1話〜愛しいよ、貴方〜
//SE 電車が走る音(静かな車内で衣擦れの音が少し聞こえる)
「ぇんぱぁい、せんぱぁい、起きてる?」
//SE 軽く体を揺さぶる音
「先輩、立ったまま寝てましたよ。お疲れモードなの?」
「ふーん、昨日クラスメイトとお勉強通話を夜中まで、ねぇ」
(嫌味な言い方)
「べっつにぃ。先輩はただのクラスメイトにも夜遅くまでするお優しい人なんだなぁって思っただけでーす」
「何って、別に何でもないよ。はぁ?何でもないって言ってるじゃん。もぉ、しつこいぃ」
「はぁ?!私との通話もそこに並べないでもらえますぅ?!」
「ぜぇんぜん違いますから。そんなの、わかるでしょ、普通」
「あーはいはい、すみませんでした。先輩にとっては私もそのクラスメイトさんも道端の老人も変らないですもんねぇ」
「そんなことあります!」
//SE 咳払いの音
//SE 電車の環境音
「ほらー、先輩の所為で怒られたじゃん。じゃあ、いいや。先輩、お耳貸して」
(小声で呼びかける)
「静かにしなきゃいけない雰囲気なんで、小声で内緒のおしゃべりしましょ」
(左耳に話しかける)
「内緒のおしゃべりと言ったら定番は都市伝説か、恋愛話。先輩はどっちがいい?特別に選ばせてあげます」
(得意げに)
「え~、どっちでもぉとか言うなよぉ。先輩の淡白、いくじなし、ろくでなし、軽薄、やなやつぅ」
(頬を掴まれる)
「やぁや、しぇんぱい、ごみぇんね。やぁみぇて」
(頬を離される)
「全くもう、あのですねぇ、1つ大事なことを言いますからね。乙女の顔には日焼け止めから始まるいろぉんなものが重ねられているんですよ。ご存じでしょうけど!えぇ、ご存じのはずですもんねぇ、先輩。だからね、乙女の頬に触れる時は細心の注意を払って、″ぎゅむっ″と掴むのではなく、輪郭に沿うようにそっと頬を包んで」
「愛しいよ、貴方」
(過剰に劇っぽく)
「と、言うように親指をさすさすとするもんなんですよぉ!分かったぁ?……ほら、やって」
//SE 手を頬に添えるために動かす音
「そう、先輩完璧ね。じゃあ、ずっとこのままね、頭がとても楽だわぁ……いてっ、ちょっとぉチョップもやめてよ。前髪崩れちゃうじゃん」
「悪いことする右手は私が掴んじゃうんだからね」
(右に移動する)
「ふふっ、これでもう安心。わっるぅいおててはないない、だもんねぇ」
「そんなぁ悪い先輩にぴったりのとっておき内緒話、あるの。聞きたいですよね。聞きたいでしょ、聞きたいって言ってね」
「あのね、最近クラスの女子に流行りのおまじないがあるの。絶対に好きな人と両想いになるっていうおまじない。……先輩、知ってる?あ、やっぱ知らないんだ」
「いやいや、知らなくていいんですよ。私がこうしてご教示いたしますからねぇ」
「で、こういうのってさ、小学生向けの少女漫画にもよくあるんだよね。定番のやつだと、消しゴムに好きな相手の名前を書いて誰にもばれずに使い終わったら両想いになれますぅみたいな。先輩も知ってるでしょ?」
「ああいうのはさ、楽しくてちょっとドキドキとする遊びなの。ただのまじないの模倣に過ぎないから、子供が目にする雑誌でも取り扱われてる。でもね、今回流行ってるこれはわけが違うの……気になるでしょぉ、ふふっ。」
「ふっ」
(息を吹きかける)
「あっ、ははっ、っ、くくっ。ん、ふふっ。……せぇんぱい、ちょろすぎ」
(うるさくならないように噛みながら笑う)
「ふふっ、ははっ、くふっ、ん、あー、面白い。いくら気になるからって、油断しすぎ」
「……そんなことだから、私みたいなのが調子に乗るんですよぉ」
(小さくつぶやく)
「嫌だなぁ、嘘じゃないですよぉ。私は本当の事しか、言いません。と言うか、言えません性格上。だから、おまじないが流行ってるのは、本当。まあ、でもおまじないって正しい知識とその人のセンスが必要だから今はまだただの遊びとして流行ってるんですけどね」
「で、ここから都市伝説ゾーンね」
「その今回流行ってるおまじないは、何が違うかと言うと、むかぁしの雑誌に一度だけ掲載された禁断のおまじないなんですよ。なんで、禁断になったかと言うと、そのおまじないを試したと思われる男女が行方不明になっているんですよ。しかも、数組。だから、それ以降あらゆる媒体からそのおまじないのやり方、名前、全部消えちゃって伝説化した」
「で、ここからが本番です」
(より耳元で小声になる)
「じゃあ、何で今これが流行っているのかぁと言うのが問題ですよね。実はそのおまじないで行方不明になったとされる二人、この間見つかったんですよ。し、か、も、見つけたの私のクラスの雪ちゃん」
「雪ちゃんから聞いた話ではこうです。学校の帰り際、ホームを歩いていると時代遅れのファッションで手を繋いで寝ているカップルを見つけたんそうなんですよ。雪ちゃんは迷いつつも優しいから保護すると行方不明の二人と判明したんですって」
「雪ちゃんがね、その時の2人を見て愛とはどういうことかがわかったって言ってたんですよ。ま、その後その2人は色々あったらしいんですけど」
「まあ、そんな真実の愛みたいなことを言われたら、年頃の女の子である私たちは大フィーバーですよ」
「みぃんな、心の底から愛し愛されたい」
「わぁたしぃ?」
(怪訝そうに)
「……う〜ん、そうだなぁ、みんなが言ってるような漠然とした愛はいらないかなぁ」
「もっと、ちゃんとしっかりとした軸のある愛の方が」
「すきです」
(0.5呼吸くらい置いて)
「あっはは、なぁんて言っちゃ足りね、あ、はは」
「ま、そんなどうでもいいことは置いといて、一番気になるのはおまじないのやり方!そうでしょう?」
「ふふふっ、うん」
「えぇーっと、まず電車のちょうど真ん中の車両に乗ります。そして、進行方向とは反対を向きで立ちます。位置はですねぇ、えぇっと……あっ、ちょうど今私たちがいるこの左端ですね」
「そして、目を閉じます。先輩もやってみる?……ふふっ、そして強く願うんです」
「私を見て、私を見て、私を見て!」
(徐々に大きくなる声)
「んで、目を開けます。なんか、ちょっとドキドキして、楽しいよね」
「これでおまじない自体は完了です。後は成功していたら、3つの現象が起きて気が付いたらふたりっきりの世界で真実の愛を見つけることができまぁーす」
「成功していた場合まずは、電車のブレーキ音が大きく聞こえます。その後、立てないほどの大きな揺れがあって、チリンと鈴の音が鳴りますす。なぁんで、鈴かはしらないですけど、都市伝説ってそういうの多いですよね。ふふっ」
//SE 電車のブレーキ音
//SE 電車が大きく揺れる音
「うわあっ、せんぱっ、ごめんなさいっ」
//SE バタンと倒れる音(後輩が馬乗りするよに倒れた)
「先輩」
(嬉しさが隠し切れない)
//SE ちりんと鈴の音
「あっ」
//SE 電車の扉が開く
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