチャイチャする時間が無くて、学校に行ってはテストを受けて家に帰って寝て、また勉強してというループを繰り返していた。
正直死にそうではあったけど、ここでいい点数を取っておきたかったんだ。
「や、やっと終わったぁ~」
「お疲れ様アキ。どんな感じだった?」
「大体は解けたかな。少なくとも赤点は絶対にない」
「あれだけ勉強してれば赤点は無いでしょうね。じゃあ、速く帰ろっか!」
理奈と二人で家に帰る。
普通の学生たちは今から遊びに行くって言ってたりしてたけど、流石に今の俺にそこまでの体力はない。
昨日もほとんど徹夜してたし、テスト期間中はそこまでしっかり寝てなかったし。
そう言うわけで理奈には少し申し訳ないけど、今日は遊びに行くような事はしない。
「ごめんな。せっかくテスト終わったのに遊びに行けなくて」
「ううん。全然気にしなくていいよ。明日と明後日は休みだしどっちかに遊びに行こ!」
「ありがと。理奈、久しぶりに家来るか? テスト期間中はあんまり寄ってなかったし」
「じゃあ、お邪魔しようかな。ちなみにアキがコーヒー淹れてくれたりするの?」
「もちろん。めちゃくちゃはしゃいだりはできないけど、家でゆったりすることはできるからね。ゆったりして行ってくれ」
外ではしゃぐ体力は全く残ってないけど、家で理奈とまったりするくらいの体力は残っている。
というか、家でまったりするのに体力は必要ない。
むしろ癒されるくらいだ。
「じゃあ、喜んでお邪魔するね! 私、アキの淹れてくれるコーヒー大好きだから本当に楽しみ! 久しぶりだしね」
「俺も理奈と久しぶりに一緒に居れるから本当に嬉しい。じゃ、さっさと帰りますか」
「うん!」
テスト終わりの羽根のように軽い足取りで俺たちは家に向かう。
隣にいる理奈の顔をとても綺麗で晴れ晴れとした表情をしていた。
俺もそれにつられて気分が晴れやかになる。
◇
「絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さないゼッタイニユルサナイゼッタイニユルサナイゼッタイニユルサナイゼッタイニユルサナイゼッタイニユルサナイ」
「医院長、彼女は本当に大丈夫なんですか?」
「ああ、彼女か。あれはどうにもならんね。完全に壊れちゃってる。高校二年生の子がどうしてあそこまでおかしくなっちゃったのか私にはわからんがね」
私は少し前に入ってきた患者の金島狂歌さんを見つめながら医院長に聞いたらそう返答が来た。
入院してからずっとあの様子でぼそぼそと何かを呟いている。
ぞっとするほどに濁った眼。
ずっと口から出てくる怨嗟の言葉。
そのすべてが高校二年生の女の子から出てくるものとは思えないものばかりだった。
彼女に何があったのか詳しいことは知らないけど、あそこまでおかしくなるのは家庭環境にも問題があったのではないだろうか?
「そうですか」
少なくとも、あの症状が治まるまでは彼女はここから出ることはできない。
高校二年という青春真っただ中な時間をこんなところで過ごすのはかわいそうだと思わなくもないけど、彼女は一人刺してる。
幸い命は助かったようだけど、人をさしてしまった時点でアウトだ。
「ふへへ、あの泥棒猫を絶対にぶち殺して秋くんを私だけのもにするんだ。今度は家に監禁して、私無しじゃ生きれない体にしてあげるんだぁ~ふひひ」
チラッと彼女を見てみれば虚空を見つめながら今もなお怨嗟の言葉を吐いていた。
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