愛が世界を救うなんて信じなかった俺が、異世界で彼女と出会う
@mugaru82
第1話
――暗闇。
何も感じないはずの場所で、俺は目を覚ました。
「……チッ。なんだここは、地獄ってやつか?」
記憶に残るのは、あの胸の焼けつくような痛み。
まさかあのヘタレが拳銃持ち出すなんてな……笑えるぜ。
さんざん面倒見てやったのに、最後は裏切りかよ。
「ほんと、くだらねぇ人生だったな……」
そのとき、柔らかな声が闇に響いた。
「くだらなくなんてありませんよ、朝倉蓮司さん。あなたは、生き抜いたのです」
振り返ると、光の中に一人の女が立っていた。
白い衣をまとい、どこか人ならざる気配を漂わせる――まるで女神のように。
「……誰だよ、テメェ。葬式参列にしちゃ恰好が派手すぎんだろ」
女は微笑んだ。けれど、その瞳はどこか哀しみを宿していた。
「私は...まあ、女神のようなものです。少なくとも今のあなたにとっては」
「はっ!女神ねえ...女神様ならとっととこんな糞みたいな魂浄化すべきなんじゃねえの?世界のためによ」
「...いいえ、あなたの魂は、まだ終わりを迎えるには早すぎる。だから、私はあなたを導きに来ました」
「導く? 俺を? バカ言え。俺なんか、生きても死んでもろくなもんじゃねぇ」
「いいえ。あなたは強かった。どれほど痛みに晒されても、折れなかった」
「……強い、ねぇ。強いからどうした。最後は銃三発で犬死にだぜ?」
「それでも、あなたの心の奥にはまだ光があります」
「光だぁ? ハッ、笑わせんな。俺の人生、真っ暗だったろ」
女神は小さく首を振り、手を差し伸べた。
「ならば、新しい世界で確かめてください。あなたが本当に何者なのかを」
「…は?」
状況が呑み込めてないといった顔の男に対し、女神を名乗る女は続けた
「これからあなたには、新しい世界に旅立っていただきます。…ええと、確かあなたの元の世界では異世界転生?と言うのでしたよね」
「…確か手下の気弱な奴が読んでた本で見たことあるな、確かこういうのは転生じゃなく転移とか言って…じゃねえ!なに勝手なこと言ってやがんだてめえ!俺はもう生きたくなんざねーんだよ!」
女はそうやって喚く男を見てクスリと笑った
なぜ笑われたか理解できず男は苛立ったが、女神は気にせず続ける
「…ごめんなさい、今のあなたに拒否権は与えられません。ですがどうか、これだけでも言わせてください。」
女は男を見据える…何故だか男は、目をそらすことができなかった
「新しい世界で、あなたはきっと、『生きていて良かった、生まれてきて良かった』…そう思えるようになります」
「…はあ?」
「私を信じなくても構いません、ですがどうか…もう、そんな悲しい顔をしないでください」
――光が、俺を包み込む。
反射的に吐き捨てた。
「……ふざけんなよ。勝手なこと言ってんな、クソ女神」
けれど、声は光に呑まれ、俺の意識は異世界へと落ちていった。
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