家賃を払いなさい
国民には部屋を借りる権利があり、借りた場合家賃を払う義務がある。そのため、家賃を払えなければそこを退去しなければならない。
迷探偵・凡間凡は、今まさにこの問題に直面していた。そう、金が無いのだ。
ワイドショーなどのギャラで先月まではしっかり払えていたものの、最近は弟の
そんなこんなで一文無しと化した凡間のところに、アパートの管理人が容赦なく襲いかかってくる。
「凡間さぁん。そろそろ今月の家賃払ってくれませんかね」
「金が無いということは、つまり家賃を払えないということだ」
「明後日までに払ってくれないと追い出すからね」
「追い出されるということは、家がなくなるということだ」
「今日のところは見逃してやるから、早いうちに金を払いなさい」
「収入源がないということは、もう終わりだということだ」
「いい加減黙れよ」
凡間の独特な応対に管理人も口が悪くなった。
「では、今から黙る」
「で、あんた本当に払えるんだろうね」
「・・・・・・・・・・・」
「本当に黙るやつがあるか」
「・・・・・・・・・・・」
「けっ」
管理人は凡間の部屋のドアの前に唾を吐き捨ててから帰っていった。
結局その後も凡間に金が入ってくることはなく、アパートから追い出される運びとなった。凡間の必死の抵抗(笑)もむなしく、彼は家を失った。それは、事務所をも失うことになるわけで・・・
「だからお金は貯めとけって言ったでしょう!」
閑散とした住宅街に留美の怒声が響き渡る。
「ないものはない」
パシィン!
留美のビンタが炸裂する。痛そう。
「痛いということは、つまり痛覚を感じているということだ」
「反省してないでしょ」
「反省はしているが、反省はしていない」
「どっかの大臣みたいなこと言うわね・・・」
「俺は大臣ではない」
「比喩だろ」
「比喩という役職があるのか?」
「流石凡さん・・・今日も絶好調ね」
「今日も絶好調ということは、いつもと同じだということだ」
「・・・そうとも言えるわね」
そこへ凡間の弟の天才が現れた。
「あ、兄貴じゃん!どうした、こんな朝に」
まともに話ができない凡間の代わりに留美が事の経緯を説明した。
「あははっ。確かに兄貴らしいや」
天才は体を二つに折って爆笑している。
「で、あたしたちの事務所、どうしようかしら」
「近くにオンボロだけど激安のアパートが売り出し中らしいっすよ」
「安いなら何でもいいわ。お金は、今回だけあたしと天才君で出してあげましょう」
「兄貴、今回だけだかんな」
「今回だけということは、結局家賃を払えなくなるということだ」
「なんとかしてくれよ・・・」
「まあいいわ。早速そのオンボロアパートを見に行きましょう」
こうして、凡間の新居兼新事務所が決定した。心無しか迷探偵は嬉しそうだ。
結局、また金がなくなって1ヶ月でアパートを追い出されることになるのは、また別のお話で。
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